法人で賃貸物件を借りるには?法人契約のメリット・デメリット
賃貸物件は個人契約のほかに法人契約で借りることができますが、その手順や審査基準、保証人の有無については個人契約とやや異なる場合があります。また法人契約をすれば家賃が事業経費となるため、会社の規模に関わらず節税効果が得られます。
この記事では、法人契約で賃貸物件を借りるポイントや手順、メリットやデメリットについてくわしく解説。法人契約を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
法人契約で賃貸物件を借りるポイントや手順
まず、法人契約で賃貸物件を借りるには2つのパターンが想定されます。
- 会社が福利厚生として家賃補助を出すパターン
- 事業主が自宅兼事務所として借りるパターン
1の場合、事業主ではなく従業員への福利厚生として、民間の賃貸物件を法人契約で借り上げるのが特徴です。どちらかといえば規模の大きい会社に多いパターンであり、家賃の一部を負担することで家賃補助の機能を持たせているケースがあります。
そして2については、個人事業を法人化させ自宅で業務を行う場合に多く見られます。事業内容や会社の信用度によっては契約しにくいケースもありますが、法人名義にすることで税制上のメリットがあることから法人契約を希望する事業主も少なくないでしょう。
賃貸物件の法人契約は、個人契約といくつか異なる特徴があります。
- 初期費用の負担
- 保証人・保証会社の有無
- 審査基準
- 契約の手順
具体的にどのような違いがあるのか、項目別でくわしく解説します。
初期費用の負担は会社の規定によって変わる
これは「1.会社が福利厚生として家賃補助を出すパターン」に当てはまる話ですが、初期費用の負担割合は会社の規定によって異なります。敷金や礼金、前家賃、管理費などの初期費用を会社が全額負担するケースや、個人が全額負担するケース、または会社と個人で折半するケースなど会社によってさまざまです。
ちなみに「1.会社が福利厚生として家賃補助を出すパターン」において、初期費用自体は個人で借りても法人で借りても金額は変わりません。貸主からすれば、個人でも法人でも住居として貸し出すことに変わりないからです。
しかし、会社が社宅として賃貸物件を借り上げる場合は、不特定多数の人が利用することを警戒して通常よりも敷金や礼金が高くなるケースがあります。この場合、負担割合によっては初期費用を多めに用意しておかなければならなくなるでしょう。
初期費用の負担については、あらかじめ会社の規定を確認しておくことをおすすめします。
保証人や保証会社は必要?
個人契約においては、保証人を立てたり保証会社に加入したりすることが一般的ですが、法人契約においては物件によって異なります。会社の規模(設立年数や従業員数、上場の有無など)で保証人や保証会社への加入が不要になるケースがあれば、入居者本人や事業主(代表取締役)を連帯保証人にするケースもあるため、不動産会社に確認しましょう。
また保証会社へ加入した場合は、連帯保証人が不要となるのが一般的です。
法人契約における審査基準とは
法人契約では、会社の規模が審査基準となるのが一般的です。上場企業などの大手企業の場合は審査が通りやすく、入居者の住民票や決算報告書など提出書類の一部が不要になることもあります。
とはいえ、本来個人契約をすれば審査通過が厳しい家賃の物件でも、法人契約なら通ってしまう可能性があります。いくら家賃補助が出るとは言え、身の丈に会わない家賃の物件を契約すると生活が成り立たなくなるリスクもあるでしょう。毎月の収支を考えて物件を選ぶのがポイントです。
法人で賃貸契約を結ぶ手順
法人で賃貸契約を結ぶ手順は、以下の通りです。
- 物件を探す
- 申し込む
- 契約に必要な書類を準備・提出する
- 入居審査の結果を待つ
- 契約・入金する
家賃補助の一環で法人契約をする際、部屋の探し方は個人で探すときと同じ手順です。とはいえ、法人契約をしている企業は不動産会社と提携している場合もあるため、指定の不動産会社で探す必要があるかどうか事前に確認しておきましょう。
申し込みの手順も個人で契約する場合と変わりませんが、大きく変わるのは必要書類の提出についてです。家賃補助の一環で法人契約をする場合、必要書類のやりとりなどは会社の総務が行うケースが多いため、連携を取りながら必要書類を準備・提出してもらいましょう。
入居審査の結果がクリアできれば、契約へ移ります。もしも必要書類の手続きなどを会社の総務が行った場合、契約書の取り交わしに関しても同様に総務が行うケースが多いです。初期費用の振込は入居者がするのか、もしくは会社がするのかは会社の規定によって異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。
法人契約で賃貸物件を借りるメリット・デメリット
法人で賃貸物件を契約する際のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット①審査が早い
法人契約は、個人契約に比べて家賃滞納リスクが少ないため、入居審査がスピーディに行われます。
とはいえ、不安要素がある場合は審査が遅くなったり、場合によって入居を断られたりする可能性もあるので留意しましょう。
メリット②月々の固定費が抑えられる
もしも自宅兼事務所として賃貸物件を借りる場合、自宅とは別にオフィスの家賃を支払う必要がなくなるため、月々の固定費を抑えることができます。
また、自宅兼事務所なら通勤の手間も一切かからないため、移動時間や交通費を抑えられるメリットがあります。
メリット③複数戸の契約で家賃が安くなる可能性がある
もしも一括借上げで複数戸の賃貸物件を契約する場合、従業員が多ければ空室が一気に埋まる貸主側のメリットがあるほか、家賃滞納のリスクも少なく安心感があります。これにより家賃が安くなるなどの特典がつく可能性があるため、知名度の高い会社ほどメリットが得られやすいと言えます。
メリット④節税効果が期待できる
社宅として住居を提供する場合は、家賃負担額を経費として計上することができるため、会社にとって大きな節税効果が期待できます。
また社宅を住宅手当として支給すれば「給与」に分類されますが、社宅扱いにすることで額面上の給与が減ります。これにより社会保険料や所得税、住民税の節税にも繋がるため、会社はもちろん社員にとってもメリットが大きいと言えるでしょう。
デメリット①契約に必要な必要書類が多い
個人契約と違い、法人契約は必要書類が非常に多いです。会社の総務が手続きを担当する場合は入居者自身の負担にはなりませんが、自宅兼事務所で借りる場合は事業主自身で手続きをしなければなりません。
スムーズに入居審査へ進むためにも、以下の必要書類を前もって準備しておくと安心でしょう。
- 会社謄本
- 会社概要書
- 決算報告書
- 法人の印鑑証明書
- 入居者の住民票コピー
- 納税証明書 など
デメリット②会社の規定次第で借りられない部屋もある
会社が家賃を負担(補助)する場合は入居者自身で部屋探しをするケースも多いですが、この場合会社の規定や条件を確認しておくのがベターです。というのも、会社の規定によっては借りられない部屋もあります。
たとえば家賃の上限が決まっていたり、会社からの距離が制限されているケースがあったりと、会社の規定はさまざまです。また会社にとって不都合になりやすい定期借家契約の物件も、会社規定でNGとなる可能性があります。契約にあたって会社側の規約や条件をきちんと確認しましょう。
デメリット③ネット上に住所を公開できない場合がある
もしも自宅兼事務所で法人契約を結ぶ際、会社のホームページに住所を公開することを禁止される可能性があります。これは、他の住民に迷惑をかけないようにするためです。無断で公開すればトラブルに繋がる可能性もあるので、借りる前には不動産会社に必ず確認を取りましょう。
まとめ
賃貸物件の法人契約には、個人契約にはないメリットやデメリットがいくつかあります。また、会社が家賃補助として契約する場合や、事業主自身が自宅兼事務所として借りる場合など、パターンによって手続きの内容が変わったり、審査のスピードが違ったりするのもポイントです。さらに、法人契約は会社の規模にかかわらず大きな節税効果を生む可能性があります。会社の規定や必要書類の内容を確認しながら、自分に合う物件を見つけましょう。