賃貸の契約で求められる連帯保証人とは?
賃貸物件を契約する場合、多くの場合に求められるのが「連帯保証人」です。よく聞く単語ではあるものの、どういった役割があり、誰にお願いできるのか、わからないことも多いでしょう。
今回は、連帯保証人の基本的な知識に加えて、賃貸物件を契約する際に連帯保証人になれる人・なれない人、連帯保証人を用意できない場合の対処方法などをご紹介します。最近は連帯保証人が不要な物件も増えていますが、依然として求められるケースもあるため、これを機械に理解しておくと安心です。
連帯保証人の基礎知識
連帯保証人は、賃貸物件の契約だけでなく、さまざまなシーンで聞く言葉です。単語にあまり良いイメージを持っていない方もいるかもしれませんが、安易にサインしないためにも、しっかりとした知識を身につけることが重要です。こちらでは、賃貸借契約における連帯保証人の基本的な知識をお伝えします。
連帯保証人とは?
賃貸借契約における連帯保証人とは、借主が家賃や建物の修繕費用を支払えなくなった場合に、代わりに支払う方のことを指します。連帯保証人制度がないと、借主が無一文になってしまった場合、貸主は家賃や修繕費用を回収する術がなくなります。このような事態を防ぐために、あらかじめ連帯保証人を決めておき、万が一のときは連帯保証人に請求することでその不平等をなくすのが目的です。
保証人との違い
連帯保証人が負う債務については、「借主が貸主に対して負う債務について連帯で保証する」と民法定められており、とても重い責任であることがわかります。一方、保証人は「借主が支払えなかった部分についてのみ」責任を負っているだけであり、責任の範囲が限定されているのが特徴です。
もっとも重要な点は、連帯保証人制度では両者が同様の義務を負っているため、貸主はどちらに請求することもできる点にあります。そのため、連帯保証人は実際に請求された際、「まずは借主に請求してください」「借主の財産を差し押さえてからにしてください」(催告の抗弁権・検索の抗弁権)と伝えることができません。保証人の場合はそれが可能です。
連帯保証人の条件
連帯保証人は、誰でもなれるわけではありません。一定の支払い能力がなければ、借主の滞納分を支払うことができず、貸主保護にならないためです。連帯保証人の条件としては、主に以下の3つがあります。
- 居住地が国内にある
- 安定した職業に就いており十分な支払い能力がある
- 2親等以内の親族(親、兄弟、祖父母、孫)、または3親等以内の親族(叔父・叔母など)
上記3つに当てはまる場合のみ、連帯保証人になることができます。連帯保証人になる際は、書類に年齢や勤務先、年収などを記入します。それらの情報をもとに審査を行い、連帯保証人の資格があるかどうかが判断されます。
以下では、連帯保証人になれるのかどうか疑問に思うケースが多い、いくつかの例をご紹介します。
無職の人
連帯保証人を依頼する相手が特定の職業に就いていない場合、基本的に連帯保証人として認められることはありません。相応の貯蓄がある場合も考えられますが、今後資産が目減りしていく可能性を考慮すると、審査に通りにくいといえるでしょう。
年金暮らしの両親
無職の親族、主に年金で暮らしている両親の場合も、支払い能力の面で審査落ちするケースが多いようです。不動産所得や十分な資産がある場合は「親族」という側面も考慮してパスする可能性もありますが、大家さんや不動産会社次第といえます。
配偶者
配偶者はもっとも身近な存在であり、同じ家に住むケースが多いため、頼みやすいともいえます。しかし、生計を同一にしていることも多く、一方の支払い能力がなくなるともう一方もなくなると考えられます。そのため、配偶者は連帯保証人になれない傾向にあります。
ただ、単身赴任先の賃貸物件を契約する場合で、配偶者にも十分な収入がある場合は、審査に通る可能性もあります。なお、配偶者ではない恋人と一緒に暮らす場合は、そもそも「親族」ではないため、連帯保証人としては認められません。
親しい友人/子供
親しい友人については、ある程度の収入がある場合に限り、連帯保証人として認める大家さんもいます。しかし、基本的には両親や兄弟にお願いするようすすめられるケースが多いようです。自分の子供については、すでに独立していて安定した就職がある場合は、連帯保証人として認められます。
複数人の連帯保証人
連帯保証人は複数立てることも可能です。収入面などが理由で1人では不安な場合は、2人以上の保証人を用意した場合について大家さんや不動産会社に相談してみましょう。
連帯保証人を頼める人がいないときはどうする?
上記のように、連帯保証人には重い責任が課せられるため、頼んでも断られてしまったり、そもそも頼める人がいないというケースもあるでしょう。そのような場合の対処方法を2つご紹介します。
家賃保証会社を利用する
もっとも一般的なのが、家賃保証会社(賃貸保証会社)を利用する方法です。家賃保証会社とは、連帯保証人の代わりの役割を果たしてくれる会社で、近年では多くの不動産会社で家賃保証会社の利用を必須としています。連帯保証人を自分で用意する必要がなくなるため、連帯保証人を頼める人がいない場合は不動産会社に相談してみましょう。
ただし、家賃保証会社を利用する場合は、入居時の審査とは別に「保証会社の加入審査」が行われます。契約者に十分な資産がなければ、家賃の滞納リスクが上がり、家賃保証会社の負担となってしまうためです。家賃保証会社の審査については、以下の記事をご覧ください。
連帯保証人不要の物件を探す
賃貸物件の中には、「連帯保証人不要」としている建物もあります。その場合、大家さんや不動産会社がクレジットカード会社と提携しており、家賃の支払いをカード払いに指定されるのが一般的です。クレジットカード会社の審査に通る必要もありますが、連帯保証人は必要ありません。
連帯保証人制度の改正について
2020年に実施された民法改正では、連帯保証人制度についても手が加えられました。主に連帯保証人の保護を目的として制定された、3つのルールについてご紹介します。
極度額の設定
今回の改正では、連帯保証人の極度額を契約書に明記するよう義務付けられました。極度額とは、連帯保証人の支払額の上限を指します。極度額が記載されていることで、連帯保証人の責任の範囲が明確になるため、契約時の安心感に繋がります。ただし、極度額の上限については制限がないため、高すぎると連帯保証人が見つからない可能性もあります。
借主から連帯保証人への情報開示
賃貸借契約の借主は、連帯保証人へ自身の収入や貯蓄額、負債額などの情報を開示するよう義務付けられました。借主の情報が開示されていないと、連帯保証人になるリスクが高まる可能性があるためです。この改正により、連帯保証人になる場合は、借主の情報を踏まえて判断できます。
大家さんから連帯保証人への情報開示
今回の改正によって、大家さんも連帯保証人へ情報開示義務を負うことになりました。具体的には、借主の家賃の支払状況やその他の債務履行状況について問い合わせることが可能です。大家さんがこの義務を果たさない場合は、借主が家賃を滞納した場合でも、連帯保証人に請求できなくなる可能性があります。
まとめ
連帯保証人は、不要の物件も増えていますが、用意するとなると頼む人を探すのも大変です。誰に頼むか迷った場合は、連帯保証人の役割や条件を踏まえて判断しましょう。
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