賃貸物件の保証金とは?敷金との違いや返還のルール
賃貸物件を契約する際に保証金を請求されるケースがあります。しかし、敷金や礼金と違って保証金は何のために必要なのか理解できていない人も多いのではないでしょうか。保証金は敷金と何が違うのか?また返還される可能性はあるのか?今回は、保証金の特徴や敷金との違い、返還の仕組みについてご紹介します。
保証金とは?
賃貸物件における保証金とは、契約時に貸主へ預けるお金です。賃貸物件を退去する際、原状回復のための費用が発生します。貸主へ預けた保証金は、原状回復費用として用いられるほか、家賃を滞納した際の補填に充てられます。
★原状回復とは、部屋を入居時の状態に戻すために必要な作業です。日常的な生活でできたものや経年劣化によるものではなく、借主の不注意や故意によってできた汚れや破損は、退去時に修理費を請求されることがあります。
関西の賃貸物件に多く見られる
保証金は関西や九州の一部地域に古くからある習慣です。他エリアから該当エリアに引っ越す際、聞き慣れない保証金に戸惑う人も多いでしょう。とはいえ保証金があることで初期費用が高くなるわけではなく、敷金や礼金に代わるものとして請求されることがほとんどです。
保証金と敷金の違いとは?
原状回復費用や家賃の滞納を補填する目的で準備する保証金ですが、この目的は敷金とほぼ同じです。もっとも、近年では関西圏でも保証金ではなく敷金や礼金を採用する物件が増えており、商習慣に地域差がなくなってきています。
ただし、注意したいのは保証金と敷金では返還のルールが異なるという点です。
敷金であれば、保証費用などを差し引いた残金が全額返還されるルールです。それに対し、保証金は契約時に敷引き(償却)という特約がつくケースも多く、あらかじめ取り決めた一定額は返還されません。
たとえば、保証金40万円のうち敷引きとして20万円という契約になっていれば、敷引きとして差し引かれた20万円から原状回復費用などが捻出されるため、40万円そのまま返金されることはありません。保証金が必要な物件すべてが敷引きの特約付きというわけではありませんが、物件資料を確認する際には敷引きの有無を必ず確認しましょう。
★そもそも、関西圏は礼金の慣習がなかったため、敷引きで引かれるお金は礼金と同様に貸主の収入になります。考え方によっては、敷引きと礼金は同じであると言えるでしょう。
前提として、保証金には独特のルールや慣習があることも知っておきたいポイントです。敷金と同じだと思いこむと思わぬトラブルを招く可能性もあるため、保証金が必要な賃貸物件を契約する際には不動産会社に説明を求めましょう。
保証金は消費税がかかる?
保証金は敷金や礼金と同じ意味合いを持つ費用なので、居住用の賃貸物件であれば消費税がかからない仕組みとなっています。ただし、事業用の賃貸物件は退去時に返還されない部分のみ課税対象となるので注意しましょう。
保証金は敷金よりも高いって本当?
敷金とほぼ同じ意味合いを持つ保証金ですが、相場を比べると保証金のほうが相場が高い傾向にあります。一般的に、敷金の相場は家賃1〜2ヶ月分です。対して保証金は、家賃の3〜6ヶ月分程度になる事が多く、敷金と比べても高いことがわかります。保証金が高いということは、それだけ初期費用も高くなるということなので注意しておきたいポイントです。
★前述の通り関西圏でも敷金や礼金を採用する物件が増えたため、最近では保証金に関しても全国的な敷金・礼金の相場に合わせて設定されるケースがほとんどです。
その一方、更新料の慣習がない関西圏では敷金・礼金においても首都圏よりやや相場が高いこともあります。初期費用はやや高くなっても、更新料がかからないということを考慮すれば、長く住めば住むほど総費用が抑えられるメリットがあるでしょう。
賃貸の保証金は返還される可能性あり!
保証金は敷金と同じ意味合いを持つものなので、修繕費や家賃滞納分を差し引いて返還される可能性があります。退去時、あまりにも部屋が汚れていたり損耗が激しかったり、また家賃を滞納したりしていなければ、返還されないことはないでしょう。
★ただし、敷引きの特約がついている場合は返金される金額も大きく左右されます。契約時に敷引きがいくらになるのか、きちんと確認しておくことがポイントです。
保証金が返還されるタイミングについては、借りていた物件を貸主へ明け渡しできていることが前提です。逆に言えば、借主側が「保証金を返還してくれないと部屋を明け渡すことができない」と主張することはできません。ただ漠然と“退去時に返還してもらえる”と思いこんでいると思わぬトラブルを招きかねないため、あくまで明け渡しが完了しているタイミングで返還してもらえるものと理解しておきましょう。
保証金が全額返金されるケースも稀にある
保証金は大家さんに預けているものであり、支払い済みのものではありません。返還の有無を把握する上で知っておきたいのが「差入保証金」と呼ばれる勘定項目についてです。契約の際、勘定科目として「差入保証金」が記載されていれば、部屋の使用に問題がない場合に原則全額保証金が返金されます。
保証金の返還額を減らさないポイント
賃貸物件の初期費用として求められる保証金ですが、敷金よりも相場が高いことから支払う金額も大きくなるため、退去時の返還額が少なくてがっかりする話もよく聞きます。保証金が全額返金されるのは難しいものの、返還額を減らさない工夫ならできます。ポイントは、契約内容の確認と部屋の状態に気をつけることの2点です。
契約内容をきちんと確認する
先述の通り、保証金のある物件は敷引きや償却などの特約がついているケースが多いです。敷引きや償却に関する特約がついていれば、あらかじめ決められている金額は返金されません。契約を結ぶ際には、どれくらいの金額が返金されないか確認しておくと良いでしょう。
加えて、原状回復の範囲や負担割合を確認することもおすすめです。どの程度であれば日常的にできる傷や汚れと認められるのか、またどこから入居者が原状回復の義務を負うのかを説明してもらえれば、保証金の返還を巡るトラブルが起きにくくなるでしょう。
部屋の傷や汚れに気をつける
退去の際は、入居時に預けていた保証金から原状回復費用が差し引かれます。部屋の状態が悪ければ原状回復費用がかかり、それだけ返還額が減ってしまいます。設備の破損や部屋の傷、汚れに気をつけながら生活することも、返還額を減らさない重要なポイントと言えるでしょう。
そして気をつけたいのが、入居前に部屋の状態を確認しておくことです。入居時にすでに傷や汚れ、カビが見られた場合は、たとえ自身の生活によってできたものでなくても、退去時に修繕費用を負担しなければならなくなります。内見時や入居の際には、部屋の傷やよごれ、カビがないかをしっかり確認し、少しでも気になる部分があれば写真で記録しておくことをおすすめします。
まとめ
敷金とほぼ同じ意味を持つ保証金ですが、独特なルールがあることも忘れてはいけません。退去時に全額返還されることは難しいかも知れませんが、返還額を減らさないコツもあるため、入居前には契約内容や部屋の状態をきちんと確認するようにしましょう。