賃貸物件の仮押さえはできる?賃貸借契約のマナーと注意点

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 部屋探しの際、自分の理想をすべて満たしてくれる物件を探すことはなかなか難しいものです。「申し込みたいけど違う物件も見てみたい」「複数の物件で悩んでいるけどもう少し考える時間がほしい」「検討している間に他の人に決まってほしくない」…など、さまざまな場面で賃貸物件の仮押さえを希望するケースも珍しくありません。そこで今回は、賃貸物件の仮押さえが可能かどうか?また賃貸借のマナーや注意点について解説します。

契約の前に賃貸物件を仮押さえすることはできる?

 賃貸物件の仮押さえが可能かどうかは、入居申込みの意志があるかどうかで変わります。もしも、入居申し込みまではしないけど少しの間仮押さえしたいということであれば、基本的に賃貸物件を仮押さえすることはできないでしょう。入居申し込みをして管理会社や大家さんにその書類が届いてから、初めて物件を仮押さえすることができます。

★ただし、不動産取引の慣習は地域によってさまざまなので、地域によっては入居申し込みをせずに賃貸物件を仮押さえできるケースがあります。首都圏よりも地方で見られる慣習で、仮押さえできる日数は2〜3日程度が一般的のようです。ただし、基本的には入居申し込みをしなければ賃貸物件を押さえることができないことを知っておきましょう。

仮押さえと入居申し込みは同じ?

 上記で説明したように、仮押さえには入居申し込みが必要です。もしも不動産会社から「仮押さえしますか?」と聞かれた場合、それは「入居申し込みしますか?」と同じ意味になるので注意しましょう。物件の仮押さえは早い物順です。早い物順は申込書の到着順が基本なので、仮押さえをするなら入居申し込みで入居の意志があることを示す必要があります。

 ちなみに、入居申し込みは申込書への記入のほか、物件によって申込金を用意しなければならないことがあります。この申込金は預り金とも呼ばれ、万が一契約に至らない場合は返金されます。入居申し込みの流れや方法については管理会社や大家さんによって異なるため、仲介会社である不動産会社に相談しましょう。

入居申し込み後のキャンセルは可能?

 仮押さえである以上「入居申し込みはしたけど、やはり契約を見送りたい」というケースもあるでしょう。この場合、キャンセル理由や状況によってキャンセルできるかどうかが変わります。入居申し込みのキャンセルについて、おもに想定される2つのケースをご紹介します。

入居審査に落ちた場合

 入居審査に落ちた場合は、賃貸借契約自体ができないため入居申し込み(=仮押さえ)が強制的にキャンセルとなります。この場合、申し込んだ本人が何らかの手続きをする必要はありませんが、仲介する不動産会社によっては別の保証会社の審査を勧めるなど代替え案を用意してくれることもあるため、入居を強く希望する場合は担当者へ確認しましょう。

自己都合でキャンセルする場合

 入居申し込みをしたにも関わらず、家庭の事情や仕事の都合で致し方なくキャンセルしなくてはならない場合、また別の物件で契約したいからキャンセルしたいという場合は、キャンセルを決めた時点で速やかに不動産会社に申し入れます。キャンセルが可能かどうかは、賃貸借契約を結んでいるかどうかが焦点です。

仮押さえを撤回できるケースとできないケース

 入居審査が通った場合、重要事項説明を受けた上で賃貸借契約を結び、初期費用を支払うのが基本的な流れです。重要事項説明を受けて賃貸借契約書にサイン、捺印すれば、その時点で契約の意志があると判断されます。つまり、重要事項説明を受けていない段階なら、入居申し込みをキャンセルすることが可能です。申込金を支払っている場合は、返金もされます。

 一方、賃貸借契約を結んだ上でキャンセルしたい場合は、締結した賃貸借契約書の中身によって対応可能かどうかが分かれます。賃料発生日を過ぎていれば、キャンセルではなく解約手続きとなるため、早期契約時の違約金や解約予告の期間に応じて賃料を支払わなくてはなりません。また、仮に賃料発生日より前だとしても、契約撤回について条文が記載されていれば違約金が発生する可能性があります。

 いずれの場合も、入居申し込みがキャンセルできるかどうかは賃貸借契約を結ぶ前かどうかで大きく変わります。仮押さえを希望する際は、こうしたリスクやトラブルの可能性を理解しておきましょう。

仮押さえ(入居申し込み)をする際のマナーや注意点

 賃貸借契約を交わす前なら入居申し込みのキャンセルは可能ですが、だからといって手当たり次第気になる物件を仮押さえするのはマナー違反です。なぜなら、入居申し込み後は入居審査やその後の契約に向けて不動産会社や大家さん、管理会社が動いているからです。たとえ1つの物件であっても、キャンセルするということは不動産会社や大家さんたちに迷惑をかけることになります。気持ちの良い取り引きをするためにも、仮押さえ時のマナーや注意点を理解しておきましょう。

複数の物件に入居申し込みをしないこと

 複数の物件に対し入居申し込みはできますが、結果的にいずれかの入居申し込みをキャンセルしなくてはならない状況になります。物件や管理会社が違っても、保証会社が一緒なら多重契約とみなされるため、入居審査に落ちる可能性があるでしょう。

 不動産会社は横のつながりがある業界なので、複数の物件に入居申し込みをすることで管理会社側にも「入居の意志がないのに多数申し込みをしている」と不審に思う可能性があります。いずれにしても入居審査に不利に働く可能性が高いため、確実に入居意志がある物件にしぼって入居申し込みをしましょう。

申込金を支払った場合は預り証をもらうこと

 先述の通り、入居申し込みには申込金を支払わなければならないケースがあります。といっても申込金はあくまで預り金という扱いになるため、契約が成立しなければきちんと返還されるものです。しかし、申込金の返還ルールについては宅建業法で定められているものの、申込金が返還されないトラブルもまれにあります。キャンセル時に返還されなければ損するだけなので、申込金を預ける場合には不動産会社から預り証を受け取りましょう。

 預り証を受け取る際は、金額や日付に間違いがないか、また預り金と表記されているかどうかをきちんと確認することをおすすめします。

★もしも「預り金」として申込金が処理されている場合ならキャンセル時に返金されますが「手付金」と処理されている場合は返金されません。基本的に手付金は賃貸ではなく売買の契約後に支払うものなので申込金とは性質が異なりますが、念のためチェックしておくと安心です。

キャンセルをする際は早めに連絡を入れること

 「キャンセルを申し入れたいけど、自己都合なので伝えにくい…」というケースもあるでしょう。しかし、キャンセルを決めたにも関わらず連絡をせずにいると多方面で迷惑がかかります。賃貸物件の契約には、物件をきれいにする大家さんや、設備交換をおこなう関連会社、なにより契約書類の作成や手続きの準備をする不動産会社など、さまざまな人の作業が必要です。連絡なくキャンセルすれば、これらの人たちの作業がすべて無駄になります。

 大家さんからすれば、できるだけ早く空室を解消したい事情があります。連絡なくキャンセルされるくらいなら、早く他の人へ物件を紹介したいと考えるはずです。一方、不動産会社からすれば入居申し込みのキャンセル対応に慣れています。言いにくいかもしれませんが、キャンセルを決めた際には即座に不動産会社へ連絡するようにしましょう。

仮押さえの際は入居の意思を示すことが大切

 気になる物件を仮押さえする際は、入居申し込みが必要です。入居申し込みをした時点で、不動産会社や大家さんは契約に向けて準備を進めます。賃貸借契約前ならキャンセルできるとは言え、多方面に影響を与えることを理解したうえで仮押さえを検討しましょう。

元・不動産メディア営業/現・不動産系ライター
岸山 海河 10本
有名不動産メディアSの創刊に関わり、地元〜大手不動産会社の物件広告を担当。2014年より不動産系ライターとして活動しています。引っ越し経験も多く、現在は片田舎に建てたマイホームに在住。部屋探しのワクワク感は今でも大好き!これまでの経験を生かしながら、沢山の人の「暮らし」に寄り添う記事を提供します。 資格:普通自動車、日本化粧品検定1級
元・不動産メディア営業/現・不動産系ライター
岸山 海河 10本
有名不動産メディアSの創刊に関わり、地元〜大手不動産会社の物件広告を担当。2014年より不動産系ライターとして活動しています。引っ越し経験も多く、現在は片田舎に建てたマイホームに在住。部屋探しのワクワク感は今でも大好き!これまでの経験を生かしながら、沢山の人の「暮らし」に寄り添う記事を提供します。 資格:普通自動車、日本化粧品検定1級

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