障がい者が賃貸探しとは?物件選びのコツや契約時に受けられる制度・注意点

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 障害のある人にとって、住まい探しのハードルは高いものです。バリアフリーに配慮した物件が限定的であることに加え、賃貸契約そのものを断られてしまうケースもあるでしょう。しかし、すべての物件が借りられないわけではありません。そこで今回は、障がい者の方におすすめな物件選びやチェックしたいポイント、制度についてご紹介します。

障がい者の賃貸契約が断られやすい現状

 なぜ障がい者は賃貸物件を借りづらいのか。これは賃貸契約にともなう入居審査が大きく影響します。審査の過程では、大家さん自身が障がいについて理解なく、部屋を貸し出すことに不安を抱くケースも珍しくありません。難聴だと電話で家賃督促をするのが難しくなりますし、障がいの特性で入居を断るケースもあります。大家さんがOKを出しても、契約している保証会社が障がいのある人を引き受けないケースもあるでしょう。

 また、障がいの特性にあった物件が少ないという事情もあります。たとえば車椅子を使用する場合、部屋だけではなく共用部分にもある程度のスペースが必要です。仮に車椅子が利用できる十分なスペースがあったとしても、床や壁が傷つくことを理由に入居を断る大家さんも存在します。

 なにより、すべての物件がバリアフリーに対応しているわけではないため、物件の選択肢も狭くなるでしょう。

障がい者におすすめな物件の選択肢・4つ

 障がい者の方が一般的な賃貸物件を借りようとすればハードルは高くなりますが、なかには障がい者の人に向いている物件も存在します。

公営住宅

 市営住宅や県営住宅など、国や地方自治体が協力して建立し、管理や運営をしている公営住宅なら、障がい者の方にとってもハードルが高くありません。というのも、民間の賃貸物件と違って仲介手数料や礼金がかからず家賃も低めなので、初期費用とランニングコストがともに抑えられるメリットがあります。

 さらに、公営住宅は年収などの条件を満たすことで優遇抽選制度を利用することができます。障がいのある方、また母子家庭の方なども対象なので、優先的に入居できる可能性もあるでしょう。物件によって、障がいの特性に合わせた住宅設備が異なっているのもポイントです。

UR賃貸住宅

 独立行政法人都市再生機構が管理・運営するUR賃貸住宅は、公的な賃貸住宅なので、賃貸契約の際に障がい者の方が不利益を被る心配がありません。民間の賃貸住宅に比べるとはるかにハードルが低くなるでしょう。

 また、UR賃貸住宅には障がい者の方を対象とした各種制度が受けられます。

 たとえば、家賃が値上げになっても居住の安定に配慮が必要な世帯には家賃が据え置かれる「家賃改定特別措置」。これは、1級から4級の身体障害者手帳を交付された方が対象です。

 このほか、障がい者の方はURが定める優遇対象世帯に該当し「倍率優遇拡充」が適用されます。これは抽選の際、当選確率が一般の人よりも20倍になる優遇措置です。障がいの特性による問題をクリアできれば、これほど障がい者の方に適応した賃貸物件はないでしょう。

グループホーム

 グループホームとは、障害者総合支援法に基づいて導入された共同住宅のことです。障がい者の方が数名で共同生活をしながら、社会福祉法人やNPO法人などから派遣された世話人から生活支援を受けることができます。孤立を防ぐことで、障がい者の方の身体的・精神的な負担を減らせるほか、家族の方にとっても不安を取り除くことができる仕組みです。

セーフティネット登録住宅

 セーフティネット登録住宅は、住宅セーフティネット法に基づいて住宅確保要配慮者の入居を拒まない制度(後述)です。もちろん、障がい者の方も対象となっています。障がい者の方は、登録された住宅の情報を閲覧することができるため、効率よく部屋探しができるのもメリットです。

障がい者の賃貸選びでチェックしておきたいポイント・5つ

 障がいのある方の部屋探しが難航しがちなのは事実ですが、できるだけスムーズに賃貸契約に進むためにも、あらかじめおさえておきたいポイントがあります。

障がいがあることへの理解

 賃貸選びをする上で確認しておきたいのは、大家さんと不動産会社のどちらにも障がいがある方に理解があるかという点です。たとえば、独自の取り組みで障がい者の方の住まい探しや保証人対応、物件の改修を行う不動産会社が存在するほか、部屋探しだけではなく住まいのサポートを行う不動産会社も存在します。全国的には数が少ないものの、障がい者の方に対して理解のある不動産会社が増えているのは事実です。

 不動産会社を訪問する際には、事前に電話やメールで障がい者に対する理解が得られるかどうか確認しておくと安心できるでしょう。

バリアフリーやエレベーターへの配慮

 車椅子で移動する方や、障がいの特性で広いスペースが必要な方には、バリアフリーに対応した物件が適しています。段差の有無だけではなく、物件の入り口に階段などの障害物がないか、また建物内や部屋にスムーズに移動できるかもチェックしておきたいポイントです。

 また、車椅子で移動する方はエレベーターの利用が欠かせません。エレベーターのなかでも、車椅子のまま利用できるかどうかチェックしておくことをおすすめします。

補助犬飼育について

 賃貸物件ではペットの飼育を禁止している物件が多いため、盲導犬や介助犬を飼育する人にとっては部屋探しの選択肢が極端に狭まります。一方で、民間の賃貸事業者には補助犬使用者を受け入れるように努める義務があります。そもそも、補助犬は障害のある人にとって体の一部のような存在です。ペット扱いはされないので、その点だけは安心しましょう。まずは、大家さんや不動産会社に相談することが大切です。

 ただし、いくらペット扱いでないとはいえ犬特有の匂いや抜け毛がないわけではありません。契約時の敷金や退去時の原状回復費用が高くなる可能性があることを頭に入れておきましょう。また、ペット不可物件で補助犬を受け入れてもらった際には、他の入居者とトラブルにならないよう、事前に大家さんや管理会社から「補助犬=ペットではない」ことを認識してもらうよう動いてもらう必要があります。

部屋の防音性

 障がいの特性にもよりますが、車椅子や杖の使用によって騒音が起きる可能性があります。自分の部屋のみならず、隣室や下階に騒音が響くと入居者同士のトラブルになりかねません。もしも車椅子や杖を使用する場合なら、防音性が高い部屋を探すのがベストでしょう。

建物周辺の道路状況

 たとえ建物自体に問題がなくても、周辺環境に問題があれば障がい者の方にとって生活しづらくなります。たとえば、傾斜のきつい坂道があったり、物件にたどり着くまでに階段や段差があったり、普段から利用する公共施設が遠い場所にあったりするのは避けたいところです。物件だけではなく、周辺環境もしっかりチェックしておきましょう。

障がい者の賃貸契約で利用できる制度について

 先ほども軽く触れましたが、障がい者や高齢者、子育て世帯、低額所得者などの住宅確保要配慮者が家を借りるための支援に「住宅セーフティネット制度」があります。住宅セーフティネット制度は、賃貸住宅供給促進法に基づいた制度です。

  • 住宅確保要配慮者の入居を断らない賃貸住宅として登録する仕組み
  • 住居のバリアフリー工事に対する経費の補助や入居者に対する家賃補助
  • 民間支援法人による情報提供や相談、見守りなどの生活支援など

 以上のように、部屋探しから引越し後の生活までサポートしてくれる制度なので、セーフティネット住宅情報提供システムのホームページから物件を探してみるのも良いでしょう。

 このほかにも、障害がある方の部屋探しをサポートする福祉サービス「居住サポート事業」を利用したり、グループホームの入居で家賃補助を受けたり、UR賃貸住宅での「家賃改定特別措置」を利用したりと、障がい者向けの制度をうまく活用するのも一つの方法です。

障がい者の方でも賃貸物件が借りられる仕組みはある

 障がいがあることで部屋探しが難航している、また断念している人もいるでしょう。現実的にも、障がい者の方が賃貸物件を借りるにはさまざまなハードルがあります。しかし、昔に比べると障がいのある方への理解が世の中に広まりつつあり、各種制度の整備やサポート体制も充実しています。それぞれの制度やサポートを味方につけて、自分に合う部屋探しをしてみてはいかがでしょうか。

元・不動産メディア営業/現・不動産系ライター
岸山 海河 10本
有名不動産メディアSの創刊に関わり、地元〜大手不動産会社の物件広告を担当。2014年より不動産系ライターとして活動しています。引っ越し経験も多く、現在は片田舎に建てたマイホームに在住。部屋探しのワクワク感は今でも大好き!これまでの経験を生かしながら、沢山の人の「暮らし」に寄り添う記事を提供します。 資格:普通自動車、日本化粧品検定1級
元・不動産メディア営業/現・不動産系ライター
岸山 海河 10本
有名不動産メディアSの創刊に関わり、地元〜大手不動産会社の物件広告を担当。2014年より不動産系ライターとして活動しています。引っ越し経験も多く、現在は片田舎に建てたマイホームに在住。部屋探しのワクワク感は今でも大好き!これまでの経験を生かしながら、沢山の人の「暮らし」に寄り添う記事を提供します。 資格:普通自動車、日本化粧品検定1級

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