先行契約と先行申し込みの違いとは?
部屋探しには、知っておくと便利な「裏ワザ」がいくつかあります。その一例が、物件の「先行契約」と「先行申し込み」です。先行と聞けば想像つきやすいですが、わかりやすくいうと内見をせずに物件を“仮押さえ”すること。先行手続をしておくことで、他の人に人気物件を取られるリスクも減ります。
そこで今回は、先行契約と先行申し込みの違いをはじめ、それぞれのメリット・デメリットや利用時のポイントなどをご紹介します。
先行契約と先行申し込みの違いとは?
通常の賃貸物件は、内見して気に入れば申し込みし、所定の審査を経て契約する流れになります。それに対し、先行契約や先行申し込みは退去が決まっている物件、完成前の物件などで内見ができない状態でも、入居に向けた手続きが行えます。
先行契約と先行申し込みの違いは、入居までの流れです。
- 先行契約…契約→入居
- 先行申し込み…申し込み→内見→契約→入居
先行契約は「内見ができない状況で物件を契約すること」。契約と同時に初期費用の支払いを事前に済ませる必要がありますが、希望物件を確実に押さえることが可能です。新築物件の場合は、内装や設備などに使用感や劣化の心配がないので、より有利な方法と言えるでしょう。
先行申し込みは「内見できない状況で契約前の手続きを進めること」を指します。先行契約と違い、内見後にキャンセルもできます。ただし、先行申し込みが複数入ることもありますし、先行契約よりも優先度が低いです。入居審査に通らなければ申し込み自体キャンセルになるため、必ずしも入居が確約されるわけではありません。
先行手続で大きな節約効果が生まれることも
先行手続は費用面でメリットが得られるケースもあります。たとえば、家賃の発生を遅らせることができること、また家賃の高騰が抑えられることです。
通常、家賃は入居日ではなく契約日に発生します。仮に学生向け物件を12月や1月ごろ契約した場合、新生活が始まる4月よりも前に家賃を支払わなくてはならないケースもあるでしょう。
一方、内見できない状況で募集する物件は、1ヶ月以上先でも家賃発生日を設定することができます。これにより旧居と新居の家賃を二重に支払う機会が減り、節約につながります。
また、需要の高い物件は多少相場より高くても成約しやすいです。人気物件の場合、空室が出たタイミングで家賃が値上がりするケースもあります。一方、空室をなくすために居住中の物件は家賃の改定がされにくい傾向にあります。先行手続をしておけば、家賃の高騰を防げる可能性があるのです。
先行契約や先行申し込みができる物件を見つけるには
近年はインターネット上でVR内見ができる機会が増えたことから、先行手続ができる物件も増えつつあります。しかし、すべての物件が先行手続できるわけではなく、ポータルサイトにも先行手続ができるかどうかの記載はありません。
先行契約や先行申し込みができるかを決めるのは、管理会社や貸主です。募集していない希望物件があれば、不動産会社に直接確認を取るようにしましょう。管理会社に確認すればスムーズです。
先行契約のメリットとデメリット
先行契約と先行申し込みの違いについて紹介しましたが、このほかにも先行契約にしかないメリットやデメリットもあります。部屋探しに後悔しないためにも、それぞれの特徴をしっかり抑えておきましょう。
まずご紹介するのは、先行契約のメリット・デメリットです。
メリット|優先度が高く確実に入居できる
先行申し込みは、あくまで入居審査を先に進めているだけであり、入居が確定しているわけではありません。対して、先行契約は審査はもちろん契約そのものを締結しているため、どれだけ人気が集中する物件でも審査さえ通っていれば確実に入居することができます。
メリット|余裕を持って引越し準備ができる
先行契約では引き渡し日が事前に確定しているケースが多いため、前もって引越しや役所の手続きに備えることができます。特に、賃貸物件から住み替えを考えている人は入退去のタイミングを無駄なく設定でき、余裕が持てます。
デメリット|内見しないことのリスクが生じることも
当然ですが、内見をする前に契約を結ぶのはリスクがつきものです。たとえば、クリーニング状況によってはタバコやペットなどの生活臭が残っていたり、壁に色褪せやシミができていたりすることもあります。フローリングや壁紙を張り替えてもらったものの、イメージしていた色と違うケースもあるでしょう。
実際、先行契約のトラブルはクリーニングに関することが多いとも言われています。前の住人が退去後、原状回復がどの程度行われるのかしっかり確認しましょう。
デメリット|キャンセルできない
内見前に契約すると、その後はキャンセルができません。先行申し込みは違約金を支払わなくてもキャンセル可能ですが、契約を締結している場合は賃料1ヵ月相当の違約金が発生することが多いです。
先行申し込みのメリットとデメリット
次は、先行申し込みのメリットとデメリットをご紹介します。ポイントは「契約」か「キャンセル」かを選べること、そして申し込みできる件数です。
メリット|内見可能な時点で優先的に内見できる
先行申し込みをしておけば、対象物件が空室になった時点で優先的に内見することができます。もちろん空室が出てからでも内見申し込みすることもできますが、先行申し込みをした人が優先されるぶん、入居募集を締め切っている可能性があるでしょう。人気物件の場合は入居できる確率も高くなります。
メリット|気に入らなければキャンセルできる
申し込み段階なら、内見後に契約するかキャンセルかするかを選ぶことができます。内見後に「思っていたのと違う」となればキャンセルできますし、違約金もかかりません。また、申し込み時に預かり金や申込金などを支払った際も、キャンセル時に返金されます。
デメリット|複数の物件に申し込みできない
先行申し込みができる物件は原則1件のみとしている不動産屋が多いです。同時にたくさんの物件を申し込むということは、貸主、仲介会社、管理会社のいずれもリスクを背負うことになり、信頼関係に影響が出ます。何も告げず複数の物件を申し込むことができても、管理会社や保証会社が共通している場合は審査に落ちる可能性があります。
デメリット|キャンセル後は審査に影響する可能性も
内見をして気に入らなければキャンセルができる、その意味では何一つデメリットがないように感じますが、先行手続後のキャンセルは貸主にとっても大きな機会損失になります。キャンセルをした場合、別の物件を申し込む際の審査に影響する可能性があります。
先行契約と先行申し込みを利用する際のポイント
内見をせず申し込みや契約ができるとはいえ、実際に部屋を見なければわからないこともたくさんあります。たとえば日当たりの良さ、水回り、共用設備などはインターネットや物件情報だけで把握するのが困難です。入居後に「やっぱり違う」ということにならないためにも、次の3つのポイントを抑えておくと良いでしょう。
外観や周辺環境を確認する
外観で判断できるのは、ゴミ置場やセキュリティなどの共用部分です。ゴミ置場の状態で住民のマナーが守られているか知ることができますし、防犯カメラやオートロックなどセキュリティ設備が十分かどうかも確認できます。
また、物件の周辺環境も確かめておきましょう。騒音がないか、日当たりに影響しないか、治安が良いかなど周辺環境を知ることで得られる情報もたくさんあります。
過去の写真を見せてもらう
入居者がいる状況でも、過去の物件写真が残っている場合があります。内装はもちろん、収納スペースの広さや窓のサイズ感などは間取りだけで判断しにくいです。特に、先行契約はキャンセルができないため、過去に撮影した物件写真や動画がないか不動産会社に確認すると良いでしょう。
同じ物件の別の部屋を内見させてもらう
もしも、希望する物件の別の部屋が空いていれば内見できる可能性があります。同じ間取りの部屋だとさらにイメージしやすいため、先行手続を有利に進めることができます。ただし、状態によって希望の物件と多少の差異がある可能性があるので注意が必要です。
先行契約や先行申し込みで有利に部屋探しを進めよう
先行手続で物件を“仮押さえ”しておけば、人気物件に入居できる確率が高くなります。とはいえ、先行契約はキャンセルできない点、先行申し込みは入居が確約されているわけではない点に注意が必要です。メリットだけではなく、デメリットも加味した上で慎重に判断しましょう。