賃貸物件の「仮押さえ」とはどんな意味か?

賃貸物件を探していると、たまに「仮押さえ」という言葉を耳にすることがあります。賃貸における仮押さえとはどのような意味なのでしょうか。今回は、仮押さえの意味に加えて、仮押さえをする際に注意しなければいけないこと、仮押さえ後のキャンセルについてご紹介します。

 

 

賃貸物件に「仮押さえ」は存在しない

まず、賃貸物件に本当の意味での「仮押さえ」は存在しません。

「え?でも不動産屋の営業の人が仮押さえって言葉を使ってるの聞いたことある」という方もいるでしょう。

確かに、不動産業界において「仮押さえ」という言葉を使うことはあります。しかし、それは本来の仮押さえの意味とは少し異なる使い方がされています。

ここで本来の「仮押さえ」の意味を確認しましょう。

・仮押さえ

他人に干渉されないように、暫定的に自分の支配下に置くこと。仮予約。

weblio辞書

多くの方が上記のような「仮予約」の意味で仮押さえという言葉を使っているのではないのでしょうか。不動産業界で使われる仮押さえに仮予約という意味はありません。

それでは、仮押さえとはどういった場面で使われるのでしょうか。

仮押さえ=入居申し込み

まず結論から申し上げると、不動産業界における「仮押さえ」とは、「入居申し込み」と同義だと考えてください。

つまり、内見をして入居申し込み書を提出することで、入居審査の段階へと移ります。この状態が不動産業界でいう「仮押さえ」ということになります。

これを理解しておかないと、「仮押さえしてくれたんだ。じゃあこの物件はキープできたってことだな」と勘違いしてしまうでしょう。審査が完了し入居申し込みが終了してしまうと、そのまま入居の手続きまで移ってしまいます。

申し込み金が必要になる場合も

賃貸物件を仮押さえする場合、「申し込み金(預り金)」が必要になる場合があります。金額がはっきりと決まっているものではありませんが、相場は家賃1か月分程度となっています。

また、不動産会社によっては持ち合わせの金額だけでOKというところも多いです。

入居審査や重要事項説明などが完了し、賃貸借契約を結ぶことになったら、その申し込み金は敷金や礼金の支払いに充当されることが一般的です。

ここで1点注意して欲しいことがあります。仮押さえの際に、申し込み金ではなく「手付金」を支払うよう言われることがあります。しかし、手付金と申し込み金では役割が大きく異なり、手付金の場合は仮押さえをキャンセルしても返還されないので注意してください。

 

 

仮押さえ後のキャンセルについて

仮押さえ=入居申し込みということは理解してもらいましたが、賃貸物件を仮押さえした後にその物件をキャンセルすることはできるのでしょうか。もしキャンセルできないとしら、うかつに仮押さえすることはできないということになります。

まず、入居審査に落ちてしまった場合。この場合は、もちろん賃貸借契約を結ぶことはできないので、自動的にキャンセル扱いとなります。事前に申し込み金を支払っている場合は、それも返還されます。

問題は入居審査を通過し、後は賃貸借契約を結ぶだけの状態になった場合です。どの段階までなら仮押さえをキャンセルして申し込み金の返還を求めることができるのでしょうか。

 

仮押さえのキャンセルは重要事項説明前まで可能!

仮押さえのキャンセルができるかどうかは、「賃貸借契約を結んだかどうか」が大きく影響します。賃貸借契約を結んだ後は、キャンセルではなく「解約」の手続きになってしまい、場合によっては早期解約の違約金等を支払わなければならないこともあります。

そして、賃貸借契約を結んだか否かを判断する基準は「重要事項説明を受けたかどうか」です。

賃貸物件を契約する際は、入居審査通過後、宅建士による重要事項説明・契約書への署名、捺印という流れで進みます。この重要事項説明は、賃貸借契約を結ぶにあたって不動産会社に課せられた義務と考えてください。この義務をクリアしたことで「賃貸借契約を結んだ」と法的に判断されます。

注意して欲しいのは「契約書にサインしなければいつでもキャンセルできる」というわけではない、ということです。重要事項説明を受けた後は、「一定の契約関係にある」とみなされ、特段の事情などがないのにキャンセルをしようとすると違約金等をが発生する場合があります。

そのため、賃貸物件の仮押さえをキャンセルする場合は、重要事項説明前までに必ず行いましょう。

 

 

仮押さえする場合の注意点

賃貸物件を仮押さえする場合、気を付けなければいけない点、マナーとも呼べる点がいくつかあります。そこを怠ってしまうと、不動産会社との信頼関係が破綻しかねないので、しっかりと理解しておきましょう。

複数の仮押さえはマナー違反

本来の仮押さえは、前述の通り「仮予約」の意味しかないため、場合によっては複数の商品を仮押さえすることもあるでしょう。しかし、不動産業界において複数物件の仮押さえはマナー違反と考えられています。

そもそも不動産業界における仮押さえは、賃貸借契約に向けたプロセスであり、ある程度契約に前向きであることを示しています。それにもかかわらず、複数の物件を仮押さえするということは、「この人は真剣に物件を探していないのではないか」と不動産会社に疑われてしまいます。

また、「別の不動産屋ならバレないのでは?」という考えも非常に危険です。同じ地域に店舗を構える不動産会社は、ある程度のつながりを持っています。どのような経緯で他の不動産会社に伝わるか分からないので、複数物件の仮押さえは控えるようにしましょう。

預かり証は必ず発行してもらう

前述の通り、賃貸物件の仮押さえでは事前に申し込み金や預り金を支払わなければならないことがあります。

この場合、必ず「預かり証」を発行してもらうようにしましょう。預かり証とは、申し込み金を支払ったことの証明になる証書のことで、いざトラブルになったときは預かり証に書かれていることがとても重要になってきます。

また、預かり証を発酵してもらう際は、会社印や申し込み金を支払った日付・金額などが明記されていることを確認してください。

申し込み金に関するトラブルも一定数報告されています。無用なトラブルを防ぐためにも預かり証は重要な役割を果たします。

期間は入居者が指定できるものではない

仮押さえは一般的に、入居審査が行われ重要事項説明に入るまでの2日~1週間程度維持することが可能とされています。不動産会社から「●日までに判断してください」と言われることもあるでしょう。

ただし、仮押さえは一般的な予約とは性格が異なるため、入居希望者側から「●日までは押さえておいて欲しい」と指定できるものではない、ということを理解しておきましょう。

繁忙期などは、そもそも仮押さえ自体できない可能性もあります。

仮押さえの判断は早めにする

確かに、仮押さえの判断は重要事項説明前まで可能です。しかし、不動産会社からしたら、キャンセルされるのであれば早めに判断してくれた方がうれしいのは間違いありません。長期間仮押さえされることで、新しいお客さんに物件を回せなくなる可能性もあるからです。

また、入居するとなれば鍵の交換や契約書類の作成・部屋の清掃などさまざまな手続きを行わなければなりません。キャンセルがギリギリになれば、そういった作業も無駄になりかねません。

もちろん本気で悩んでいるのであれば、仮押さえの期間を最大限活用するのがベストです。しかし、「営業の人が熱心に説明しているから断りづらい」などの理由で、ギリギリまでキャンセルを伝えないのはかえって逆効果です。キャンセルするのであれば、なるべく早く伝えるようにしてください。

 

仮押さえ=予約ではない

今回の記事でお伝えしたかったのは、仮押さえ=予約ではないということです。仮押さえをするということは、賃貸借契約に向けて一歩を踏み出したということになります。普段の言葉づかいと少し意味合いが異なるため、混同しないようにしましょう。

 

 

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