動画内見の注意点!現地内見では見えない部分の確認方法
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、賃貸の部屋探しにおける「動画内見」や「オンライン内見」が一気に普及しました。遠方への引っ越しや多忙な方にとって、現地に行かずに物件の様子を確認できる動画内見は、時間と費用の節約になる非常に便利な手段です。
しかし、動画内見にはメリットがある一方で、現地に足を運ばなければ気づけない落とし穴も存在します。動画では綺麗に見えても、いざ入居してから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、どのような点に注意し、現地では見えない部分をどう確認すべきなのでしょうか。このコラムでは、動画内見を最大限に活用しつつ、後悔のない部屋選びをするための具体的なチェックポイントをご紹介します。
動画内見で「錯覚」しやすい3つの落とし穴と確認方法
動画や写真では、プロの撮影技術や編集によって、物件の印象が良く補正されていることがあります。特に以下の3点には注意が必要です。
1.部屋の「広さ」と「天井の高さ」
動画では広角レンズが使われることが多く、実際の部屋よりも広く見えてしまう「錯覚」が発生しがちです。また、天井の高さも動画では正確に伝わりにくい部分です。
確認方法として、間取り図に記載されている「壁芯(かべしん)面積」や「畳数」といった具体的な数字と、動画に映っている家具のサイズ感(冷蔵庫、ベッドなど)を照らし合わせて、実際の広さを想像しましょう。また、内見動画の途中で、不動産会社のスタッフがメジャーで天井高を測ってくれるよう依頼するのも有効です。
2.日当たりの「質」と「方角」
動画内見は特定の時間帯に撮影されているため、一日の日当たりの変化や、実際の光の強さまではわかりません。また、動画の色調補正によって、実際よりも明るく見えることもあります。
重要なのは、動画ではなく「方角」と「周辺環境」です。南向きでも目の前に高いビルがあれば日当たりは望めません。
内見を依頼する際「撮影時間」を確認し、その時間帯の太陽の位置と、周辺の建物の高さをGoogle Mapなどで確認して、日当たりのシミュレーションをしてみましょう。また、スタッフに「午前中の様子を撮影してもらえませんか?」と依頼するのも一つの手です。
3.「音」と「ニオイ」の情報が完全に欠落する
動画では、生活騒音や周辺の環境音はカットされていることがほとんどです。また、部屋に染み付いたニオイ(タバコ、ペット、カビなど)は、動画では一切確認できません。
音については、スタッフに窓を開けた状態で周辺の環境音(交通量、踏切、学校の音など)を録音してもらうか、物件周辺をGoogleストリートビューやGoogle Mapの口コミでリサーチし、騒音に関する情報がないかチェックしましょう。
ニオイについては、スタッフに「特に気になるニオイはないか」と具体的に質問し、正直に答えてもらうしかありません。少しでも不安があれば、現地内見を検討すべきです。

現地内見でしか確認できない「構造的欠陥」に注目
動画内見で物件の雰囲気を掴んだとしても、以下の構造に関わる問題は、現地で五感を総動員して確認する必要があります
1.壁の薄さと隣接する間取り
賃貸物件の快適性を大きく左右する騒音問題は、壁の薄さが原因であることが多いです。動画で壁の厚みを測ることはできません。
実際に現地に行った際、隣の部屋と接する壁を軽く叩いてみましょう。詰まったような鈍い音であれば防音性が期待できますが、軽い音がする場合は注意が必要です。また、隣室との境界が収納スペースやクローゼットになっている間取りは、間に空間がある分、防音性が高まります。
2.水回りの「水圧」と「排水音」
キッチンや浴室の水圧は、動画では勢いよく見えても、実際に使ってみると弱かったり、熱いお湯が出るまでに時間がかかったりすることがあります。また、洗濯機や排水口からの異音や、水が流れる音が異常に大きいといった問題も、現地でしか確認できません。
現地内見の際には、キッチンと浴室の蛇口を同時に開けて水圧が落ちないかを確認しましょう。また、水を流す際の「ゴボゴボ」という排水音が、異常に大きく響かないかどうかもチェックしてください。
3.湿気やカビの原因となる「結露と換気」
特に冬場は、結露によるカビが発生しやすい季節です。動画では見えにくい窓枠やサッシの隅に、過去の結露によるカビの跡や水のシミがないかをチェックしましょう。
窓枠のパッキン部分、北側の壁の隅、押し入れの中などに、黒ずみがないかを確認します。また、浴室やトイレの換気扇を実際に回してみて、正常に機能しているか、異音がないかもチェックしましょう。

動画内見を成功に導くための「逆質問」テクニック
動画内見を依頼する際に、不動産会社のスタッフに「具体的かつ専門的」な質問を投げかけることで、現地では見えない重要な情報を引き出すことができます。
【質問例】
聞くべきこと | 意図的に確認したい情報 |
「外壁の素材は何ですか?(RC造、木造など)」 | 建物の遮音性・断熱性の概略を知る。 |
「上階の住民のライフスタイル(家族構成など)は分かりますか?」 | 足音や生活騒音のリスクを推測する。(答えられない場合もある) |
「窓の外に洗濯物が干せるスペースはありますか?」 | 窓からの景観だけでなく、実際の生活動線に関わる情報を確認する。 |
「バルコニーの奥行きは何センチですか?」 | 撮影では伝わりにくい、洗濯物を干す、室外機を置くスペースの具体的なサイズを知る。 |
「夜間に玄関ドアの周辺は明るいですか?」 | 治安や防犯上のリスク、帰宅時の安全性を確認する。 |
これらの質問を事前にリストアップし、動画内見中にスタッフに確認してもらうことで、「現地に行けない」というデメリットをクリアにし、より客観的な情報を得ることができます。
動画内見は「事前審査」、現地内見は「最終確認」
動画内見は、数ある物件の中から候補を絞り込むための「事前審査」としては非常に優秀です。しかし、賃貸契約という大きな決断をする上で、動画内見だけで全てを判断するのは非常に危険です。
特に音、ニオイ、広さの感覚、水圧、壁の厚さといった五感に訴える情報は、現地内見でしか得られません。遠方で現地に行けない場合でも、最低限、上記のチェックポイントをスタッフに確認してもらうか、信頼できる第三者(親族や友人)に現地確認を依頼するなどの対策を講じましょう。
動画内見の利便性を享受しつつ、現地内見でしか得られない「最終確認」を怠らないことが、失敗のない部屋選びの秘訣です。