一人暮らしで生活保護は受給できる?生活保護で受け取れる金額やよくあるQ&A

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 誰にでも病気や怪我などの予期せぬ事態で働けなくなる可能性がありますが、一人暮らしをしている人にとって働けなくなることは死活問題です。一人暮らしをしている人の場合、生活保護を受給することはできるのでしょうか?今回は一人暮らしの人向けに生活保護の受給額や加算項目、扶助、よくある疑問についてまとめました。

一人暮らしでも生活保護は受給できる

 生活保護は、憲法で定められた理念(生存権)に基づきすべての人に最低限の保障を行うことを目的とした福祉制度であり、一人暮らしでも生活保護を受給することができます。

 誰もが無条件で受給できるわけではなく「世帯収入」が国の定める「最低生活費」に満たない場合にその不足分を支給する、というのが生活保護の仕組みです。

 たとえば、国の定める最低生活費が150,000円の場合、自分の収入が90,000円なら生活保護の受給額は60,000円になります。一方、収入がゼロの場合は最低生活費150,000円が満額支給されるのが基本的な考え方です。

 また、障害者であるなど生活状況に応じて受給額が加算(後述)されます。

一人暮らしの人が受け取れる生活保護受給額とは?

 生活費の受給額を求めるうえで必要になる最低生活費は「生活扶助(第1類)+生活扶助(第2類)+住宅扶助+その他の加算」で計算されます。

 ここで出てくるのが「扶助」というワード。

 生活保護制度で支給される保護の種類は「扶助」と呼ばれており、全8種類ある扶助のなかから一人暮らしの人が受けられるのは「生活扶助」と「住宅扶助」の2つとなります。

生活扶助と住宅扶助それぞれの基準額

 生活扶助と住宅扶助は、居住地の「級地制度」に基づいて算出され、基準額が異なります。級地制度は、地域の生活様式や物価の差異によって異なる生活水準の差を生活保護基準に反映させるために制定されたものであり、「1級地1」から「3級地2」までの6つの級地区分に分かれています。

 まずは生活扶助基準について見ていきましょう。生活扶助基準には、食費や衣類などの個人的費用である「第1類」と光熱費など世帯に共通してかかる費用の「第2類」があります。

●生活扶助基準第1類

年齢1級地11級地22級地12級地23級地13級地2
18〜64歳46,930円45,520円43,640円41,760円41,290円38,950円
65〜74歳46,460円45,060円43,200円41,350円40,880円38,560円
75歳以上39,890円38,690円37,100円35,500円35,100円33,110円
※参考:生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和5年10月)

 たとえば東京23区内に住む25歳一人暮らしの場合、級地制度は「1級地1」となるため生活扶助基準の第1類は46,930円となります。そして生活扶助基準の第2類は、一人暮らしの場合各級地の差異なく一律27,790円が加算されます。

 次に、住宅扶助について見てみましょう。住宅扶助は、定められた金額の範囲で家賃分の金額が支給される制度です。こちらも等級地別で上限額が異なりますが、一人暮らしの場合は床面積でも限度額が変わるので注意しなくてはなりません。

 東京23区の場合は1級地であり、15㎡以上の単身世帯は53,700円が限度額です。やむを得ない事情であれば基準額を超えた家賃の賃貸物件に住むことができますが、住宅扶助を超えた分は生活費から捻出する必要があります。場合によっては、福祉事務所のケースワーカーから家賃の安い家を探すように転居指導されることもあるでしょう。

 ちなみに、住宅扶助の対象は家賃・間代・地代になり、共益費・管理費・光熱費は住宅扶助の対象外となるので注意しなくてはなりません。

★生活扶助も住宅扶助も、都心ほど限度額が高く地方ほど限度額が低く設定されているので、具体的な限度額が知りたい場合はこちらから地域の等級を調べてみてください。

 では、ここまで説明した生活扶助と住宅扶助をもとに、東京23区内に住む25歳一人暮らしの方の受給金額をシミュレーションしてみましょう。

●生活扶助(第一類):46,930円
●生活扶助(第二類):27,790円
●住宅扶助:53,700円
=最低生活費:128,420円

 もしも収入がゼロの場合は128,420円が満額支給され、アルバイトで70,000円の収入がある場合は58,420円が生活保護として支給されます。

生活保護における加算項目とは?

 生活保護では、生活扶助・住宅扶助とは別にそれぞれの生活状況に合わせた保護費を加算してもらうことができます。ここで、加算項目と加算される費用の内容について簡単にご紹介しましょう。

妊産婦加算妊娠中もしくは産後6ヶ月以内の妊産婦に栄養補給等の経費を加算
母子加算ひとり親世帯に対し二人親世帯と同等の生活費を加算
障害者加算障害者が必要とする居住環境改善の費用・経費を加算
介護施設入居者加算介護施設入居者への裁量的経費の加算
在宅患者加算在宅療養中の患者に対する栄養補給等の経費を加算
放射線障害者加算放射線による負傷・疾病患者への栄養補給等の経費を加算
児童養育加算児童の養育者に対する児童の健全育成費用を加算
介護保険料加算介護保険第1号該当者に対する介護保険料相当額の加算

 これらのうち、一人暮らしの生活保護者に該当するのは「障害者加算」です。生活保護は障害年金のお金を引かれて支給されますが、生活保護と障害年金を併用すれば、障害者加算により単に生活保護を利用するよりも受給金額が増える仕組みになっています。

 ただし、障害厚生年金3級の人は生活保護に関する障害者加算がない点に注意が必要です。もしも生活保護の受給に障害加算を希望するなら、障害年金1〜2級である必要があることを知っておきましょう。

一人暮らしでの生活保護に関するよくある疑問

 一人暮らしを続けながら生活保護を受給したい、このような場合はさまざまな疑問が出てくることでしょう。ここで、一人暮らしでの生活保護についてよくある疑問をまとめました。

親の収入によって生活保護が受け取れないのは本当?

 一人暮らしをしていても、自身の親や扶養義務のある3親等内の親族が高収入である場合は生活保護を受けられないことがあります。これは、厚労省の定める「保護の要件」(後述)として利用し得る資産や能力を活用することが求められているからです。

 また、進学などを理由に親兄弟から一時的に離れて生活している場合は、実家と生計が同じだと判断されるのが一般的です。この場合、一人暮らしであっても実家の親などとあわせて生活保護の要否判定が行われるため、本人を含めたトータルの収入が最低生活費を上回れば生活保護を受けられない可能性もあるでしょう。

一人暮らしで病気療養中している場合は受給額が増える?

 病気療養中であっても生活保護として受け取れる金額は変わりませんが、医療費が高額になる場合は“医療扶助の現物支給“という形で全額生活保護が肩代わりしてくれるため、トータルの受給額は上がります。むしろ、生活保護の要否判定では支払い中の医療費も最低生活費に含めて算出されるため、病気療養していない人に比べると受給されやすい状況と言えます。

働きながら生活保護を受給することはできる?

 働いているのに低収入だから生活保護を受けたい、もしくは生活保護を受給しながら働きたいと考えている人も少なくないでしょう。結論から言うと、働きながら収入を得ている人でも収入が最低生活費に満たなければ生活保護を受けることができます。

 逆に、生活保護を受給している最中に仕事の収入が最低生活費を超えれば、その時点で生活保護を受給することはできなくなります。

そもそも生活保護を受け取れる条件とは?

 生活保護は無条件で受給できるものではなく、利用し得る資産や能力などを最低限度の生活維持のために活用することが前提とされています。ここで、厚労省が求める「保護の要件」についてご紹介しましょう。

資産の活用預貯金、また生活に利用されていない土地・家屋は売却等をして生活費に充てる
能力の活用働くことが可能なら、能力に応じて働く
あらゆるものの活用年金や手当などほかの制度で給付を受けることができる場合は、それらから活用する
扶養義務者の扶養親族などから援助を受けられる場合は、援助を受ける
※参考:生活保護制度|厚生労働省

 これらを踏まえ、収入が最低生活費に満たない場合は生活保護が適用されます。

生活保護を受給している人は賃貸契約が難しい?

 生活保護を受給していても新規で賃貸契約を結ぶことは可能ですが、保証会社の審査に注意が必要です。生活保護を受けている場合は家賃滞納のリスクが心配されるため、保証会社の審査が厳しくなる傾向にあります。大家さん側にとっても、トラブルを避けたいために契約に消極的になるケースがあるでしょう。

 もしも住宅扶助を利用するならケースワーカーとのやり取りが必要になるため、生活保護を受けている人の仲介実績がある不動産会社を紹介してもらうか、代理納付ができないか相談してみると良いでしょう。代理納付は契約者に代わって福祉事務所から直接大家さんに住宅扶助費を支払う仕組みであり、大家さんにとっても入金の安定化が期待できるため、審査に通りやすくなる可能性があります。

賃貸契約の初期費用は住宅扶助として支給してもらえる?

 生活保護の受給を考えている人の中には、今よりも安い家賃の物件に住み替えたいと考えている人もいるでしょう。とはいえ、初期費用を捻出できなければ引っ越しすることができず、高い家賃を払い続けなくてはならない負のループに陥ります。ここで気になるのが、初期費用が住宅扶助に該当するかどうかです。

 実は、賃貸契約の初期費用は住宅扶助ではなく“一時扶助金”の対象として支給されることがあります。

 敷金や礼金、火災保険料、引越し費用などの初期費用は家賃のように毎月発生するものではなく、更新料などの例外を除けば入居のときだけに発生する費用なので、一時扶助金としてカバーすることができます。

★初期費用としてたくさんの項目が設定されていると、一時扶助金でカバーできない可能性もあります。初期費用の項目や金額を確認して物件を選ぶとよいでしょう。

まとめ

 一人暮らしでも生活保護を受給することは可能であり、居住地の等級や収入などによって受給額が変動します。もちろん生活保護を目的に一人暮らしを始めるのはおすすめできませんが、すでに一人暮らしを始めていて誰からの援助も受けることができない場合は福祉事務所に相談しましょう。

元・不動産メディア営業/現・不動産系ライター
岸山 海河 10本
有名不動産メディアSの創刊に関わり、地元〜大手不動産会社の物件広告を担当。2014年より不動産系ライターとして活動しています。引っ越し経験も多く、現在は片田舎に建てたマイホームに在住。部屋探しのワクワク感は今でも大好き!これまでの経験を生かしながら、沢山の人の「暮らし」に寄り添う記事を提供します。 資格:普通自動車、日本化粧品検定1級
元・不動産メディア営業/現・不動産系ライター
岸山 海河 10本
有名不動産メディアSの創刊に関わり、地元〜大手不動産会社の物件広告を担当。2014年より不動産系ライターとして活動しています。引っ越し経験も多く、現在は片田舎に建てたマイホームに在住。部屋探しのワクワク感は今でも大好き!これまでの経験を生かしながら、沢山の人の「暮らし」に寄り添う記事を提供します。 資格:普通自動車、日本化粧品検定1級

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