狭小賃貸は快適?人気の理由とメリット・デメリット
賃貸物件を探す際に、部屋の広さにこだわる人は少なくないでしょう。特にここ数年、都内では狭小のワンルーム物件が増え人気を集めています。果たして、なぜ狭小賃貸は人気があるのでしょうか?狭小賃貸の特徴やメリット、デメリットについて解説します。
狭小賃貸の特徴とは?
狭小賃貸(狭小物件)には明確な定義がなく、物件によって15㎡以下のものを指すこともあれば、10㎡以下を指すこともあります。
テレビでも特集された狭小賃貸。9㎡という狭さでありながら家賃はエリア相場より2万円以上安いです。
※祐天寺駅の賃貸ワンルーム相場10.9万円(2023年9月現在 参考︰SUUMO)
狭小でも、構造や設備のクオリティは高いです。狭小、と呼ばれるように一人暮らし向けに作られているのも特徴と言えます。
狭小賃貸は都市部に多く見られます。また、変形地や旗竿地のような住居の面積を確保しづらい場所や、住宅が密集している場所に建てられているケースも多いです。最近では「狭小デザイナーズ」なる物件も増えており“都心でおしゃれな暮らしがしたい”という人から支持されています。
狭小賃貸はこんな間取り
狭小賃貸は、一般的なワンルームの半分ほどの広さしかないのも一つの特徴です。キッチンやトイレ、お風呂などの標準的な設備はきちんと揃っており、3畳ほどの居室とベッドスペースを想定したロフトがついているのがスタンダードな間取りになっています。
狭小賃貸が人気な理由は?
狭小賃貸が増えたのは2018年ごろといわれており、部屋の広さよりも立地を重視する人が増えてきたからではないかと推測されています。また、最近は室内の綺麗さを重視して物件を選ぶ人が増えている傾向にあるのも人気の理由です。
また、近年コロナウイルス感染拡大や働き方改革の影響でテレワーク人口が増えたことから、セカンドハウスとして狭小賃貸の需要が増えています。必要最低限のもので生活したいミニマリストにも狭小賃貸が好まれる傾向にあるようです。
生活に必要な設備はきちんと揃っているので、広さにこだわらない人にはメリットが多い物件です。
狭小賃貸のメリット
狭小賃貸の需要が増えているのは、部屋の狭さ以上にメリットが多い点にあります。あえて狭小賃貸を選ぶことで、どんなメリットが得られるのでしょうか。
好立地かつ家賃が安い
駅に近いなど立地条件が良い物件は家賃が高い傾向にありますが、狭小賃貸は好立地にありながら家賃が相場より低い傾向にあります。また、狭小賃貸は単身入居をターゲットにしていることから家具家電付きの物件も珍しくなく、初期費用が大幅に抑えられる可能性も高いです。
光熱費が抑えられやすい
一般的な賃貸物件よりも居住スペースが狭い狭小賃貸は、無駄なスペースにまで冷暖房をかける必要がないため、電気代などの光熱費が抑えられやすいです。家賃はもちろん、光熱費を抑えることができれば大きな節約になるでしょう。
掃除が楽
狭小賃貸は居住スペースが狭いぶん、掃除の手間もほとんどかかりません。物件そのものの収納力は低いですが、逆に考えれば必要最低限のものしか部屋に置くことができないため、自然と整理整頓のスキルも身につくでしょう。
余計な物が増えない
狭小賃貸には収納スペースが少ない上に、物を置くスペースも広くありません。すると必然的に物を増やすことができないため、ミニマリストのようなシンプルな暮らしに憧れる人に向いています。
★ただし、入居前には断捨離をしてある程度ものを減らす必要があるでしょう。
狭小賃貸のデメリット
掃除が楽、なにより相場より家賃が安く好立地といったメリットの多い狭小賃貸ですが、契約前に考えておきたいのはデメリットの面です。実際に暮らして不便を感じる可能性もあるため、デメリットを熟知した上で入居を考えましょう。
収納量が少ない・物を置けない
狭小賃貸は限られたスペースで居室や浴室などを作っているため、物をしまう・置く場所が限られています。また10㎡未満のような狭小賃貸だと、必要最低限の家具・家電以外を置くスペースはほとんどなく、物で溢れかえればより一層部屋が狭く感じられます。
物を置かない主義の人には向いていますが、物を置くスペースやクローゼットがない部屋だと片付けるのに苦労するでしょう。
洗濯物を干しづらい
狭小賃貸は室内干しのスペースが確保しづらいです。特に、ベランダがない物件だとなおさら洗濯物が干しづらくなります。突っ張り棒を設置することでスペースを活用しつつ室内干しをすることはできますが、料理のにおいが服に移ったり、部屋干しのにおいが服に残ったりする可能性もあります。
人を呼びにくい
狭小賃貸は居室が非常に狭く、人ひとり生活するスペースしか確保されていません。それだけに、友達を招待するのは困難と言えるでしょう。「一人暮らしをしたら友だちを招いてお泊まり会したい」「友だちを呼んで料理を振る舞いたい」などの夢がある人には向いていません。
隣人との距離が近い
ワンルームかつ居室スペースが少ない狭小賃貸は、隣との距離が近く騒音が伝わりやすいです。わずかな物音でも気になる神経質な人には向いていないでしょう。また、意図せず騒音を発した際もトラブルに発展しかねません。
狭小賃貸に向いている人
狭小賃貸の特徴やメリット・デメリットをまとめると、このような人に向いています。
- 都心に住みたいけど金銭的に余裕がない人
- 部屋の広さより好立地にこだわる人
- 固定費を抑えて将来に向けて貯金したい人
- 掃除が苦手な人
- 無駄な物を減らして暮らしたい人
また、デメリットの一つである“隣人との距離が近い”点においては、生活スタイルによってデメリットが解消されます。たとえば、仕事の関係で昼夜逆転の生活を送っている人にとっては、日中の静かな時間に就寝できるでしょう。
狭小賃貸で快適に暮らすコツ
狭小賃貸と聞けば窮屈な空間をイメージする人も少なくないでしょうが、工夫次第で快適に過ごすことが可能です。ヒントは“極力物を持たない生活”です。
室内に物を置きたくない、ということであればコインランドリーや服のサブスクリプションサービスを利用して、あえて“物を所有しない”生活を送るのも無駄がありません。必要であればトランクルームをレンタルするのも良いでしょう。
このほかにも“見せる収納”でインテリアを楽しんだり、収納付きのスツールなどを取り入れたり、本棚を置かない代わりに図書館や書店の近くの物件を選んだりとさまざまな方法があります。
その狭小賃貸で大丈夫?一人暮らしに適した部屋の広さ
これから初めて一人暮らしをする人にとっては、部屋の広さをイメージすることが難しい場面もあるでしょう。また間取りばかりに目を向けていると、部屋そのものの広さを見落としやすいです。狭小賃貸は一人暮らしを想定して作られているためワンルームが主流となっていますが、快適に暮らせる広さについても考えていきましょう。
まず、世帯人数と部屋の広さの目安を知りたいなら国が定めた「最低居住面積水準」と「誘導居住面積水準」を参考にします。わかりやすくいうと、最低限必要と考えられる部屋の広さと理想的な部屋の広さです。ここで、厚労省が公開する「住生活基本計画における居住面積水準」を元に単身世帯(一人暮らし)の最低居住面積水準と誘導居住面積水準を見てみましょう。
居住面積水準(㎡) | 単身世帯(一人暮らし) | |
最低居住面積水準(最低限必要と考えられる部屋の広さ) | 25㎡ | |
誘導居住面積水準(理想の部屋の広さ) | 都市居住型※1 | 40㎡ |
一般型※2 | 55㎡ |
※2 郊外、また都市部以外の戸建住宅に住むことを前提とした場合
このように、国が示す基準では“一人暮らしの部屋の広さは25㎡以上が目安”であることがわかります。居室(水回りなどを除く)に例えると6〜8畳程度です。一方、一人暮らし向け物件であるワンルーム〜1LDKの平均的な専有面積は18〜22㎡なので、25㎡だと一人暮らしにしてはやや広め、と考えてもおかしくはないでしょう。
ここで狭小賃貸に話を戻すと、10〜15㎡ほどの広さがスタンダードです。決して快適に感じる広さではありませんが、内見の際には部屋の広さをそのまま感じ取るのではなく、家具家電を置いたり部屋で過ごすイメージを膨らましたりして、慎重に検討すると良いでしょう。
狭小賃貸はミニマルな暮らしを求める人にこそおすすめ
都心部に多い狭小賃貸は、居住スペースが狭い反面好立地かつ相場より安い家賃が魅力です。デザイナーズ物件も多く、おしゃれな暮らしを求める人にも魅力に感じるでしょう。とはいえ、物を置くスペースやしまうスペースはほとんど確保されていないため、ミニマル(必要最低限)の暮らしを求める人に向いています。物件資料だけでは部屋の広さや快適性は把握しづらいため、内見をして狭小賃貸の暮らしをイメージしましょう。