不動産投資で利益をあげたら確定申告をしよう
不動産投資を始めると、家賃収入などが発生します。今までにない収入源となる一方で、確定申告が必要になるケースがあります。会社員の場合、納税はすべて会社が行っているため、確定申告の方法がわからない方もいるかもしれません。
今回は、不動産投資で利益をあげた場合に必要となる、確定申告に関する知識をご紹介します。
不動産投資と確定申告
不動産投資を行う場合、ほとんどの方は確定申告を行わなければなりません。忘れていたり申告漏れがあったりすると、追徴を課される可能性もあります。不動産投資をするうえで、確定申告に関する知識は必要不可欠といえるでしょう。
確定申告は、不動産投資によって「不動産所得」が発生した場合に行わなければなりません。不動産所得は、以下のような計算式で算出されます。
それぞれの詳細については、別記事を用意していますので、そちらをご覧ください。
確定申告の時期
確定申告は、行う時期が定められています。一部例外はあるものの、2月16日から3月15日の1か月間が申告書の提出期間です。前年1年間に発生した収入や支出をまとめた申告書を提出します。その後納税額や還付金額が決定されます。
確定申告の期間が1か月に限定しているため、この時期になると毎年確定申告の話題でもちきりになります。インターネットやテレビのニュースで見かけることも多くなるでしょう。
また、期間中の税務署は確定申告に関する相談が数多く寄せられます。相談に行く場合は、ある程度時間に余裕をもっておく必要があるでしょう。郵送による申告や、「e-tax」を利用したインターネットでの申告も可能のため、慣れてきたら活用するのがおすすめです。
確定申告に必要な書類
確定申告をする場合には、複数の書類を準備する必要があります。いざとなって慌てないよう、事前に準備しておくと安心です。以下では、確定申告の方式「白色申告」と「青色申告」に分けて必要な書類をご紹介します。それぞれ必要なものが異なるため、事前に確認しておきましょう。
【白色申告で必要な書類】
- 確定申告書B
- 収支内訳表
- 各種控除の証明書類(保険料や医療費など)
収支内訳表や医療費控除証明書など国税庁のホームページからダウンロードできるものもあります。不安な場合は、税務署にもらいに行くのが安心です。
【青色申告で必要な書類】
- 不動産売買契約書
- 譲渡対価証明書
- 賃貸契約書
- 売買清算書
- 家賃送金の明細書
- 税金の納付書
- 保険料の支払い証明書
- ローン支払い明細書
- 修繕積立金や管理費の明細書
会社員として給与所得を受け取っている場合は、源泉徴収票も提出する必要があります。
確定申告の手順
確定申告に対して、「複雑で難しそう」という印象を抱いている方も少なくありません。ただ、手順をしっかりと把握し、何度か経験することでスムーズにできるようになるでしょう。ここでは、確定申告の手順を大まかにご紹介します。
- 必要書類を準備する
前述の情報を参考に、まずは必要となる書類を準備します。ひとつでも欠けてしまうと受け付けてもらえないため、しっかりと確認することが大切です。また、不動産投資を始める段階で必要書類を残しておくようにしましょう。
- 申告書を準備し、必要事項を記入する
不動産投資では、確定申告書Bが必要です。税務署に受け取りに行くか、国税庁のホームページからダウンロードすることで入手できます。第1表と第2表の両方に必要事項を記入しましょう。
- 提出書類の確認作業を行う
前述の通り、提出書類に不備や漏れがある場合は受理してもらうことができず、修正申告などを行わなければなりません。書類を提出する前にしっかりと確認作業を行いましょう。
- 期限に間に合うように申告書を提出する
確定申告の期間は、2月16日から3月15日です。提出が遅れるとペナルティを課される可能性もあるため、期限に間に合うよう申告書を提出しましょう。
青色申告について
確定申告を行う方のなかには、節税について考える方も多いでしょう。節税方法は複数あるものの、もっとも多くの方が実践しているものといえば「青色申告」です。ここでは、不動産投資とあわせて理解しておくべき青色申告について解説します。
なお、青色申告以外節税方法については、別記事を用意していますので、そちらをご確認ください。
青色申告と白色申告の違い
確定申告の方式には、青色申告と白色申告が存在します。両者の違いは、帳簿のつけ方にあります。青色申告は、簡易簿記もしくは複式簿記によって記帳を行います。それぞれの特徴は以下の通り。
- 簡易簿記…ひとつの勘定項目を用いて目的のみを記録
- 複式簿記…ふたつの勘定科目を用いてお金の流れと原因と2点を記録
簡易簿記を利用した場合は10万円の青色申告特別控除が受けられ、複式簿記の場合は65万円の控除が受けられます。複式簿記と聞くと難しそうに聞こえますが、会計ソフトなどを活用すれば比較的簡単に作成が可能です。
青色申告を活用するメリット
青色申告は白色申告と比べて帳簿への記載方法が少し複雑になるものの、実際は多くの方が白色申告ではなく青色申告を行っています。それは、青色申告を活用するメリットがあるためです。青色申告のメリットを次に列挙します。
- 最高65万円の青色申告特別控除を受けられる
青色申告を活用する最大のメリットは、前述の最高65万円の青色申告特別控除にあります。65万円節税できれば、事業にも大きなプラスになるはずです。65万円の青色申告特別控除を受けるための要件は下記のふたつ。
- 複式簿記により記帳した帳簿を作成し提出
- 記帳に基づいて作成した賃借対照表と損益計算書の提出
これらの書類を確定申告書に添付する必要があります。
- 青色事業専従者給与を必要経費にできる
青色申告をしていると、事業主と生計を同一にしている配偶者や15歳以上の親族について、その事業に専ら従事している場合は給与について「事業専従者控除」を適用できます。
控除額は、配偶者が最高で86万円、15歳以上の親族は採光50万円とどちらも高額のため、配偶者や親族に給与を支払って事業を行っている場合は活用するのがおすすめです。
これは、青色申告を行っている場合のみの特典であり、白色申告では適用できません。「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署へ提出することで受けられるようになります。
- 純損失の繰り越しと繰り戻しができる
青色申告をしていると、純損失の繰り越しや繰り戻しが可能になります。繰り越しとは、不動産投資によって赤字が出た場合、損失分を翌年から最大3年間繰り越すことができる制度です。繰り戻しは、繰り越しと反対の制度です。
双方をうまく活用することで、よりスムーズに事業を行えます。
- 貸倒引当金を計上できる
貸倒引当金を計上できる点も、青色申告のメリットです。貸倒引当金とは、倒産などにより取引先の支払い能力がなくなってしまった場合の損失額を予測して計上するお金のことです。
貸倒引当金を計上するには、青色申告決算書の「貸倒引当金繰入額の計算」という項目に記載しなければなりません。ただし、貸倒引当金は、損失が発生しなかった場合、所得として差し入れる必要があります。所得が増える可能性があるため、適切に処理するよう意識しましょう位。
令和2年分から青色申告特別控除が減額される?
65万円の青色申告特別控除を受ける際に必要となる書類については、前述の通りですが、令和2年分の所得の確定申告から「e-taxによる申告」も要件に加わります。e-taxで申告を行わない場合は、青色申告特別控除額が55万円に減額されるため注意してください。
まとめ
青色申告は難しいものと考えられがちですが、正しい手順や必要となる書類を理解しておけば、それほど難しくありません。ただし、不動産投資では経費計上する項目が多いため、日ごろから確定申告を見越して明細やレシートなどを保存する癖をつける必要があるでしょう。