何年も住めば安くなる?同じ賃貸物件に長く住むメリット・デメリット
同じ賃貸物件に何年も住み続けることで、家賃や退去費用が安くなる可能性があることをご存知ですか?賃貸契約は2年ごとに更新する流れが一般的ですが、何年も同じ物件に住み続けることで得られるメリット・デメリットもあります。そこで今回は、同じ物件に長く住むメリットやデメリット、なぜ同じ賃貸物件に住めば家賃や退去費用が安くなるのかについてくわしく解説します。
賃貸物件は2年更新が多い
賃貸契約に2年契約が多い理由として考えられるのは、長すぎず短すぎない契約期間にすることで、借主側のライフサイクルと貸主側の都合が合わせやすくなる点が考えられます。
一般的な賃貸契約(普通借家契約)では、契約期間1年未満だと借地借家法による“期間の定めのない賃貸借契約”とみなされます。すると大家さんや管理会社側で解約に関する契約内容を定めることができなくなるため、契約期間を1年以上に設定するのが基本です。
そして借り手側のライフサイクルを考慮した場合、3年以上の契約では更新までの期間が長く、契約上不利です。こうした事情を踏まえ、世の中にある賃貸物件のほとんどが2年契約となっています。
ちなみに、公益社団法人日本賃貸住宅管理協会のデータ(2022年度)によると、賃貸物件の全国平均居住期間は4年1ヶ月であることがわかっています。
同じ賃貸物件に長く住むメリット
ここで同じ賃貸物件に長く住むメリットをまとめました。
- 引っ越しの手間や費用が抑えられる
- 家賃が安くなる可能性がある
- 退去費用が安くなる可能性がある
更新を繰り返せば、同じ賃貸物件に住み続けることが可能です。では、同じ賃貸物件に長く住むメリットについてくわしく解説します。
引っ越しの手間や費用が抑えられる
同じ賃貸物件に住み続けることで、引っ越しにかかる費用や手間、更新月以外で発生する違約金がかかりません。
賃貸物件は住み替えしやすい点がメリットでもありますが、住み替える際には新居に支払う初期費用や引越し費用などさまざまな費用が発生します。更新月以外に引っ越すとなると、違約金が発生する可能性も高いでしょう。
加えて、賃貸物件の住み替えは費用面の負担だけではなく、部屋探しや引っ越しに伴う手続きも多いです。不動産会社とのやり取りはもちろん、新旧の役所へ転入・転出・転居届を提出したり、免許証などの変更手続きも必要になることでしょう。
さらに、荷解きや不用品の処分などハードな作業もあります。同じ賃貸物件に住み続ければ、費用や体力の負担がかかりません。
家賃の安くなる可能性がある
同じ賃貸物件に住み続けると、経年劣化を考慮して大家さんや管理会社が家賃を下げてくれる可能性があります。家賃が安くなれば月々の出費も抑えられるので、大きなメリットにもなるでしょう。
また、更新のタイミングで家賃の減額交渉ができるケースもあります。また地域の家賃相場が下がることで、家賃が下がることもあるでしょう。
※その反面、地価の上昇や情勢により更新時に家賃が値上がりするケースも稀にあります。
退去費用が安くなる可能性がある
同じ賃貸物件に住み続けると、借主(入居者)側の負担となる原状回復費用が発生しなくなる可能性があります。
たとえば設備の場合、借主側の過失で発生した設備の不具合や故障、損耗については借主が原状回復費用を負担しなければなりませんが、それぞれの設備に決められた耐用年数を過ぎた場合は、借主ではなく貸主側が原状回復費用を負担しなければなりません。耐用年数の目安としては、流し台なら5年、壁紙やエアコンなら6年、トイレや洗面台などの給排水設備なら15年です。つまり、10年以上同じ賃貸物件に住み続ければ耐用年数を超えるものが増えるため、自己負担になるものが減って退去費用が抑えられるのです。
とはいえ、すべてに経年劣化が当てはまるとは限りません。ペットが傷つけた傷や故意によるドアの破損、壁に釘穴やネジ穴を開けた場合などの原状回復費用は借主の負担になるので注意しましょう。
同じ賃貸物件に長く住むデメリット
同じ賃貸物件に長く住み続けることはできますが、次のようなデメリットが有ることも考慮しなければなりません。
- 内装や設備が新調されない
- 後から入居した人よりも家賃が高い場合がある
- 住宅ローンを組むよりも経済的負担が大きいこともある
では、デメリットに関してくわしく解説します。
内装や設備が新調されない
同じ賃貸物件に住み続けるということは、同じ設備を使い続けることになるため、内装や設備が新調されないまま古くなります。というのも、賃貸物件の設備は借り手がいないタイミングで新調されることがあるからです。
しかし、内装や設備が新調されないのはデメリットばかりではありません。先述の通り、同じ賃貸物件に住み続けることで家賃の減額交渉ができる可能性がありますが、設備に関しても交渉の余地があるからです。
本記事の「家賃の減額交渉のポイントやタイミング」でも解説しますが、更新のタイミングが交渉の狙い目。この場合、ポータルサイトなどで同じ物件のほかの部屋にどんな設備が入っているかチェックしておくと良いでしょう。
後から入居する人より家賃が高い場合がある
同じ家賃を払い続けているのに、後から入居した人より家賃が高くなっていたというケースは珍しくありません。家賃は経年劣化や相場によって決まるため、たとえ同じ物件でも家賃が統一されているとは限らないからです。
人によっては、ポータルサイトで自分が住む物件の他の部屋の募集をチェックしたら、自分が契約したときより家賃が下がっていたと気づくケースもあるでしょう。新たに募集するときは家賃を下げるものの、すでに入居している人の家賃は変えないケースも多いです。
この場合も、家賃の減額交渉の余地があります。くわしくは本記事の「家賃の減額交渉のポイントやタイミング」を参考にしてください。
住宅ローンより経済的負担がかかることもある
賃貸物件なら、住宅ローンを組むよりも月々の支払い額が抑えられるケースも多いですが、長い目で見れば長期間賃貸物件に住むよりも住宅ローンを払い続けたほうが経済的な負担を抑えられることもあります。
当然ですが、賃貸物件である以上家賃は支払い続けなくてはなりません。ですが、住宅ローンなら数十年の支払いを終えることで“家賃”に相当する出費が一切かからなくなります。
とはいえ、家の購入には税金などの維持費がかかるうえに、メンテナンスの手間もあります。賃貸よりも住宅ローンがお得とは限らないため、住まいを借りるか購入するかについてはコストや将来設計をよく考慮しましょう。
家賃の減額交渉のポイントやタイミング
「結局、同じ賃貸物件に住み続けると損するではないか?」と思う人も少なくないでしょう。しかし、同じ物件に長く住んでいるからこそ、大家さんや管理会社に対して家賃の減額交渉ができる可能性もあります。
最後に、家賃の減額交渉について知っておくべきポイントやタイミングについてご紹介しましょう。
大家さんや管理会社との関係性が重要
家賃の減額や設備交換の交渉は「長く住んでいるから当然の権利」ではありません。大家さんや管理会社には、あくまで要望として伝えることが大切です。交渉成立のためにも、礼儀正しい態度で臨みましょう。
また、入居時にトラブルを起こさない、家賃を滞納しないなど普段から信頼関係を築くことも必要です。
家賃の減額交渉は更新時がベスト
更新時期は借主側の要望を聞き入れてもらいやすいタイミングなので、家賃の減額や設備交換の交渉をするなら更新時期が狙い目です。
交渉する際は、同じタイプの部屋の家賃や設備をチェックしたり、周辺の家賃相場を参考にしたりすれば大家さんや管理会社を説得しやすくなります。大家さんや管理会社にとっても、長く住んでもらうことで空室リスクを避けられるメリットがあるので、日頃から良い関係を維持しつつ交渉に臨みましょう。
まとめ
同じ賃貸物件に長く住み続けることで、家賃が安くなったり退去費用が抑えられたりする可能性があります。設備が一新されなかったり、後から入居した人よりも家賃が高いケースもあったりとデメリットもありますが、そのぶん設備交換や家賃の減額など交渉しやすいため、もしも同じ物件に長く住むことがあれば更新のタイミングで交渉してみると良いでしょう。