賃貸借契約の連帯保証人は途中で変更できる?知っておきたい注意点と変更の手順
賃貸借契約を結ぶ際、人によって連帯保証人を立てる人も少なくないでしょう。しかし、賃貸借契約を結んだ後に連帯保証人を変更することは可能なのでしょうか?変更の可否や注意点、変更時の手順について解説します。
賃貸物件の連帯保証人は途中で変更できる
賃貸借契約で立てた連帯保証人を変更することはできます。ただし、変更するのは決して簡単なことではなく、必要な手続きに時間がかかったり、お金がかかったり、前連帯保証人の離脱について合意したことを書面でかわさなければならなかったりなどいろいろと複雑です(後述)
連帯保証人を変更せざるを得ないパターンとは
連帯保証人を変更しなければならない事情や必要性はさまざまです。では、どのような場面で連帯保証人を変更しなければならないのでしょうか。
連帯保証人が亡くなった
賃貸借契約を結んでいる期間に連帯保証人が死亡した場合、新たな連帯保証人を立てなくてはなりません。基本的に退去する必要はありませんが、亡くなった連帯保証人の地位は相続人に相続されるため、もしも相続人が顕在であればその人が新たな連帯保証人になるのが一般的な考え方です。
ただし、相続人が前連帯保証人の相続を放棄した場合は話が別です。そうなれば、新たな連帯保証人を探して変更手続きをする必要があるでしょう。もしも新たな連帯保証人を用意できなかった場合は保証会社を利用する方法もありますが、保証会社さえも利用できない場合は退去を求められる可能性があります。
保証会社を変更した
管理会社が保証会社を変更した、所有者の変更と同時に保証会社の変更を求められた、保証会社が倒産した…などの理由で保証会社を変更しなければならない際も、連帯保証人を変更しなければならない場合があります。
たとえば、過去に家賃を滞納するなどして連帯保証人に迷惑をかけた場合、新たな保証会社で引き続き連帯保証人をお願いしたくても協力が得られない…という可能性もあるでしょう。この場合、保証会社の変更とともに新たな連帯保証人を立てなければならなくなります。
更新時に連帯保証人側から拒否された
賃貸借契約を更新する際に、連帯保証人の方から更新を拒否されることもあります。たとえば、結婚や出産などで環境が変わり、余計な責任を負いたくないという理由で連帯保証人の継続を拒否するなどです。
このあとに説明しますが、連帯保証人本人から変更を申し入れることは原則できません。また、更新料や各種手数料の支払いだけでも煩わしいなかで、あらたな連帯保証人を探すのは大変手間のかかることです。
もちろん、普段から連帯保証人とのコミュニケーションは良い状態を保つことが必要ですが、更新時のタイミングで拒否された場合には引っ越しも視野に入れましょう。
連帯保証人の保証能力が低下した
連帯保証人が仕事をやめたり、転職して収入が減ったり、高齢化したりなど、さまざまな理由で連帯保証人の資力(保証能力)が著しく低下することもあるでしょう。大家さんや管理会社からしても、保証能力のない連帯保証人はリスクがつきものです。こうした場合には、連帯保証人の変更が必要となるでしょう。
連帯保証人を変更する際の注意点
連帯保証人の変更は可能ですが、すでに交わした賃貸借契約の重要な部分を変更しなくてはならないため、簡単に変更できるわけではありません。ここで、連帯保証人を変更するうえでの注意点について解説します。
連帯保証人本人からの申し出は不可
まず、連帯保証人本人が大家さんや管理会社へ連帯保証人の辞退を申し出ても意味はありません。賃貸借契約を結んでいるのは借主だから、というのも一つの理由ですが、連帯保証人を変更するということは借主の与信を揺るがす事態でもあるからです。
連帯保証人を変更する場合、手続きをしなければならないのは借主です。連帯保証人本人がアクションを起こしても何も起こらないことを知っておきましょう。
変更時も連帯保証人に対する審査が行われる
連帯保証人を立てる際は所定の審査が必要です。もしも審査をパスできなければ連帯保証人として認められないので注意しましょう。
たとえば、連帯保証人の与信に不安点がある場合や、高齢などの理由から連帯保証人としての保証能力が継続されないと判断された場合や連帯保証人が反社会勢力に該当しているなど、審査に影響する理由はさまざまです。連帯保証人の変更はできても、審査に落ちる可能性があることを踏まえて慎重に検討しましょう。
連帯保証人の変更手続きには時間がかかる
連帯保証人の変更には、実務上新たに部屋を借りるときと同じような手続きが必要になります。つまり、変更を申し出たその日に手続きが完了するわけではなく、早くても一週間ほど時間がかかるということです。提出書類や提供した情報に記入漏れや不備がある場合は、さらに変更手続きの時間もかかることでしょう。
連帯保証人を変更する方法
最後に、連帯保証人を変更する際の流れについてご紹介します。
新たな連帯保証人を立てて貸主や管理会社に申し出る
新たな連帯保証人が見つかったら、貸主や管理会社に連絡をして変更手続きを勧めます。貸主や管理会社によって必要な手続きは異なりますが、いずれの場合においても新たな連帯保証人に対して審査が行われるでしょう。
必要書類を準備する
賃貸借契約を結ぶ際と同じく、保証契約の変更も書面で交わさなくてはならない民法上のルールがあります。書類上の手続きとして、賃貸借契約書の再締結や保証会社との保証委託契約書の再締結が必要になることを覚えておきましょう。
また、新しく連帯保証人となる人の印鑑証明が必要になることもあります。この際、契約書類には実印で捺印する必要があるため注意しましょう。
前連帯保証人の離脱について合意書を取り交わす
連帯保証人の地位から離脱する場合には、その合意書を取り交わさなくてはなりません。この合意書がなければ、連帯保証人の効力がなくならないからです。
また、実務上は前述の賃貸借契約書や保証委託契約書の処理と並行して合意書を交わす必要があります。前連帯保証人にも協力してもらい、合意したことを書面で取り交わしましょう。
連帯保証人の変更に必要な費用
連帯保証人の変更は事務手数料と保証委託料の2つの手数料がかかります。事務手数料は、契約書の再締結にかかる費用として用意するものであり、家賃の半月分から1ヶ月分程度かかることが多いです。一方、保証委託料は保証会社に対して支払う費用であり、こちらも家賃の半月分から1ヶ月分ほど必要になります。
連帯保証人を変更するよりも引っ越したほうがいい?
これまでに説明したとおり、連帯保証人の変更には手間も費用も時間もかかるため覚悟が必要です。仮に変更に伴う事務手数料と保証委託料、加えて賃貸借契約の更新で家賃3ヶ月分を用意しなければならないのであれば、思い切って引っ越したほうがスムーズかもしれません。
近年では敷金や礼金がゼロ円の物件もあります。連帯保証人が不要の物件も増えているので、連帯保証人を変更するタイミングで引っ越しを考えてみるのも良いのではないでしょうか。
まとめ
賃貸物件において、契約中に連帯保証人を変更することはできます。連帯保証人を変更せざるを得なくなった場合には、代わりとなる連帯保証人を探し、すみやかに貸主や管理会社に申し出るようにしましょう。