賃貸で適用!家賃補助制度の種類や対象条件、仕組みを解説
毎月の支出で大きく占めているのは家賃です。「少しでも家賃が安くなれば生活が楽になるのに…」と考えている人もたくさんいるでしょう。そこで注目したいのが家賃補助制度です。家賃補助制度にもさまざまなタイプがあるので、それぞれの概要や種類について知っておく必要があります。今回は、賃貸物件で適用される家賃補助制度について解説します。
家賃補助制度の主な種類と適用条件
家賃補助制度とは、賃貸マンションやアパートに暮らしている人を対象に家賃の一部を助成する制度です。家賃補助によって家計が楽になるほか、全額自己負担では住めないようなエリアや、ゆとりある広さの家に住めるのは何より魅力に感じられるポイントでしょう。
そんな家賃補助制度にも、さまざまな種類があります。
会社からの家賃補助制度
福利厚生の一部として家賃補助制度を設けている会社は少なくありません。給与に上乗せする形で支給する「住宅手当」や、会社が物件を借り上げて賃料や初期費用の一部を負担する「借り上げ社宅」、また不動産会社との連携による仲介手数料の割引など、会社によって内容やルールはさまざまです。
一般的に会社の規模が大きいほど家賃補助制度を含む福利厚生が充実している傾向にあります。ただし、社会的には在宅勤務など働き方改革も進んでいるため、家賃補助制度を廃止している企業が増えているのも事実です。
会社の家賃補助制度を利用する場合は、制度を受けるための条件や申請方法を勤務先の人事部、または総務部に確認しましょう。
★給与とは別に住宅手当が支給されるのは大きなメリットですが、これは会社から支払われる所得となるため、所得税が高くなる点に注意が必要です。
地方自治体からの家賃補助制度
地方自治体では、住民の誘致や定住を目的に独自の家賃補助制度を設けているケースがあります。たとえば、同じ東京都でも自治体によって実施している家賃補助制度が異なります。
自治体 | 家賃補助制度の名称 | 金額や期間 | 条件 |
東京都新宿区 | 民間賃貸住宅家賃助成 | 月額3万円最長5年間 | 義務教育終了前の子どもを扶養、同居しているなど |
東京都目黒区 | ファミリー世帯家賃助成 | 月額2万円最長3年間 | 18歳未満の子どもを扶養、同居している |
高齢者世帯等居住継続家賃助成 | 月額1.5万円(1人世帯)最長6年間 | 65歳以上の一人暮らし、もしくは全員60歳以上でうち1名以上65歳がいる世帯 | |
東京都千代田区 | 次世代育成住宅助成 | 月額2万円(1年目)最長8年間 | 民間賃貸住宅もしくはマイホームへの住み替えをする世帯で、区内に引き続き1年以上居住する子育て世帯など |
注意しておきたいのは、人気のため抽選になる可能性があること、そして自治体の予算編成によって年度ごとに家賃補助制度の内容が変更になる可能性があるということです。とはいえ、条件に当てはまるのであれば申請しない手はありませんので、各自治体のホームページや窓口で申請方法や適用条件を確認しましょう。
国の家賃補助制度
国が実施する家賃補助制度にもいくつか種類があります。高齢者や低所得者、障がい者などを対象とした「住宅セーフティネット制度」や、国が予算を出して地方自治体が実施する「移住支援金」などです。
住宅セーフティネット制度
住宅セーフティネット制度は、住宅確保要配慮者(要配慮者)に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)を軸に、さまざまな方法で入居や経済支援を行う制度です。
- 要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度
- 専用住宅の改修や入居への経済的支援
- 要配慮者のマッチングや入居支援
住宅セーフティネット制度は3つのタイプに分かれていますが、家賃補助という観点ではなく住まいを確保する観点で設けられています。民間の家賃は高くて借りにくい、一般の住居を申し込んだけど入居を断られたという人は注目です。条件に当てはまる人で利用したい場合は、セーフティネット住宅情報提供システムのサイトから登録しましょう。
移住支援金
移住支援金は、東京やその近郊に暮らし東京23区内に通勤していた人で、東京圏外の地方自治体に移住する世帯に支給される助成金です。助成金額は最大100万円と大きく、シングルでも対象(最大60万円)になるのがポイント。今はテレワークも普及しており、東京に住まいを持たなくても地方で働ける環境が整いつつあります。
東京から地方に移住して働きたい人や、地方で起業をしたい人にはぴったりな移住支援金。移住して仕事を始めたら、移住先の自治体に申請しましょう。
公的賃貸住宅制度・UR・公営住宅・公社住宅
一般的な家賃補助制度とは少し意味合いが異なりますが、住まいによって家賃助成が受けられたり、公社のように割安な住まいを選んだりする方法もあります。たとえば、中堅所得者用に作られた「特定優良賃貸住宅(特優賃)」や、住宅供給公社、URが運営する住まいを選ぶ方法です。
特定優良賃貸住宅(特優賃)
特優賃は、構造、広さなどの法的基準を満たした優良賃貸物件で、国や自治体から家賃補助を受けることができます。入居の際、一般的に求められる敷金や礼金、仲介手数料、更新料なども必要ありません。最長20年間補助を受けることができ、補助額は年々減少する仕組みになっていますが、ハイグレードな物件に割安で住めるのは大きなメリット。
特優賃の中から物件を選ばなくてはならない点で選択肢は狭く、入居審査が厳しいこともあります。とはいえ、家賃のみならず初期費用や更新料の負担が軽くなるため、希望エリアに特優賃となる物件があればチェックしておくと良いでしょう。
UR都市機構の賃貸住宅
UR都市機構(独立行政法人都市再生機構)が管理している賃貸住宅は、礼金や仲介手数料、更新料が不要です。加えて、子育て世帯割や近居割などさまざまな割引制度が利用できます。入居の際は収入制限があるほか、家賃が安いわけではなく、建物や設備が古い面がデメリットですが、選べる物件が多いのは魅力的です。
基本的には先着順で入居できるため、条件をチェックすると同時に空き物件を調べておくと良いでしょう。
公社住宅
公社住宅は、各自治体の住宅供給公社が管理している賃貸住宅です。住宅や所得によって家賃補助が受けられるほか、礼金や仲介手数料といった初期費用がかからず、家賃がお手頃なのがメリット。シングルでも申し込むことができますが、建物や設備が古く、駅から遠い場所にある点ではデメリットと言えるでしょう。
全国住宅供給公社等連合会のホームページから、各自治体の住宅供給公社へアクセスすることができます。URと同じように一定以上の収入が必要ですが、お手頃な家賃の家に引っ越したい場合は検討先の一つにしても良いでしょう。
公営住宅
公営住宅は、地方自治体が所有、管理している賃貸住宅(県営住宅、市営住宅)です。一定の所得以下の人、シングル、高齢者、障がい者などが優先されるほか、行政によって年収区分が決まっていたり、家族の人数によって所得制限があったりします。そのぶん、圧倒的に家賃が安く、初期費用も大幅に抑えられるのがメリットです。抽選なので必ずしも入居できるとは限りませんが、それでも条件さえ合っていれば申し込まない手はないでしょう。詳しくは、各自治体のホームページで確認してください。
家賃補助制度の仕組みを理解しよう
以上で紹介したとおり、家賃補助制度には運営元などによってさまざまな種類があります。とはいえ、それぞれに条件が設けられていることが多いため、運営元(管理元)の窓口やホームページで内容をしっかり確認しましょう。特に、子育て世帯やひとり親世帯、所得の少ない世帯などは利用できる制度も多いので要チェックです。