おとり物件はなぜ存在する?見分け方や引っかからないための対策とは
ポータルサイトで部屋探しをしていると、好条件にも関わらず格安で貸し出されている物件を目にすることがあります。もしかすると“おとり物件”かもしれません。そもそもおとり物件とはどんな物件で、なぜポータルサイトに掲載されているのか?違法性はないのか?今回は、おとり物件に騙されないための見分け方や対処法をくわしく解説します。
おとり物件とは?
おとり物件とは、募集中であるにも関わらず実際に入居できないダミー物件のことです。入居者がすでに決まっているケースや、そもそも物件自体が存在しないケースなど、おとり物件にはさまざまなパターンが存在します。
そして、その名の通り集客を目的とした悪質な広告手法としておとり物件が掲載されます。実際に問い合わせても「すでに成約してしまった」などと言われ、ほかの物件を紹介するケースが多いです。
おとり物件の掲載は違法である
おとり物件による架空の広告は、宅建業法で固く禁じられています。そして、おとり物件による広告が明らかになった場合には、行政処分が下されます。
ポータルサイトにおとり物件が掲載されていることも
実は、スーモやホームズなどを含むポータルサイトでもおとり物件が掲載されていることがあります。2022年9月、首都圏不動産公正取引協議会が発表した調査内容によると、ポータルサイトに掲載されている全物件の約9%がおとり物件であることが明らかになっています。
また、首都圏不動産公正取引協議会が公開しているおとり物件の違反事例は、そのほとんどがポータルサイトに掲載されていることがわかっています。
おとり物件はなぜなくならないのか?
おとり物件によるトラブルは年々減少していますが、実態が掴みにくく完全になくせないのが現状です。また、おとり物件は悪質なケースだけでなく、意図せずおとり物件になってしまったケースもあります。
集客目的の悪質なケース
成約済みの物件や架空の物件を掲載して集客を促すのは明らかに悪質なケースですが、古くから不動産業界に存在する手法でもあります。仲介業をメインとする不動産会社は、賃貸借契約の件数を挙げなくてはならないため、集客力や来店率を上げなくてはなりません。そこでおとり物件による違法な集客方法を取ります。
悪質な不動産会社は違法だとわかった上でおとり物件を掲載しているため、手段を選びません。強引な営業で他の物件を契約させられることもあるでしょう。
更新遅れや管理不足によるケース
悪意はなく、意図せずおとり物件が掲載されるケースがありますが、これはポータルサイトの更新がリアルタイムでないことに原因があります。たとえばスーモでは、1日に4回情報が更新されるシステムです。深夜帯は10時間ものタイムラグが発生します。
すでに申し込みがあった物件でも、更新回数によるタイムラグで空き物件としてポータルサイトに掲載されることはよくあります。また、不動産会社の人為的ミスで成約した物件を削除し忘れる、ということもあるでしょう。
おとり物件に引っかかった際のリスクやトラブル
もしも悪質な集客方法でおとり物件に引っかかった場合、問い合わせたところで「たった今申し込みが入った」などと言いながら言葉巧みに他の物件を勧めてくることが考えられます。話に流されやすく押しに弱い人なら、強引な営業に耐えきれず、当初希望していた条件からかけ離れた物件を契約してしまうこともあるでしょう。
おとり物件の見分け方・4つ
おとり物件によるトラブルを避けるためには、自分の目でおとり物件かどうかを見分けることが肝心です。もちろん、ここで紹介する特徴すべてがおとり物件であるとは限りませんが、複数当てはまる場合はおとり物件の可能性があります。
家賃が相場よりも明らかに安すぎる
同じエリアにあるにも関わらず、似た条件の物件と比較しても明らかに家賃が安い場合は要注意です。もちろん、入居者を募る上で相場より家賃を安く設定している物件はありますが、そもそも家賃は大家さんの収入にもなるため、相場より大幅に安くすることは考えられません。
相場よりも家賃が大幅に安い上に、立地がよく築年数が浅い物件も不自然です。仮におとり物件でなくても、事故物件のような訳あり物件の可能性はあるでしょう。
好条件にも関わらず長期間募集されている
家賃が相場よりも安く、好条件の物件ならすぐに入居者が見つかります。もちろん、条件が良い物件すべてがおとり物件とは限りませんが、長らく広告掲載されているような物件はおとり物件の可能性があります。
好条件にも関わらず空室期間が長く、情報更新日から1ヶ月以上経っている場合は要注意です。
物件情報が不明瞭である
おとり物件は、場所が特定されないようあえて情報を不十分にしているケースがあります。物件名や住所のいずれかが掲載されている場合は、インターネットで簡単に場所を特定することが可能です。故意におとり物件を掲載している不動産会社からすれば、おとり物件の場所を特定されるのは都合が悪くなります。
物件情報に掲載されるべき物件名や住所が記載されていない(または不十分)、物件写真が極端に少ない、過去の写真を使いまわしているなど、物件情報が不明瞭な場合は注意しましょう。
一般媒介なのに1つのサイトにしか掲載されていない
ポータルサイトでよく目にするのが、複数の不動産会社が同じ物件を掲載・募集しているケースです。これは「一般媒介」と呼ばれるもので、各不動産会社が直接大家さんと専任媒介契約を結ばなくても、物件情報を掲載し仲介することができます。
気になる物件に対し複数の不動産会社が広告掲載をしていれば、まずおとり物件の可能性が低いです。しかし、一般媒介であるにも関わらず同じポータルサイト内やほかのサイトで同じ物件が掲載されていない場合はおとり物件の可能性が否定できません。
おとり物件に引っかからないための対処法
おとり物件を見分ける以外にも、引っかからないためにできる対処法がいくつかあります。気になる物件が、先ほど紹介した見分け方の特徴に少しでも当てはまる場合は、これから紹介する方法を試してみましょう。
現地集合での内見を依頼する
もしも架空のおとり物件を掲載していたなら、現地で内見することは不可能です。現地集合での内見に応じず「他の物件を紹介したい」「一度店舗へ来てほしい」などと言われて希望物件を紹介してもらえなければ、その不動産会社での部屋探しは避けたほうがベターです。
物件名や住所の詳細を尋ねる
物件名や住所が伏せられている場合、不動産会社に詳細を訪ねましょう。たとえポータルサイトで詳細な情報を掲載していなくても、個別で情報共有してもらえるのが一般的です。「実際に来店してくれたら教えますよ」というニュアンスで来店を促されたら、おとり物件を疑ってもよいでしょう。
来店前に物件について問い合わせる
おとり物件かどうかを知りたいなら、来店する前に電話で問い合わせるのが手っ取り早いです。確実に内見できるのか、そもそもおとり物件でないのかを直接聞き、あいまいな回答ではぐらかされないか見極めましょう。その不動産会社が信頼できるかどうかも判断することができます。
信頼できる不動産会社か調べる
おとり物件のトラブルが発覚して行政処分を受けた場合は、インターネット上にその事実が掲載されていることがあります。また、Googleなどで不動産会社の口コミを調べるのも有効な方法でしょう。
ほかにも、不動産会社が個別に運営するホームページを確認することもおすすめです。情報更新が滞っていると、古い物件情報がそのまま掲載されている可能性があります。
他の不動産会社に問い合わせる
一般媒介にも関わらず、情報掲載している不動産会社が1社しかない場合はほかの不動産会社に問い合わせるのもおすすめです。本当に一般媒介として情報が流通している物件なら、他の不動産会社が仲介することもできます。
おとり物件を見つけたら公的機関やサイトに通報しよう
特定の物件がおとり物件かどうかを明確に見極めるのは困難ですが、かといってポータルサイト上のおとり物件がゼロとは言い切れません。問い合わせて「すでに成約した」と言われたにも関わらず、成約済みの物件がずっと掲載されている場合はおとり物件の可能性があります。おとり物件による被害が確認できれば、すぐに公的機関やポータルサイトの運営元に通報しましょう。