賃貸のハウスクリーニング代は拒否できる?原状回復との違いやケース別の対処法
賃貸物件の退去時にハウスクリーニング代を請求される場面がありますが、予想外に高く驚いてしまう人も少なくありません。あまりにも高いハウスクリーニング代は拒否できるのでしょうか?
今回は、ハウスクリーニング代が拒否できるケースや原状回復との違い、ハウスクリーニングに関するよくある質問についてまとめました。
賃貸物件のハウスクリーニング代が発生!拒否できる?
賃貸物件のハウスクリーニング代が拒否できるかどうかは“特約”によって異なります。
たとえば入居時の場合、ハウスクリーニング代を拒否するのは極めて難しいです。入居の条件としてハウスクリーニング代の支払いが組み込まれている場合、それを拒否することで入居自体を断られるケースがあります。
国交省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」において“ハウスクリーニング代を負担するのは借主ではなく貸主であるべき”と記載されています。では、なぜ借主に対しハウスクリーニング代を請求できるのか?これは“クリーニング代は借主が払う”などと特約がつけられているからです。
特約は貸主と借主双方の合意が必要ですが、特約がついている場合はハウスクリーニング代の負担が入居の条件となっているため、契約時点で借主自身が負担することを承認しているとみなされます。当然、退去時もハウスクリーニング代を負担しなければなりません。
本来はハウスクリーニング代は貸主負担でも、特約により借主が負担する契約になっている場合があり、拒否すれば入居自体断られる可能性が高いと言えます。
ハウスクリーニング代を拒否できる3つのケース
ハウスクリーニング代が拒否できるかどうかは契約時の特約によって左右されますが、以下の場合は拒否できる可能性が高いです。
- 特約が明記されていない
- 法外な金額での請求
- 原状回復を誰が負担するか明記されていない
- ハウスクリーニングが不要な状態
というのも、特約は完全無欠なものではありません。そもそも特約が明記されていなければハウスクリーニング代の請求は無効と判断できますし、内容によっては有効にならない場合もあります。
ここで、ハウスクリーニング代を拒否できる4つのケースについてくわしく解説します。
特約が明記されていない
賃貸借契約書の特約にルームクリーニングの記載がない場合は、請求を拒否することができます。また退去時にルームクリーニング代を請求された場合、賃貸借契約をもとに大家さんや不動産会社と話し合う必要があるでしょう。
法外な金額での請求
ルームクリーニング代の請求があきらかに高額な場合、特約を拒否できる可能性があります。というのも、国交省のガイドラインにおいて特約の有効・無効を判断する基準に「費用として妥当か」が含まれているからです。
ここで、ハウスクリーニング代の相場についてチェックしてみましょう。
部屋のタイプ | 一戸建て | マンション |
---|---|---|
1K・1DK | ー | 20,000〜50,000円 |
2LDK・3DK | 60,000〜100,000円 | 40,000〜90,000円 |
3LDK・4DK | 70,000〜110,000円 | 60,000〜100,000円 |
4LDK・5DK | 80,000〜140,000円 | 70,000〜120,000円 |
一般的にはマンションよりも一戸建てのほうが作業面積が広く、ハウスクリーニング代も高くなりがちです。具体的にどれくらいの金額で高すぎると判断できるかは規定がないため難しいですが、原状回復に相当しない大きな破損がない限り、1K・1DKレベルの部屋で10万円を超えるような請求があれば異議を申し立てても良いでしょう。
原状回復を誰が負担するか明記されていない
賃貸借契約書において、具体的な原状回復の内容や費用の負担主が明記されていない場合、ハウスクリーニング代を拒否することができます。
国交省のガイドラインおいて、特約の判断基準として「本来賃借人負担とならない通常摩耗分についても負担させるという趣旨及び負担することになる通常摩耗の具体的範囲が明記されているか或いは口頭で説明されている」と明記されています。
たとえば特約に“誰がハウスクリーニング代を負担するか”がきちんと明記されていれば、特約は有効と判断されるのが一般的です。しかし、負担主が明記されていない以上特約は無効となる可能性があります。
ハウスクリーニングと原状回復の違いとは?
ハウスクリーニングはその名の通り清掃、原状回復は修繕の意味を持ちます。
原状回復の場合、借主の不注意で発生した傷や損傷は退去時に(借主が)原状回復しなくてはならないと義務付けられてます。この原状回復は、入居前に支払う敷金から費用が差し引かれる仕組みです。これを“高額なハウスクリーニング代が請求された”と勘違いするケースも見られますが、厳密にはハウスクリーニングと原状回復は別物なので、退去立会いの際にきちんと確認しておきましょう。
ハウスクリーニング代に関係するよくある質問
ハウスクリーニング代は契約内容や物件の状態によって金額が左右されるため、場合によっては高額になるケースもあります。この場合、ハウスクリーニング代を安くする交渉は可能なのでしょうか?
最後にご紹介するのは、ハウスクリーニング代に関係するよくある質問についてです。
部屋をきれいに掃除すればハウスクリーニング代は安くなる?
退去時に部屋をきれいに掃除しておけばハウスクリーニング代が安くなるのでは?と思う人もいるでしょうが、掃除で安くできる可能性は高くありません。なぜなら、ハウスクリーニングはあらかじめ決められた内容で特殊な清掃を行うものであり、個人で掃除したところでほとんど変わることがないからです。
とはいえ、あまりにもハウスクリーニング代が高額な場合は相談の余地があります。余程ひどく汚れていない場合、契約時に提示された金額を超えることもないでしょう。
入居時と退去時それぞれで請求された場合は支払う必要ある?
入居時と退去時それぞれでハウスクリーニング代を請求された場合は、一旦保留としてください。
契約内容によっては入居時に退去する際のハウスクリーニング代を請求されるケースもありますが、請求のタイミングに関係なくハウスクリーニングの支払いは1回分で十分です。
入居時にハウスクリーニング代を支払ったのにも関わらず、退去時にもハウスクリーニング代を請求された場合は不動産会社に相談しましょう。
ハウスクリーニング代を支払わないとどうなる?
もしも退去時にハウスクリーニング代を支払わなければ、入居時に支払った敷金から差し引かれる可能性が高いです。敷金だけでカバーできれば問題ありませんが、もしもハウスクリーニング代が敷金を上回ることがあれば、追加で請求される可能性もあります。
一度サインをしたら不利な特約でも有効になる?
特約の内容が分かりづらく、理解できないまま契約書にサインをしてしまうケースも多く見られます。内容にもよりますが、仮に入居者にとって不利な特約が付されていた場合、内容を理解して契約内容に合意していなければ無効となる可能性が高いです。
国交省のガイドラインには、契約内容によって特約が無効になる場合があると明記されています。しかし、以下の要件を満たしている場合はどのような特約でも有効になることがあるので、一度確認しておきましょう。
- 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
- 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を追うことについて認識していること
- 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
まとめ
賃貸物件におけるハウスクリーニング代は、特約がない場合や高額である場合など、ケースによって拒否できる可能性があります。とはいえ、ほとんどの賃貸物件において特約が付されているため、まずは賃貸借契約書の中身を確認しましょう。相場を超えるような金額が請求された場合は、不動産会社に相談することをおすすめします。