大規模な修繕を行うタイミングと代表的な内容
マンションのオーナーになると、物件の安全性や資産を価値を保つために、定期的に大規模な修繕を行うタイミングがあります。
どのような周期で行うのかについて理解しておくだけで、資金の準備もしやすくなります。
今回は、マンションの大規模な修繕を行うタイミングや代表的な修繕内容をご紹介します。
マンションの大規模修繕は12年周期が一般的?
マンションの大規模修繕について、どのタイミングに行うのか迷っている方も多いでしょう。
この点について、マンションの大規模修繕は12年に1度行われるのが一般的です。
なぜ、マンションの大規模修繕は12年周期で行われているのでしょうか。こちらでは、3つの理由をご紹介します。
国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」
マンションの大規模修繕を行う際は、「長期修繕計画」を作成するのが一般的です。
そして、長期修繕計画を策定するうえで必要な情報が記載されている、国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」の「計画期間の設定」では、以下のように記載さえています。
【5 計画期間の設定】 計画期間は、新築マンションの場合は、30年以上とし、既存マンションの場合は、25年以上とします。 ■計画修繕工事の実施時において修繕積立金が不足することがないように、多額の推定修繕工事費が見込まれる年度を含むように計画期間を設定する必要があります。(中略)また、外壁の塗装や屋上防水などを行う大規模修繕工事の周期が12年程度ですので、見直し時には、これが2回含まれる機関以上とします。 ※引用:国土交通省 第3章長期修繕計画の作成の方法「5 計画期間の設定」 |
このように、ガイドラインのなかで「外壁の塗装や屋上防水などを行う大規模修繕工事の臭気が12年程度」と示されているため、マンションの大規模修繕が12年に1度行われるようになったといわれています。
築10年以上経過すると「全面打診調査」が必要
2008年4月1日に行われた建築基準法施行規則の改正によって、外壁がタイル張りのマンションでは、築10年から13年までに外壁の「全面打診調査」が必要になりました。
全面打診調査とは、その名の通り、タイルを直接叩いて浮いていないか確認する調査です。
まずは手の届く範囲のみ調査を行い、異常が見つかった際には全面調査を行います。
ただ、築10年以上経過していても、以降3年以内に大規模修繕を実施する場合は全面打診調査が必要ありません。
そのため、12年というタイミングで大規模修繕を行うケースが一般化しているのです。
建物部材の保証期間
マンションに使用されている資材、とくに外壁タイルや防水、塗装などは、築年数の経過とともに劣化も進んでいきます。
保証期間内であれば無償で補修できるものの、築10年以上経過すると保証期間が過ぎているケースも多く、大規模修繕を迫られます。
これも12年周期でマンションの大規模修繕が行われている理由のひとつです。
【項目別】修繕のタイミングの目安
上記の通り、マンション全体大規模修繕は、12年周期に行われるのが一般的です。ただ、正確には修繕の項目別にタイミングが異なるケースもあります。
こちらでは、公益財団法人マンション管理センターの提供する「長期修繕計画と修繕積立金」をもとに、項目別のマンションの修繕のタイミングをご紹介します。
なお、修繕のタイミングは物件の状態に応じて変化します。下記の情報は参考程度にご覧ください。
※参照:公益財団法人マンション管理センター「長期修繕計画と修繕積立金」
床防水
共用部分となる廊下や階段などの床面の防水補修工事のことです。「防滑性ビニル床シート」を使用して、防水性を補強する工事が一般的です。
バルコニーや開放廊下、階段などの床で修繕工事が行われますが、その周期はいずれも12年前後です。
屋上防水
屋上をはじめとした、防水層が劣化した場合は、水漏れを防ぐために防水補修工事を行います。
防水層や保護コンクリートがひび割れなどの症状を起こしていないか確認したうえで、箇所にあわせた補修工事が行われます。
基本的には12年周期で行われますが、なかには24年周期で行われるものもあります。
外壁塗装
マンションの入居者が手出しできない外壁塗装に関する修繕工事も、マンションオーナーの役目です。
外壁のコンクリートやモルタルのひび割れや欠損などを補修して下地調整を行います。
その後、必要であれば張替え工事を行います。時には、水漏れを防ぐためのシーリング処理も行われます。
外壁の補修については12年周期で行われていますが、再塗装などは36年周期で行われることが多いようです。
鉄部塗装
廊下や階段などの鉄分に錆が発生している場合に行われる補修工事です。錆落としを行ったうえで、錆止め材と上塗り材を塗布します。
鉄部塗装の補修工事は周期が短く、4年や6年に1度行われるのが一般的です。
大規模修繕に必要な建物診断
マンションの大規模修繕を行うには、建物の劣化状況を把握する必要があります。そのためには、各協会が行っている「建物診断」を受けることが大切です。
建物診断とは、建物の劣化状況や異常などを確認する診断作業のことを指します。調査診断や劣化診断と呼ばれることもあります。
事前に建物診断を受けることで、建物の補修や修繕が必要かどうか、どの程度の修繕が必要かどうかが判明します。
また、建物診断を実施することで大規模修繕を行う時期や工事費用の概算を算出するのにも役立ちます。
建物診断を受けられる協会は、以下の4つです。事前に申し込むことで受けられます。
- 一般社団法人 マンション管理業協会
- 一般社団法人 建物診断協会
- 一般社団法人 日本建築士事務所協会連合会
- 公益財団法人 マンション管理センター
事前の説明会を行っているところもあるため、ぜひ参加してみてください。
大規模修繕を行う際に大切なこと
マンションの大規模修繕を行う場合は、いくつかのポイントを意識する必要があります。こちらでは、大規模修繕を行う際に大切なことを3つご紹介します。
大規模修繕の目的を明確にする
大規模修繕の周期を考えるには、なぜ今回マンションの大規模修繕を行うのか、という目的を明確にすることが大切です。
マンションの大規模修繕は、以下の3つの目的から行われるのが一般的です。
- 建物の安全性や耐久性の確保
- 資産価値の向上
- 入居者にとっての居住環境の向上
どれかひとつの目的に限定されるものではなく、すべての目的がつながっているものと考えてください。目的を明確に意識することで、効率良く修繕が行えます。
修繕計画の確認と修繕委員会
実際に大規模修繕が行われるタイミングでは、マンション内で修繕委員会を立ち上げ、修繕計画を確認することが大切です。
場合によっては、設計事務所などに専門家の視点から意見をもらうケースもあるでしょう。
管理会社と良い関係を築く
マンションの大規模修繕を行うには、管理会社との関係も重要です。管理会社に大規模修繕を一任することもできますが、コストがかかってしまいます。
オーナーや管理組合、修繕委員会も自立性をもって大規模修繕に取り組み、お互い良い関係を築きましょう。
まとめ
マンションの大規模修繕は、12年周期で行われるのが一般的ですが、項目によって異なりますし、必ずしも12年に1度行わなければならないものではありません。
費用も高額になる傾向にあるため、長期的な視点をもって修繕計画を立てましょう。
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