不動産オーナーなら理解しておくべき「借地借家法」とは?
不動産に関係する法律はさまざまありますが、とくに不動産投資を行ううえで理解しておく必要性が高い法律が「借地借家法」です。
今回は、借地借家法の概要や規定されている内容をご紹介します。
不動産に関係する法律各種
冒頭でも説明した通り、不動産に関係する法律は借地借家法だけではありません。以下の表では、不動産に関係する法律各種の特徴をご紹介します。
【不動産に関係する法律各種】
法律名 | 特徴・内容 |
民法 |
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不動産登記法 |
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借地借家法 |
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建物の区分所有に関する法律 |
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宅地建物取引業法 |
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国土利用計画法 |
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農地法 |
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都市計画法 |
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建築基準法 |
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各種法律にはそれぞれ役割があります。なかには不動産投資家には関係のないものもありますが、一般法である民法や借地借家法などは理解しておくのがおすすめです。
借地借家法とは?
借地借家法とは、上記の通り借地契約や借家契約に関して規定している法律です。私たちが安心して賃貸借契約を結べるのは、借地借家法があるためといえるでしょう。
借地借家法の歴史的背景
借地借家法は、元々は「借地法」と「借家法」の2種類でした。時代背景には日露戦争による経済の発展があり、地方から上京した労働者が住居を求めて賃貸借契約を結ぶ機会が増えていました。
ただ、慢性的な住宅不足により、地主や家主が強引な条件で賃貸借契約を結ぶといった事件が頻発していた時期でもあります。
こういった事態を受けて、生活の拠点として土地や物件を借りている方の立場が不安定になることは望ましくないとして、現在の借地借家法につながる基礎の法律が作られました。最低限の契約期間の制定など、借主保護が主な内容でした。
その後、日本はさらなる戦争へと突入し、借地借家法も再整備されることになります。
主な内容としては、「正当な事由」ない限り、家主は賃貸借契約を解除できないというものです。戦争中に契約期間が満了するなどの心配をすることなく、国民が戦争に集中できるようにするためといわれています。
この制度の創設により、契約満了による地主や家主からの契約解除は難しくなりました。
定期借地制度や定期借家制度の創設
前述のような歴史的背景を経て借地法や借家法が制定されました。しかし、千五の発展により地価が高騰し、地主や家主は固定資産税や相続税の大きな負担を強いられることになります。
それにもかかわらず、上述の理由で地主や家主は借地人・借家人との契約を解除することが難しく、土地や物件の有効活用が図りづらくなってしまいました。明け渡しをしてもらうには、多額の立ち退き料を支払わなければならないケースもありました。
そこで、正当事由がなくても契約期間を満了した場合は、賃貸借契約が自動t系に解除される定期借地・定期借家契約が創設されました。
これが現在の借地借家法の柱となっています。
借地借家法に規定されている内容
借地借家法には、前述の通り借地契約や借家契約に関するさまざまな内容が規定されています。こちらでは、借地借家法に規定されている不動産オーナーに関係する内容をご紹介します。
借主の権利である借家権とは
基本的な権利である「借家権」という言葉も、一般の方にはなじみが少ないでしょう。借家権とは、賃貸借契約を結ぶことで生じる借主の権利のことを指します。
借地借家法では、この借家権についてさまざまな権利保護の規定が設けられています。たとえば、前述の賃貸借契約の解除制限や、家賃を一方的に値上げできない点が代表です。
賃貸借契約の期間について
借地借家法では、賃貸借契約の期間についても規定されています。一般的な賃貸借契約では、原則1年以上の契約期間がなければなりません。
1年未満の契約を結んだ場合は、期限の定めがない賃貸借契約とみなされます。
ただし、建物の老朽化や取壊し時期が決まっている場合には、1年未満の契約も結ぶことができます。
賃貸借契約の更新と退去について
借地借家法の前提となっている民法では、契約期間が満了した段階で契約は終了となり、貸主は借主に対し貸していたものの返還請求が行えます。
しかし、借地借家法では建物の賃貸借契約について、契約期間が終了した場合でも借主が延長を望んだ場合は退去請求ができないと規定されています。更新を拒否する場合は、正当事由が必要です。
正当事由が認められるかどうかは、裁判所が判断します。正当事由がないにもかかわらず退去請求を行う場合は、立ち退き料を支払うケースもあります。
家賃の変更について
借地借家法では、家賃の一方的な変更も制限されています。家賃の値上げに変わる退去請求も同様です。家賃の変更には、基本的に両当事者の同意が必要となっています。
当事者間で合意が成立しないと、調停や裁判に発展する可能性もあります。判断が下されるまでは、妥当と考える金額を借主は支払うことになります。
建物の所有者変更について
建物の所有者が変更になった場合でも、借家人に対して所有者変更を理由に退去を請求することはできません。借家人に住み続ける意思があるのであれば、居住する権利が認められます。
借地借家法によって不動産オーナーが負う義務
賃貸借契約は、基本的に借主の権利が守られるよう法律が規定されています。そのため、借地借家法には不動産オーナーが負う義務が多く規定されています。
- 使用させる義務
借主が生活できるように、部屋を明渡し、環境を整える義務を指します。住居以外の廊下や階段、ごみ置き場などを安心して使用できるよう整える義務も含みます。
- 修繕を行う義務
建物のオーナーには、借主が契約後支障なく生活できるよう、必要な修繕を行う義務があります。鍵の取替えや雨漏り、水道の水漏れなどの対応は、オーナーが費用を負担して修繕を行います。
ただ、室内の電球の交換やカーテンの設置など、借主負担で行う必要のあるものも存在します。
修繕義務を怠ってしまうと、借主からの損害賠償請求や家賃の減額などに応じる必要があります。
- 費用を償還する義務
借主が自らの費用で部屋を修繕した場合、オーナーにはその費用を償還する義務が発生します。
すべての修繕について費用の償還義務が発生するわけではありませんが、部屋を支障なく使用するために行われた修繕の費用(必要費)については、全額費用償還をしなければなりません。
- 自力救済禁止
借主が契約の解除が退去しない場合でも、裁判などの手続きを経ることなく実力行使で退去を迫ることはできません。これを自力救済禁止と呼びます。
万が一自力救済を行ってしまうと、不法行為が成立し、損害賠償を請求される可能性があります。
まとめ
不動産オーナーにとって、借地借家法は基本的な法律です。管理会社に任せる場合でも、必要な部分については理解しておくことが大切です。
不動産投資については、こちらの記事もご覧ください。