不動産投資事業を法人化するメリット・デメリット
はじめは副業として行っていた不動産投資も、利益が大きくなると事業を「法人化」し、会社を興そうと考える方もいるでしょう。今回は、不動産投資事業を法人化するメリットや注意点、そのタイミングをご紹介します。
不動産投資で法人化するメリット
不動産投資は、利益が大きくなったら事業を法人化するのがおすすめです。こちらでは、不動産投資で法人化するメリットをご紹介します。
相続税の節税に役立つ
不動産投資事業を法人化する最大のメリットは、相続税の節税に役立つ点です。
所有している財産が多いと、被相続人がなくなった場合の相続税も高くなります。事業を法人化せず、あらゆる不動産を自己所有の状態で相続人に相続させると、相続人は多額の相続税を支払わなければなりません。
時には、相続税を支払うために不動産を売り払うこともあり、現物資産も残せない可能性があります。
不動産投資事業を法人化すると、財産を「会社所有」と「個人所有」に分けることができます。
個人所有の財産はすべて相続財産となり、相続が発生した場合は相続税が必要です。一方、会社所有となった不動産は、あくまで会社の資産であるため、相続自由が発生しても相続財産にはならないのです。つまり相続税がかかりません。
もし、相続人に不動産投資事業を継いでもらうのであれば、法人の代表の地位を与えるだけで十分なのです。
相続税の節税は、より多くの不動産を所有している方ほど大きなメリットとなります。
所得税から法人税への変更
法人化によって、所得税の代わりに法人税を支払う必要があります。個人にかかる所得税は、累進課税という方式で計算され、所得が増えるほど税率が高くなるようになっています。
所得税の最大税率は45%であるのに対して、法人税率は最大23.2%となっています。たとえば、不動産投資事業で1,000万円の利益をあげている場合、個人では33%の税率が適用されます。一方、法人の場合は23.2%です。
支払う税金を少なくし、利益を最大化するには法人化が必須といえるでしょう。
給与所得控除の適用
不動産投資事業を個人で行っている場合、売上から必要経費を差し引いた金額が事業所得となり、これに所得税が課税されます。
一方、会社員の場合は、会社から給与が支払われ、これに所得税が課税されます。
不動産事業を法人化すると、個人事業主から法人の社長の立場へ変更となり、売上は会社の収益となります。社長は、会社から役員報酬を受け取り、それが給与所得に該当し所得税が課税されます。
事業所得とは異なり、給与所得には給与所得控除が認められており、一定額が控除されます。そのため、事業所得の場合と比較して少ない金額が課税対象となります。
家族に給与を支給できる
個人事業主として活動している場合も、家族を従業員として雇用し給与を支払うことができます。ただ、この場合「青色事業専従者給与の届出」の提出が必要です。この点について、法人であればとくに制約がかかりません。
また、家族であっても、年間110万円以上の贈与を行うと、超えた部分が課税対象となります。
法人化することで、家族に給与や役員報酬という形で支払うことが可能です。贈与ではないため、贈与税はかかりません。さらに、給与や役員報酬は経費計上も可能です。
ただし、どんな金額でも誰にでも支払えるわけではありません。あくまで役員報酬や給与であるため、金額が社会通念上相当であり、正当な業務への対価である必要があります。
未成年者や実際には全く仕事をしていない方に支払うことはできないと考えてください。
経費の幅が広がる
個人事業主であっても法人であっても、経費として計上できるものはいくつかあります。ただ、主に「給与」「生命保険」「退職金」の3点で対応が大きく異なります。
給与は、前述の通り役員報酬が経費として計上可能です。生命保険は、会社が契約者であれば経費計上できます。
また、個人事業主にはない退職金の制度も、法人であれば活用可能です。退職金には、「退職所得控除」という制度があり、退職金を支払う会社も、受け取る個人にもメリットとなります。
個人事業主と比べて経費の幅が広がる点も、法人化のメリットのひとつです。
欠損金の繰越控除期間の延長
事業で発生した赤字を翌年以降に繰り越し、黒字と相殺する制度を「欠損金の繰越控除」と呼びます。
欠損金の繰越控除の制度は、個人事業主と法人の双方に認められていますが、個人事業主の場合は3年間、法人の場合は9年間繰り越しが可能です。
繰越期間が長いほうが万が一赤字が出た場合にも安心のため、法人にしたほうがメリットは大きいでしょう。
不動産投資で法人化する際の注意点
上記のように、不動産投資事業を行ううえで法人化することは大きなメリットですが、注意点もあります。こちらでは、法人化の注意点をご紹介します。
赤字でも支払う税金がある
個人事業主の場合、赤字を出している状態では住民税が課税されません。ただ、法人の場合は法人税割は課税されないものの、均等割は納める必要があります。
事業としての利益が少ない場合は、法人化することがデメリットとなるかもしれません。
社会保険の加入義務
社会保険は、「事業主を含む従業員1名以上の会社」は強制適用事業者となります。社会保険の加入が義務となり、厚生年金と健康保険の費用の半分を会社で負担しなければなりません。
また、労災保険や子ども・子育て拠出金など、全額会社負担となるものも存在します。
会社設立費用がかかる
個人事業主は税務署等へ事業開始の届出を提出するだけですが、会社となると設立費用がかかります。
設立予定の会社が株式会社であれば、定款を公証人に認証してもらう必要があり、手数料が必要です。さらに、資本金額に応じた登録免許税、司法書士への手続きの代理費用など、さまざまなコストがかかります。
具体的には、株式会社の場合25~30万円、合同会社の場合は10~15万円が必要です。コストのかからない個人事業主とは大きな違いでしょう。
運営費用がかかる
会社を運営するには、一定の費用が必要です。とくに、法人税の申告に関して税理士等へ依頼する場合は、さらにコストがかかります。
法人税の申告方法には、白色申告と青色申告があり、多くの会社が優遇を受けられる青色申告を選択します。この点は個人事業主も同様なのですが、法人の場合は帳簿へより詳細な記載が求められます。
そのため、とくに青色申告を選択した場合は、税理士等へ依頼することも多く、その費用がかかります。
白色申告と青色申告については、以下の記事を参考にしてください。
まとめ
不動産投資事業を行っていると、ある程度利益をあげた段階で「法人化」が頭をよぎることでしょう。不動産事業の法人化は、メリットが多いものの、一部注意しなければならない点もあります。
メリットやデメリットを理解したうえで法人化の手続きを進めることが大切です。今回の記事をぜひ参考にしてください。
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