家賃収入がある場合の確定申告コツ
終身雇用が形骸化し、副業をするのが当たり前になりつつあるなか、家賃収入を得ている方の割合も増えています。そして、毎年2~3月になると話題にのぼるのが「確定申告」です。特に初めて確定申告をする方は不安も多いでしょう。今回は、家賃収入がある場合の確定申告のコツをご紹介します。
確定申告とは何か?
個人事業主の方に「確定申告とは何ですか?」と質問すると、意外と答えられないケースもあります。確定申告とは、個人が前年の1年間で得た所得をもとに支払うべき税金を計算する作業のことです。
会社員であれば、本来会社が行ってくれる作業ですが、個人で仕事をしている方は自分で行わなければなりません。会社が行うこの作業のことを「年末調整」と呼びます。聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。
確定申告が必要となる方
上記では、「個人事業主=確定申告が必要」「会社員=不要」といった形で説明しましたが、会社員でも確定申告が必要となるケースがあります。
- 会社で年末調整を行えなかった方
- 退職していて年末調整をしていない
- ふたつ以上の会社から給与を受け取っている方
- 給与所得以外の所得がある方
- 年末調整時に誤りがあった方
上記の例は一部ですが、該当する方は基本的に年末調整が必要です。また、「給与所得以外の所得がある方」にもある通り、会社員であっても家賃収入がある方は確定申告が必要です。今回の記事を参考に期日までに行いましょう。
確定申告したほうが良い方
確定申告を必要としないケースでも、確定申告がしたほうが良い方もいます。
- 確定申告で税金が還付される方
医療費控除や住宅ローン控除、寄付をした方などは、確定申告によって還付を受けられる可能性があります。反対に、確定申告をしないと還付を受けられないため、確定申告は義務ではありませんが必ず行いましょう。
- 個人事業主で赤字を翌年に繰り越す方
個人事業主が青色申告をすると、赤字を翌年に繰り越すことができます。そのため、今年度赤字の方は、確定申告を行いましょう。
- 銀行からの融資を検討している方
確定申告書は、収入を証明するための書類として活用できます。とくに、銀行からの融資を受ける際には、必ず提出を求められます。提出しなければ融資を受けることができないため、銀行からの融資を検討している方は確定申告を行いましょう。
青色申告と白色申告
確定申告には、「青色申告」と「白色申告」のふたつの方法が存在します。「青色申告=難しい、面倒」、「白色申告=簡単」というイメージがありますが、青色申告には数多くのメリットがあるため、確定申告の際には青色申告がおすすめです。
青色申告とは、不動産所得や事業所得、山林所得のある事業者が、取引結果を帳簿へ記載し、その結果を申告する制度です。複式簿記による帳簿を作成しなければならないため手間がかかるものの、節税効果の高さが魅力です。
白色申告は、青色申告を行っていないすべての事業者が行います。かつては「白色=簡単」というイメージでしたが、2014年に「帳簿への記帳」と「帳簿等の保存」義務が法律で設けられたため、手間に関しては青色申告と大きく変わらないといわれています。節税効果が低い分、白色申告ではなく青色申告がおすすめです。
確定申告の流れ
ここでは、確定申告の大まかな流れを確認していきます。
- 情報の収集
- 必要書類の準備
- 申告書の作成
- 申告書の提出
- 納税または還付
確定申告といえば、3つ目の申告書の作成を思い浮かべる方が多いですが、実は申告書の作成自体はそれほど大変ではありません。情報の収集や必要書類の準備さえしっかりと行っていれば、時間もそれほどかからないでしょう。
確定申告の必要書類
確定申告の必要書類は、白色申告と青色申告で下記のように変化します。
白色申告の場合 | 青色申告の場合 |
確定申告書AorB | 確定申告書AorB |
控除関係の書類 | 控除関係の書類 |
源泉徴収票(給与所得がある場合) | 源泉徴収票(給与所得がある場合) |
収支内訳書 | 青色申告決算書 |
確定申告書にはAとBの2種類がありますが、Aはサラリーマンやパート勤務の方、Bはフリーランスや個人事業主の方が使用します。白色申告か青色申告かは関係ないため注意してください。
社会保険料控除や生命保険料控除を受ける場合は、それぞれ支払った証明書を添付することで控除を受けられます。証明書をなくしてしまった場合でも再発行ができるため、確定申告を行う前に手元に証明書があるか確認しておきましょう。
家賃収入にかかる税金
アパート経営のを行う大家さんにとっての心配事といえば、どれくらいの金額の税金をどのように支払うのかという点ではないでしょうか。副業として大家を行っている方は、税金=会社が支払ってくれるものという印象が強いと思いますが、前述の通り副収入を得ている場合は確定申告が必要です。ここでは、家賃収入にかかる税金についてご紹介します。
課税対象となる不動産所得
所得に対して課せられる税金を所得税と呼びます。所得税については所得税法で定められており、家賃収入は「不動産所得」と規定されています。
この不動産所得とは、賃料や礼金など不動産経営を行ううえで得られる収入から必要経費を差し引いたものです。その金額が所得税の計算対象となります。
収入と必要経費の範囲
収入から必要経費を差し引いたものが課税対象となりますが、不動産経営では多くのお金が出入りするため、どれが収入にあたり、どれを必要経費として計上できるのかわかりづらい傾向にあります。そこで、収入と必要経費の範囲を下記でご紹介します。
【収入に含まれるもの】
- 賃料
- 礼金
- 更新料
- 管理費
- 駐車場代
- 自販機の設置による収入
- アンテナ基地設置料金 など
収入について注意すべき点は、敷金が含まれないところです。敷金は借主への返還を予定しているため、基本的には収入に含まれません。ただし、契約内容や債務不履行などによってしききんを返還しないことが決定した場合は、ただちにその金額を収入として計上する必要があります。
【必要経費として計上できるもの】
- 修繕費
- 管理委託費
- ローン金利
- 減価償却費
- 広告費
- 不動産取得税
- 固定資産税 など
不動産経営を行ううえで、修繕や管理、入居者の募集など、外部に委託して行う際の費用はすべて経費として計上されます。その他税金関係やローンの金利支払い分についても必要経費とみなされます。
確定申告が必要となる収入の基準
サラリーマンであっても、不動産所得がある場合は確定申告が必要とお伝えしましたが、それは給与以外の所得の合計が年間で20万円を超えた場合のみです。20万円以下の場合は、「確定申告をしたほうが良い」ケースに当てはまらない限りは確定申告は不要でしょう。また、あくまで必要経費を差し引いた後の「不動産所得」が20万円を超えた場合のみであることも注意してください。
確定申告をしないとどうなるのか
確定申告が必要な収入があるにもかかわらず、確定申告をしない、申告内容に誤りがあるなどの場合は、追徴課税が行われます。追徴課税には、重加算税・延滞税・過少申告税の3つが存在します。
深刻を忘れると、ペナルティとして重加算税が適用されます。悪質なケースと判断された場合に行われ、本来の納税額の35%、無申告の場合は45%が追加で課税されます。
深刻が起これると延滞税が必要です。延滞日数や納税額などによっても税率が変わります。申告額が少ない場合は過少申告加算税がかかります。
まとめ
不動産取得のある大家さんは、毎年確定申告をしなければなりません。確定申告に関するルールはいつ変更になってもおかしくないため、毎年知識をアップデートしましょう。