賃貸住宅供給促進法(住宅セーフティネット制度)とは一体何?利用対象や利用方法をご紹介
高齢者や障がい者など、住まいの確保が難しい方への支援制度「住宅セーフティネット制度」をご存知ですか? この制度を利用することで、安心して暮らせる住まいを見つけやすくなります。 そこで今回は、住宅セーフティネット制度の概要や対象、探し方、利用方法などをくわしくご紹介します。賃貸契約に何かしら不安を抱えている人は、この記事を読むことで少しでも問題が解消できるかもしれません。
賃貸住宅供給促進法(住宅セーフティネット制度)とは一体何?
賃貸住宅供給促進法(以下、住宅セーフティネット制度)は、住まいの確保が難しい人に対する支援制度のことです。
たとえばアパートやマンションを契約したくても、賃貸契約できる家がなかなか見つけられなかったり、不動産会社や家主から契約を断られてしまったり、保証人になってくれる人が見つからなかったりする問題もあるでしょう。特に、高齢者や障がい者、低所得者といった“住宅確保要配慮者”にとっては、現実に起こり得るケースです。
こうした問題を抱える人が、住む場所に困らないように整備されたのが住宅セーフティネットです。
住宅セーフティネット制度の仕組み
住宅セーフティネット制度は、以下3つの柱で成り立っています。
- 住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度
- 専用住宅にするための改修・入居に向けた経済的支援
- 住宅確保要配慮者と建物のマッチング・入居支援の枠組み
ポイントは、借りる側と貸す側それぞれの不安要素を取り除くこと、そしてマッチングを促進する仕組みです。
高齢者や障がい者など住宅確保要配慮者と呼ばれる人たちは、住宅を借りたくてもスムーズに借りることができません。一方、大家さんにとっても人口の減少に伴う空き家の増加が悩みです。
このような背景から、借りる側に家賃補助や家賃債務保証、相談窓口を設置するなどし、貸す側にはバリアフリー化などの住宅改修費の補助や相談窓口が設置されました。
住宅セーフティネット制度により、借りる側と貸す側それぞれの課題を解決できる仕組みが構築されています。
住宅セーフティネット制度のメリット
- 入居を拒まれる心配がない
- 経済的な負担を軽減できる
- 安全で快適な住まいが保証される
- 充実したサポート体制が整っている
住宅セーフティネット制度の大きなメリットは、住宅確保要配慮者でも入居を拒まれることがないという点です。
また家賃や保証料の減免や補助を受けられる場合もあるため、収入が少ない人でも住まいの確保に対するハードルが下がっています。連帯保証人がたてられなくても、国指定の業者から家賃債務保証サービスが受けられるので、経済的不安を抱えている人でも安心して賃貸契約を結ぶことが可能です。
そして「セーフティネット住宅」に登録されている物件は、安全かつ良質な住まいとして国の基準を満たしています。耐震性能がある、一定の居住面積が確保されているなど、住まいそのものの安全性や品質が保証されているのは嬉しいポイントです。
さらに、都道府県認定の法人などから入居相談や生活相談、見守りサービスなどが受けられるのもメリット。家探しだけではなく、その後の生活までサポートしてもらえるのは心強いでしょう。
住宅セーフティネット制度のデメリット
- 現状、対象物件が少ない
- 希望条件に沿わない可能性がある
- プライバシー面で不安な物件もある
- 入居者の属性からトラブルに発展する可能性がある
まず、住宅セーフティネット制度自体が比較的新しいこともあり、対象となる物件が十分とは言えません。必ずしも希望するエリアに対象物件があるとは限らないでしょう。
また、対象物件の安全面が保証されているとはいえ、築年数が古かったり設備が老朽化していたりとマイナス要素を抱えた物件も多いです。これは、対象物件が“空き家の活用”であるパターンが多いことに起因しています。なかには、キッチンやお風呂、トイレなどが共用の物件もあり、プライバシー面で不安な物件もあるでしょう。
次に、入居者に対する問題や課題です。住宅の確保に困っている人は、経済的理由や病気、失業などさまざまな事情を抱えていることが多いため、精神的に不安定な状態の人も少なくありません。入居者同士のトラブルなど、問題が発生する可能性もわずかながらあるでしょう。
このように、住宅セーフティネット制度は課題や問題を抱えている状態ではあるものの、住まいの確保を望む人にとっては重要な制度でもあります。今後たくさんの人が安心して暮らせるよう、制度の改善が求められます。
住宅セーフティネット制度の対象者
住宅セーフティネット制度が利用できるのは、以下に該当する「住宅確保要配慮者」が条件です。
低所得者 | 月収15万8千円以下の世帯 |
高齢者 | 年齢などの定義はないものの物件により下限設定あり |
障がい者 | 障がい者基本法に規定する方 |
子育て世帯 | 18歳未満の子どもがいる家庭 |
被災者 | 災害発生から起因して3年以内で、災害により住宅が損壊し住める状態ではない方 |
外国人、その他 | 条約や他法令に居住の確保に関する規定がある方外国人以外にも、児童虐待被害者やDV被害者、拉致被害者、犯罪被害者、生活困窮者、中国残留邦人などが該当 |
上記の中でも子育て世帯は、18歳となった子どもが年度末に至るまでの間と定義されています。また、騒音トラブルなどを懸念して入居を断られるような小さいお子さんがいる家庭も「住宅確保要配慮者」の対象です。
そして高齢者や障がい者については、対象となる物件に対し段差の解消やエレベーター設置などのリフォームが求められています。稀なケースですが、認知症の進行などによる近隣トラブルや孤独死のリスクがあることを理由に入居を断られることもあるようです。
セーフティネット住宅を探すには?
セーフティネット住宅を探す方法はいくつか存在します。
- 居住地の市区町村役場へ直接相談する
- インターネットで検索する
- 居住支援協議会に相談する
各市区町村には、住まいに関する相談窓口が設けられています。セーフティネット住宅を探すなら、直接担当者に相談することで物件を紹介してもらえるでしょう。
また、国土交通省が運営するセーフティネット住宅情報共有システムや各自治体のホームページ、不動産ポータルサイトにセーフティネット住宅の情報が掲載されているケースもあるため、チェックして損はありません。
居住支援協議会は、住宅確保に困っている人を支援する組織です。個々の状況に応じ、相談員が物件探しをサポートしてくれるので、一度相談してみるとよいでしょう。
>>全国居住支援協議会
>>セーフティネット住宅情報共有システム|国土交通省
住宅セーフティネット制度の利用方法とは?
住宅セーフティネット制度を利用する流れは、一般的な部屋探しとほぼ同じです。とはいえ、街の不動産会社ではなく居住支援協議会などの専門窓口で相談する流れになるので、知っておきましょう。部屋探しをし、内見をして契約、そして引っ越しまでが一連の流れです。
また、セーフティネット住宅だからとはいえ家賃設定が安いとは限りません。これは「住宅確保要配慮者」が必ずしも低所得者だとは限らないためです。
ですが、低所得者(月収15万8千円以下の世帯)かつ入居者を住宅確保要配慮者に限定した登録住宅に入居する場合は、家賃や家賃債務保証料の補助制度が適用されるケースがあります。くわしくは相談窓口に問い合わせましょう。
まとめ
住宅セーフティネットは、住宅確保要配慮者の対象となる低所得者・高齢者・障害者・被災者・子育て世帯など、住宅を確保するのが困難な人々が、安心して住まいを確保できるようにするための国の制度です。住宅セーフティネットを利用するには、居住エリアの市区町村役場や、居住支援協議会に相談する流れになります。もし、住宅に関することで困っていることがあれば、一度相談してみてはいかがでしょうか。