賃貸の退去費用の平均は?納得行かない場合は減額交渉で安くすることができるのか
賃貸物件にかかる退去費用は、部屋の広さや補修の程度によって変動します。もしも高額な退去費用を請求された場合、支払い拒否や減額交渉は可能なのでしょうか?今回は、賃貸物件における退去費用の平均はもちろん、退去費用が高くなる原因や減額交渉の可能性について解説します。
賃貸物件の退去費用はなぜ発生する?
賃貸物件の住み替えには、新しい物件を借りるための費用だけでなく、退去する部屋の費用も用意しなければなりません。ここでいう退去費用とは、原状回復にかかる設備の修繕やハウスクリーニングを指します。そして、賃貸物件は原状回復を条件に契約を交わすのが一般的です。
経年劣化や通常損耗は退去費用に含まれない
原状回復にかかる費用は、借主が全額負担するわけではありません。経年劣化や通常損耗による損害は、借主ではなく貸主が負担します。また、原状回復費用の負担割合は耐用年数と経過年数が考慮されるため、一概に何対何と言い切れないのが現状です。
参考として、耐用年数6年の壁紙を使用した物件に3年間住んだ場合、借主にかかる修繕費用の割合は経過年数を考慮して50%となります。
原状回復費用の負担区分とは
経年劣化や通常損耗による損傷については貸主負担、自身の故意や過失による損傷については借主負担というのが原状回復費の基本的な考え方です。原状回復費用について、貸主・借主のどちらが支払うべきかは国交省の定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づいて4つの区分に分類されます。
A | 賃借人が通常の住まい方、使い方をしても発生すると考えられるもの | 貸主負担 |
B | 賃借人の住まい方、使い方次第で発生したり、しなかったりすると考えられるもの(明らかに通常の使用時による結果と言えないもの) | 借主負担 |
A(+B) | 基本的にAではあるが、その後の手入れなど賃借人の管理が悪く、損耗等が発生または拡大したと考えられるもの | 貸主(借主)負担 |
A(+G) | 基本的にはAであるが、建物価値を増大させる要素(グレードアップや改良など)が含まれているもの | 貸主 |
※国交省「損耗・毀損事例の区分」から引用
賃貸物件の退去費用の相場【間取り別】
冒頭で触れたように、退去費用の相場は部屋の広さや補修箇所、居住年数によって変動します。そこで、間取り別の平均費用についてまとめました。
- 1R・1K・1DK・1LDK …49,980円
- 2K・2DK・2LDK…79,924円
- 3DK・3LDK・4K・4DK・4LDK…90,139円
このように、部屋の数が多いほど補修箇所も多くなり、退去費用が高くなる傾向にあります。とはいえ、部屋が広ければ広いほど退去費用も比例して高くなるというわけではありません。
たとえば、部屋の広さが15〜20㎡に対し、1㎡あたりの退去費用の目安は2,950円になります。一方、61〜70㎡の物件の1㎡あたりの退去費用の目安は1,355円と低くなるのが特徴です。
賃貸物件の退去費用の相場【補修が必要な場合】
部屋の広さに加え、補修箇所によって退去費用の相場も変わります。たとえば水垢やカビなどの補修費用は5,000円〜2万円が相場ですが、壁や天井ボードの補修は2万〜6万円が相場と高額になりがちです。
将来的に退去費用を抑えたいなら、落とせる汚れを掃除しておいたり、入居時に部屋の状態を確認して記録に取っておいたりすると良いでしょう。
賃貸物件は敷金から原状回復費が引かれる
原状回復費は、入居時に支払った敷金から差し引かれます。敷金の範囲内であれば差額分が返還されますし、敷金よりも高額になった場合は追加で支払う必要があります。
ちなみに、初期費用を抑えるために敷金・礼金ゼロの物件を選んだ際は、原状回復費がそのまま退去時に請求されます。敷金・礼金ゼロの物件に住んでいる人は、あらかじめ退去費用を準備しておきましょう。
賃貸物件の退去費用が高くなる原因
実際に退去する日を迎えなければ、退去費用がいくら請求されるのかわかりません。場合によっては、思わぬ額の退去費用を請求されることもあるでしょう。そこで、退去費用が高額になりやすいケースを紹介します。
タバコによるヤニ汚れなど
タバコに含まれるヤニ(タール)は、クロスが黄ばむ原因になります。汚れだけではなくニオイまでクロスに染み付けば、クロスごと交換しないと解消困難です。さらに火の不始末でフローリングに焦げ跡がついてしまえば、フローリングごと交換しなくてはなりません。このことから、退去費用が高額になるのは容易に想像できます。
もっとも、喫煙は借主都合によるものであり、ガイドラインにおける“通常使用”の範囲を超えるとみなされるため注意が必要です。
結露によるカビ
結露を放置すると、窓枠やサッシ、クロス、フローリングにカビが発生する場合があり、張り替えるだけでも高額な費用がかかります。仮に、結露でクロスにカビが発生した際は30,000円から100,000円以上の補修費用が必要です。
結露は自然現象なので借主負担にならないのでは?と思われがちですが、拭き取りができる以上、結露の放置は“通常使用”の範囲を超えるとみなされます。自然現象を避けるのは困難ですが、だからこそカビを発生させないよう手入れしなければなりません。
ペットによるニオイや傷
ペットを飼っていると、壁や柱をかじったり、爪を研いだりすることもあるでしょう。これによりクロスやフローリング、柱の補修が必要となった場合、範囲が広いほど補修費用が高額になります。また、ニオイが消えない場合も脱臭や除菌に高額な費用がかかります。
鍵の破損や紛失
鍵は借主が管理しなくてはならないため、紛失したり破損したりすると借主負担で賠償しなければなりません。特に、ディンプルキーのような特殊な鍵は高額なので、1本紛失するだけでも数万円の費用が請求されることもあります。
賃貸物件の退去費用が高額な場合は減額交渉できる?
退去費用の請求が高額の場合でも、減額交渉により費用を安くしてもらえる可能性があります。もっとも、交渉をするだけならお金もかかりません。もしも退去費用が高いと感じたら、減額交渉に臨んで損はないでしょう。
減額交渉の際は、国交省による原状回復のガイドラインに沿って判断していることを伝えれば要望が通りやすいです。自分で判断することが難しければ、消費者センターへ相談した上で原状回復費の妥当な項目や金額を提示すると良いでしょう。
もちろん、退去前に自分で清掃したり、目立つ傷や穴を補修したりすれば原状回復費が抑えられる可能性もあります。
賃貸物件の退去費用が払えない場合
退去費用が高額であっても、支払わないでいると連帯保証人へ請求されたり、法的措置で退去費用以上の賠償金や慰謝料を支払ったりと状況が悪化します。よって、支払い拒否をすることはできません。
とはいえ、金額に関わらず退去費用が支払えない場合もあるでしょう。
もしも退去費用が払えない場合は、理由を正直に述べた上で管理会社に相談しましょう。場合によっては分割払いに応じてくれたり、減額に応じてくれたりする可能性があります。
退去費用は事前に用意しておくとベター
退去費用はガイドラインに沿って支払うことになるため、あまりに不当な請求をされた際は減額できる可能性もあります。ただし、借主の故意や過失による損耗で退去費用が高額になるほか、敷金ゼロの物件に住んでいる人は発生した退去費用がそのまま請求されます。もしもに備えて、事前に退去費用を用意しておきましょう。