引っ越しで使える補助金・助成金って?意外と知らない公的支援制度
引っ越しは、新生活への期待感とともに、まとまった出費が避けられないイベントでもあります。初期費用、引越し業者への支払い、家具の購入など、何かとお金がかさむため、「できる限り費用を抑えたい」と考えるのは当然でしょう。
実は、国や地方自治体は、特定の世帯や条件を満たす引っ越しに対し、費用の一部を補助したり、支援金を支給したりする様々な公的支援制度を設けています。こうした制度は情報が分散しがちで、「知っていれば利用できたのに」と後悔する方も少なくありません。このコラムでは、引っ越し費用をサポートしてくれる、見落としがちな補助金・助成金の代表例について、最新の情報を含めて詳しくご紹介します。賢く制度を活用し、経済的な負担を軽減して新しい生活をスタートさせましょう。
結婚・子育て世帯に手厚い!国の強力な支援制度
最も手厚い支援を受けられる可能性が高いのは、新婚世帯や子育て世帯を対象とした制度です。これらの制度は、若年層の定住促進や少子化対策を目的としています。
結婚新生活支援事業
結婚を機に新生活を始める夫婦の住居費や引越し費用をサポートする国の制度で、地方自治体が主導して実施しています。
- 制度の概要…住宅の取得費や賃借費用(敷金・礼金、仲介手数料など)、引越し業者に支払う費用の一部を補助するものです。
- 対象者の主な要件…婚姻届を提出した夫婦で、夫婦ともに婚姻日時点で39歳以下、世帯の年間所得が500万円未満などの制限があります。ただし、具体的な年齢や所得の要件は自治体によって異なる場合があります。
- 支援の内容…補助上限額は自治体によって異なりますが、一般的に夫婦ともに29歳以下の場合で最大60万円、それ以外の夫婦ともに39歳以下の世帯で最大30万円とする自治体が多く見られます。補助上限が70万円に設定されている自治体もあるなど、支援の幅は広いです。
この制度は、実施の有無や具体的な要件、上限額が引っ越し先の自治体によって細かく定められています。契約前に必ず自治体の窓口やホームページで確認することが非常に重要です。
子育て世帯向けの独自の転居助成
国や自治体は、子どもの成長に伴う広い住居への住み替えや、都心部での定住を促すための独自の助成制度を設けています。たとえば、東京都新宿区の「次世代育成転居助成」など、子育て世帯が区内で住み替える際に、転居前後の家賃差額(月額上限あり)や引越し費用の一部を一括で助成する事例もあります。
こうした制度は「次世代育成」「子育て世帯」「転居助成」といったキーワードで、引っ越しを検討している自治体の制度を検索することで見つかることが多いです。

地方移住を後押しする!手厚い「移住支援金」
都市部から地方への移住を検討している方には、移住後の生活資金や引越し費用に充てられる、非常に手厚い支援制度があります。
地方創生移住支援事業(東京圏からの移住)
東京23区に在住または通勤していた方が、支援事業を実施している地方に移住し、就業や起業を行う場合に支援金が支給される制度です。
- 制度の概要…移住者に対して、世帯で最大100万円、単身で最大60万円の支援金が支給されます。この支援金は、引越し費用や生活費などに自由に充てることができます。
- 子育て世帯への加算…さらに、2023年度以降、18歳未満の子どもを帯同して移住する場合は、自治体によって子ども一人あたり最大100万円が加算される手厚い支援が設けられています。
- 要件…移住元の東京圏での在住・通勤期間、移住後の就業先(移住先が指定する中小企業などへの就職、または起業)など、細かな要件が定められています。
この制度を利用する際は、移住先の自治体が事業を実施しているか、また子育て加算の有無や金額を、事前に確認することが必須です。
地域優良賃貸住宅(旧:特定優良賃貸住宅)
直接の補助金ではありませんが、公的な支援によって家賃が軽減される住居も重要です。これは、主に子育て世帯や新婚世帯を対象に、比較的広い面積の住宅を、入居者の所得に応じて周辺相場よりも安い家賃で提供する賃貸住宅です。入居期間中、家賃の一部を自治体が負担してくれるため、長期的な住居費の節約に繋がります。
住宅の機能向上や安全に関わる支援制度
引越し費用そのものではありませんが、賃貸物件でも家主の許可を得て活用できる可能性があり、結果として入居者の快適性や光熱費の節約に繋がる補助金もあります。
【支援制度の一例】
- 空き家改修・活用補助金…地方自治体の空き家バンクなどに登録された賃貸物件に対し、入居者が改修を行う場合に、その費用の一部を補助する制度です。
- 省エネリフォーム補助金…窓の断熱改修(二重サッシ化など)や高効率な設備導入に対し、国や自治体が補助金を出す制度です。貸主がこの制度を利用して物件の断熱性を高めれば、入居者は冬場の光熱費削減という大きな恩恵を受けられます。
- バリアフリー改修補助金…高齢者や障害者が入居する場合、手すりの設置や段差の解消など、バリアフリー改修費用の一部を自治体が補助する制度です。
これらの補助金は貸主が申請するケースが主ですが、入居者として相談することで、住環境の改善を促すきっかけになる場合があります。

補助金・助成金を確実に活用するための鉄則
これらの公的支援制度は、知っているか知らないかで数十万円の差が出る可能性があります。制度を確実に利用するために、以下の鉄則を実践しましょう。
「契約前」に必ず自治体に相談する
ほとんどの補助金は、「契約を締結する前」や「引っ越しを行う前」の事前申請が必須です。自己判断で契約を進めてしまうと、対象外となるケースが多いため、まずは自治体の担当課に相談することが最重要です。
申請期限と予算を厳守する
多くの制度は、申請期間や予算の上限が定められており、先着順で予算がなくなり次第終了となります。引っ越しが決まったらすぐに情報収集を開始し、スケジュールを組みましょう。
必要書類を徹底的に確認する
公金が関わる制度であるため、書類の不備は審査落ちに繋がります。自治体のホームページや窓口で、必要書類(住民票、所得証明、契約書など)を漏れなく確認し、準備を始めましょう。
情報収集こそが、最も賢い引っ越し準備
引っ越しで使える補助金や助成金は、新婚世帯や子育て世帯、地方移住者にとって非常に強力な味方になります。しかし、これらの支援は自動的に受けられるものではなく、自ら積極的に情報を集め、正しいタイミングで申請手続きを行う必要があります。
理想の部屋を見つけたら、すぐに引っ越し先の自治体の支援制度を徹底的にリサーチしましょう。公的支援制度を賢く活用することが、経済的な心配を減らし、新しい生活を快適にスタートさせるための最大の鍵となります。