定期借家はやめたほうがいい?知っておくべき借主側のメリット・デメリット
賃貸物件を探していると、まれに好条件の物件が格安で貸し出されているケースがあります。もしかすると「定期借家」の可能性があるかもしれません。今回は、定期借家と普通借家の違い、メリットやデメリット、また口コミや再契約型定期借家について解説します。
定期借家とは?普通借家との違いについて
定期借家とは、契約時に定めた期間を満了すると原則更新なしで賃貸借契約が終了する制度の物件です。借主側が強く保護されている普通借家では、正当な理由がない場合契約更新を拒否することはできません。つまり、定期借家は貸主(大家さん)側の都合が強く反映された賃貸借契約といえます。
たとえば、貸主が一時的に海外へ転居する場合や、将来的に取り壊す場合、また転売を想定しているなどの理由で、定期借家として物件を貸し出すケースがあります。
借主から見る定期借家のメリット
定期借家は貸主側の自由度が高い反面、普通借家にはないメリットがあり、借主にとっても都合が良いパターンもあります。まずは定期借家のメリットについてご紹介します。
短期間で部屋が借りられる
普通借家であれば、一般的に2年間の契約期間が設けられています。反面、定期借家は契約期間が1年未満のケースもあるため、あらかじめ期間が決まっている転勤や、学年でキャンパスが変わる大学生など、短期間だけ部屋を借りたい人にはメリットが大きなメリットです。
家賃が相場より安い物件が多い
定期借家は契約期間に縛りがある関係で、入居者がつきづらい事情があります。そのため、相場よりも安く物件を貸し出すケースが多いです。なかには設備がよく築年数が安い物件もあり、借主側には好条件の物件を安く借りられるメリットがあります。
悪質な入居者が少なく住環境が良い
普通借家の場合、たとえマナーの悪い入居者がいても貸主側の都合で解約することや契約更新を拒否することができません。反面、定期借家は契約更新をしないためマナーの悪い入居者がいても契約満了で退去させたり、契約拒否することができます。マナーの悪い入居者が長く済む、ということがなくなるため住環境が良い傾向にあります。
家賃が上がる心配がない
普通借家の場合、合理的な理由があれば家賃を上げたり下げたりする交渉が可能です。これを賃料増減額請求権といいますが、定期借家契約ではこの権利が認められていないため、入居期間中に家賃が上がる心配がありません。
借主から見る定期借家のデメリット
定期借家であることを理解せずに物件を契約すると、後々後悔することもあります。気をつけたい定期借家のデメリットとは一体何なのでしょうか。
期間内に退去しなければならない
定期借家は、契約期間の満了で必ず退去しなければなりません。たとえ「次の物件が見つかっていない」という理由で契約満了後に居座り続けても、損害賠償請求に発展することもあるので注意が必要です。
ちなみに、定期借家の契約期間が1年以上ある場合は、期間満了の1年前から6か月前に必ず通知されます。契約満了が近づいても慌てないよう、余裕を持って部屋探ししましょう。
中途解約で違約金が請求される場合がある
定期借家を契約すると、原則中途解約ができません。契約期間を残したまま中途解約を希望した場合、違約金として残りの家賃が請求されることもあるため注意が必要です。
ただし、居住用として契約している物件で床面積200㎡未満の場合、病気や転勤などやむを得ない事情で中途解約ができます。やむを得ない事情で中途解約する際は、貸主に相談しましょう。
告知事項付きの可能性も高い
実は、定期借家で貸し出す物件は告知事項付きの可能性もあります。いわゆる“事故物件”というものです。告知事項のある物件は、一般的に入居者がつきにくい事情があります。
しかし…
- 事故物件となったあとに入居者がいたという実績を作る
- 告知義務がある期間だけ定期借家にして普通借家に切り替る
以上のように、定期借家として一定期間貸し出せば次の入居者への告知義務をなくすことができます。まずは定期借家として格安で貸し出し、退去後にリフォームして正規の家賃で貸し出すのはよくあるケースです。
定期借家で後悔?借主にメリットなし?実際の口コミ
定期借家は貸主側にメリットが多く、借主側にはデメリットが多い契約です。定期借家を理解せず急な引っ越しをしなくてはならなくなった、また中途解約で多額の違約金が発生したなど、定期借家を巡るトラブルは後を経ちません。
一方で、定期借家から一転して普通借家に代わった事例や、違約金や更新料が発生しない定期借家の事例もあります。定期借家を検討、または契約した人の口コミを紹介しましょう。
定期借家の意味を理解しないまま契約して後悔
目先だけで好条件の物件を選んでしまい、定期借家であることを理解しないまま契約したケースです。定期借家には賃貸人による説明義務があり、契約書とは別の説明書面が交付されます。さらに、定期借家の契約期間が1年以上の場合は事前に期間満了について通知されるため「そんなこと聞いてない」という入居者の主張は通りません。
中途解約で家賃3ヶ月分支払う羽目に
定期借家の違約金は、残りの契約期間の賃料相当とされています。この方の場合、残りの契約期間が3ヶ月だったということでしょう。とはいえ、逆に言えば残りの賃料相当のお金を用意することで中途解約が可能になります。
3年定期借家だけど豪邸のような家に住めた
定期借家であると承知の上で契約すれば、借主側のデメリットはほぼありません。たとえ期間限定だとしても、築浅で立地が良い物件を格安で借りられるのは大きなメリットと言えるでしょう。
定期借家から普通借家に変わる好事例も
当初は何かしらの予定や計画があって定期借家契約を結んだものの、契約期間中に貸主の都合が変われば普通借家に変わることもあります。といっても極稀なケースであり、入居者側からすれば結果的にラッキーだったということでしょう。
とはいえ、普通借家になることで今後家賃が値上げされる可能性もあります。契約内容が変更になる際は、将来的なデメリットについても頭に入れておきましょう。
定期借家契約のデメリットに対抗する再契約型定期借家契約とは?
もともと普通借家として貸し出す物件を、あえて定期借家として貸し出す例があります。たとえば、契約期間中に問題を起こさないか、家賃をきちんと支払ってくれるかなど、入居者の与信を確認する理由です。
再契約が保証される定期借家契約を「再契約型定期借家契約」と言います。
賃貸経営をする貸主にとっては、入居者が悪質な契約違反などをしない限り物件に住み続けてほしい事情もあります。再契約型定期借家契約を結べば、優良な入居者とは契約を続け、悪質な入居者を退去させることができるのです。
どれだけ気に入った物件でも、定期借家契約である以上期間満了時に退去しなくてはなりませんが、問題を起こさなければ再契約という形で同じ物件に住み続けることができます。良い物件に少しでも安く住みたい、そんな人は再契約型定期借家契約ができる物件を探すのも一つの方法でしょう。
定期借家の注意点を理解した上で契約を検討しよう
定期借家は期間限定で借りられる物件であり、期間満了とともに退去しなくてはなりません。その点、居住する期間があらかじめ決まっている人や、好立地・築浅などの好条件な物件に安く住みたい人にとってはメリットが多いと言えるでしょう。定期借家のメリット、デメリットを正しく理解した上で契約を検討してみてください。