告知事項ありの賃貸物件に住むのはあり?【メリット、デメリットを解説】
一般的に、希望する物件が事故物件などの“訳あり”だと知れば「住みたくない」と考えるのが普通でしょう。しかし、訳あり=告知事項ありの賃貸物件は家賃が安く設定されているケースもあり、あえて希望する人も少なくありません。告知事項ありの賃貸物件に住むには、メリット・デメリットの両面から慎重に検討することが大切です。
今回は、告知事項ありの賃貸物件を見つける方法を始め、告知事項の種類やメリット・デメリットについてご紹介します。
告知事項ありの賃貸物件の見つけ方
物件においての「告知事項あり」とは、契約の意思に影響を与える事実(瑕疵)があることを意味しています。内容は個別に変わるものの、瑕疵のある物件は事前告知しなければならないと法律で義務づけられているため、告知事項ありの物件を探すこと自体は難しくありません。
瑕疵物件の情報を集めたサイトもあるため、瑕疵物件がどこに存在するかを調べるだけなら方法は簡単です。では、部屋探しの条件として「告知事項ありの賃貸物件」を見つけるにはどんな方法があるのでしょうか。
不動産広告の物件概要欄を確認する
チラシや店頭などの不動産広告(物件情報)には、物件概要欄があります。そこに「告知事項あり」と記載されている場合は、確実に瑕疵のある物件です。部屋探しの条件において、告知事項の優先順位が低い場合は、希望条件でヒットした物件の概要欄をチェックすると良いでしょう。
また、物件概要欄を見るだけでは瑕疵の詳細を知ることがほぼ不可能です。具体的事実については担当者へ直接確認しましょう。
SUUMOなら告知事項ありの賃貸物件が検索できる
先ほど希望物件の物件概要欄を調べる方法について紹介しましたが、一つ一つ調べるのは手間のかかる作業であり、現実的ではありません。
はじめから告知事項ありの賃貸物件を洗い出すなら、SUUMOがおすすめです。SUUMOのキーワード検索で「告知事項あり」と入力すれば、告知事項ありの賃貸物件のみを抽出して一覧表示させることができます。
ただし、SUUMOで検索できても物件概要欄を見るだけでは瑕疵の詳細を知ることがほぼできません。どの方法にせよ、告知事項の詳細は担当者へ確認する必要があります。
賃貸物件に義務付けられている告知事項の瑕疵・4つ
告知事項ありの物件でも、どのような事件や事故があったかはそれぞれ異なります。死亡事故などによる瑕疵以外にも、物件の構造による瑕疵や、法律上の問題に対する瑕疵など、告知事項の種類はさまざまです。
そこで、告知が義務付けられている4つの瑕疵についてくわしく解説します。
心理的瑕疵|死亡事故や不審死など
対象物件において、人が亡くなる事故や事件が発生した場合には告知義務が発生します。自然死や自死の場合、特殊清掃がなければ告知義務はありませんが、死亡事故や不審死が起きた物件だと心理的に不安を抱く恐れがあり「心理的瑕疵」と判断されるからです。
一方、心理的瑕疵にはガイドラインが定められており、一部の事故や事件が告知義務の対象外になるケースもあります。特に賃貸の場合、該当する事案の発生から3年が経過すると告知義務の対象外となります。また、隣接住居や共用部で起きた瑕疵も告知義務の対象外となることを知っておきましょう。
物理的瑕疵|物理的な欠陥
自然災害や火災により物件が損壊した場合、また品質・性能・機能面により物件に物理的な欠陥がある場合は「物理的瑕疵」として告知義務が発生します。たとえば性能・機能面の欠陥には、雨漏りや壁のひび割れ、シロアリ被害などが挙げられます。
なかでも戸建賃貸物件の場合、有害物質で土壌が汚染されている、敷地内の地中にゴミが埋められているケースは物理的瑕疵の対象です。反面、生活する上で起きた建具や床の摩耗、傷は瑕疵の対象になりません。
環境的瑕疵|周辺環境の問題
周辺環境によって生活が害される可能性がある場合、環境的瑕疵と判断され告知義務が発生します。たとえば、墓場や刑務所、火葬場、ゴミ処理場、風俗営業などの嫌悪施設が近隣にある物件だと、契約をためらう人が多いです。幼稚園や小学校など、環境上騒がしくなりやすい物件も瑕疵の対象になります。
とはいえ、物理的瑕疵と違い環境的瑕疵は人によって許容範囲が異なります。たとえば周囲が繁華街で夜間が騒がしくても、人によっては仕事帰りに安心できるポイントになるでしょう。なにより、嫌悪施設が直接生活に影響を与えることはほぼありません。
法律的瑕疵|法的な問題
建築基準法や消防法、都市計画法などに抵触する物件は法律的瑕疵(法的瑕疵)として告知義務が発生します。とはいえ新築物件の場合、違法建築にあたる法律的瑕疵が発生することはほとんどありません。考えられるケースとして、法律が執行される前に建築された物件が法律的瑕疵に該当することがあります。
たとえば下町にある再建築不可の築古物件、その多くは法律的瑕疵に該当します。瑕疵の有無については、物件のある自治体の窓口に確認しましょう。
告知事項の説明に事項はあり?説明義務の期間
2021年10月、国交省が定めたガイドラインによって告知義務の基準が明確化されました。告知事項に当たる内容については前述の通りですが、トラブルになった際の損害額が大きい売買物件に比べ、賃貸物件は告知義務に期間が設けられているケースもあります。
たとえば殺人や自殺、事故などの心理的瑕疵による賃貸物件の告知義務は、発生から3年間とされています。とはいえ、告知期間はあくまで“原則”という考え方であり、社会的影響が大きい事案が発生した場合はこの限りではありません。賃貸物件で3年間の告知期間を過ぎた場合でも、より長く告知する必要があります。
告知事項ありの賃貸物件のメリット
告知事項のある“訳あり”の賃貸物件に抵抗を持つ人も多いですが、相場よりも家賃が安く設定されているなどメリットがあるのも事実です。告知事項ありの賃貸物件に関して、具体的なメリットとは一体何でしょうか。
賃料が相場の半額以上になることも
告知事項ありの物件、その最大のメリットは周辺の物件に比べて家賃が安いことです。もちろん瑕疵の度合いによって値下げ幅は変わりますが、事件や事故のあった物件だと相場の半額以上で家賃が設定されている場合があります。相場より安く住めて瑕疵の内容自体気にならない人にとっては、むしろお得でしかない物件と言えるでしょう。
念入りなクリーニングで室内が綺麗
瑕疵に該当する事案が発生した賃貸物件は、通常よりも念入りにクリーニングされていることがあります。事件や事故などの心理的瑕疵がある物件なら、シミや悪臭を取り除くために部屋が丸ごとリフォームされている場合もあるでしょう。自ら清掃やリフォームする手間がなく、入居時から綺麗な状態になっているのは大きなメリットです。
犯罪などが起きにくい傾向にある
事件や事故が起きた物件は、周辺住民の目につきやすいです。それだけに犯罪が起きにくい傾向にあるのは、メリットの一つと考えて良いでしょう。とはいえ、目につきやすいということはデメリットな側面もあります。周辺住民だけならまだしも、全国に知られていることも珍しくありません。
告知事項ありの賃貸物件のデメリット
金銭的なメリットが大きい告知事項あり物件ですが、契約を考え直すほどのデメリットがあるのも忘れてはいけません。たとえば、相場より賃料が安いのは一定の期間のみ、といったケースもあります。メリットだけでなく、デメリットを考慮した上で慎重に検討しましょう。
物件情報が世に広く知られている場合がある
事件や事故が起きた物件は、報道番組やネットニュースで取り上げられていることも多いです。それだけに、住所が特定されてプライバシーが侵害される可能性があります。具体的なトラブルとして考えられるのは、宗教の勧誘や訪問営業などです。場合により生活しにくくなることも大いにあるでしょう。
精神的苦痛を感じる可能性がある
心理的瑕疵のある物件に住むことで、気味悪く感じたり、心霊現象に悩まされたりと精神的苦痛を味わう可能性があります。環境的瑕疵のある物件なら、騒音などの不快感や治安の悪さによりストレスを感じる場面も想定されます。精神的なストレスは体調不良にも繋がりやすいため、事件や事故の事実を割り切って考えられない人にはおすすめできません。
金銭的メリットが限定的なケースもある
告知事項ありの物件は相場よりも賃料が安めですが、契約時の家賃が永遠に続くわけではありません。たとえばUR都市機構の場合、瑕疵つきの賃貸物件(特別募集住宅)に対し入居から1〜2年家賃が割り引かれることがあります。裏を返せば、値引きされる期間があらかじめ決められているということです。家賃変動の可能性については、契約時に必ず確認しておきましょう。
新築物件にも該当!これは告知事項あり?なし?
告知事項の条件や告知期間についてはガイドラインに定められている通りですが、なかには「これは告知事項あり?」と判断に迷う物件もあります。瑕疵物件に該当しにくい新築物件についても同様です。そこで、いくつかのケースから告知事項の有無について簡単に解説します。
ケース1|心理的瑕疵の物件を解体した後の物件
事件や事故などによる心理的瑕疵がある物件は、当然告知事項の義務があります。では、心理的瑕疵のある物件を解体し、のちに建てた物件は瑕疵物件にならないのでしょうか?実は、解体後であっても心理的瑕疵の事実が消えるわけではありません。よって、新築でも瑕疵物件として扱われ、告知義務も発生します。
ケース2|建設中に人が亡くなった物件
建物が完成する前に、不慮の事故で死者が出るケースもあるでしょう。この場合は告知事項ありと判断されてもおかしくありませんが、建物が完成する前であること、また不慮の事故であるということから、瑕疵物件ではなく通常の物件として扱われる可能性が高いです。
ケース3|隣地が心理的瑕疵のある物件だった場合
自分が契約した物件の隣の建物に心理的瑕疵があった場合は、告知義務に該当しません。とはいえ、告知義務がないというだけで隣の土地で事件や事故が起きた事実は変わらないため、何らかの心理的ストレスを抱える場合もあるでしょう。この場合、希望する物件の近くに瑕疵物件がないかネットで調べると回避できます。
告知事項あり賃貸物件を選ぶなら慎重に
告知事項ありの賃貸物件を見つけたいなら、SUUMOのキーワード検索を利用するほか、物件広告の概要欄をチェックしましょう。告知事項あり物件は、相場よりも賃料が安くなる、室内が綺麗にクリーニングされているなどのメリットがある反面、プライバシー侵害や精神的苦痛などのデメリットも考えられます。住み始めは気にならなくても、生活に及ぼす影響が徐々に大きくなることもあるため、物件の状況については契約前にしっかりヒアリングしておくことをおすすめします。