財産管理の一手法!家族信託とは何か?

不動産投資を行っている場合、そこで得た利益や購入した不動産の管理を将来どうするかについて、考えておく必要があります。

今回は、財産管理のひとつの方法として、「家族信託」の概要やメリット・デメリットについて解説します。

家族信託とは何か?

家族信託とは、不動産などの保有している資産の管理や処分を、生前の意思能力がある段階で契約を結び親族に任せる仕組みです。

従来、これらの業務は信託業の免許をもつ信託銀行などが行っていました。これを「商事信託」と呼びます。

ただ、2006年の法改正により、営利目的では特定のひとりから信託を受ける内容のものについては、免許の取得が必要なくなり「家族信託」というものが誕生しました。

家族信託が注目されるようになった背景

法改正後、家族信託の注目度が増している背景には、認知症患者の増加があります。

2025年には65歳以上の5人にひとりが認知症になるといわれており、家族信託は老後の財産管理の一手法として期待されています。

認知症により判断能力が著しく低下すると、不動産や入居者から支払われる賃料の管理は難しくなります。

通常であれば、「成年後見制度」を活用するのが一般的です。成年後見とは、指定された後見人が本人に代わって財産管理や各種契約などの行為を行う制度です。

ただ、成年後見人制度には欠点もあります。それは、本人の財産を守るための制度であるという点です。たとえば、本人の生活費のために自宅を売却する場合は、不動産という財産を失うため家庭裁判所の許可が必要です。

他にも、生前贈与や不動産の買い替え、不動産投資などの資産運用は、本人にとってリスクとなる可能性があるため、基本的には認められません。

このように、成年後見の制度は、本人の財産を守ることを最重要視した保守的な制度といえます。その分、成年後見人が自由に行える行為はほとんど規定されていません。

この点、家族信託は本人の意思能力があるうちに信託契約を結ぶため、取り決めの範囲内であれば信託された家族が柔軟に財産の管理や処分を行えます。

家族信託と、その他の制度の特徴について、「生前の財産管理」と「財産の承継先指定の可否」に焦点をあてて下記の表でご紹介します。

  生前の財産管理 承継先指定の可否
家族信託
  • 意思能力があるうちに契約を結び、信託を受けた家族が柔軟に財産管理を行う。
  • 二次相続以降の受益権の移転や、信託財産の帰属先も細かく設定でき、柔軟な指定が可能。
成年後見制度
  • 本人の意思能力が失われたのち、後見人によって本人の財産を守る制度。
  • 財産の柔軟な運用がしづらい。
  • 財産の承継先指定は不可能。
遺言
  • 生前の財産移転はなし
  • 本人が財産の管理を行う
  • 財産の承継先は指定できるものの、二次相続以降は指定不可。
生前贈与
  • 生前の財産移転が目的
  • 贈与税の対象となる可能性がある
  • 承継先指定は可能

財産管理の手法には、上記のようにさまざまなものがあるため、どれが自分に適しているか確認することが大切です。

不動産オーナーにおける家族信託のメリット

不動産のオーナーが家族信託を検討する場合、どのようなメリットが期待できるのでしょうか。

成年後見制度と比較して柔軟な財産管理が可能

前述の通り、成年後見制度はあくまで成年被後見人の財産を守るための制度であるため、後見人の負担や制約が多い傾向にあります。

たとえば、毎年の家庭裁判所への報告義務や、財産の積極的な運用が難しい点はわかりやすいといえるでしょう。

また、成年後見制度はあくまで成年被後見人が認知症など判断能力が不十分となった際に財産の管理などを行う制度です。そのため、本人の判断能力に問題がない状態では、管理を行うことができません。

家族信託であれば、本人の判断能力の有無にかかわらず、本人が希望する段階から財産管理を家族に任せることができます。もちろん、判断能力を失って以降も同様です。

遺言書より簡単に財産の承継先を指定できる

本人の死後、自らの財産の承継先を指定する方法としては、「遺言」が一般的です。ただ、遺言書の方式や作成方法は民法によって厳格に定められており、少しでも間違った方法で作成すると効力が失われるというデメリットもあります。

家族信託であれば、お互いの契約によって成立するものであるため、遺言書のような厳格な手続きは必要ありません。

遺言書より簡単に財産の承継先を指定できるため、遺言書の代わりとして今後さらに需要が増すかもしれません。

財産承継の順位付けが容易

自分の所有している財産を誰かに承継する場合、順位指定を行いたいと思うケースもおあるでしょう。遺贈や生前贈与でも財産の承継順位をつけることは可能ですが、二次相続以降の指定はできません。

そのため、万が一相続を受ける予定だった方が亡くなった場合、次の相続人は指定できないのです。

この点、家族信託であれば、最初の契約者が亡くなった場合でも、次に財産を任せる方を改めて指定することができます。

倒産隔離機能

家族信託には、将来自分や財産の管理を行う者が「信託された財産と関係のない多額の債務を負った場合、信託財産は差押えられない」という倒産隔離機能があります。

遺贈や贈与によって所有権を譲渡してしまうと、こういった倒産隔離機能は働かなくなるため、家族信託の大きなメリットといえるでしょう。

 

家族信託を活用する際のデメリット

一方で、家族信託を活用する場合は気を付けなければならない点もあります。こちらでは、家族信託のデメリットをご紹介します。

成年後見制度でなければできないこともある

成年後見制度は、成年後見人の財産の管理だけでなく、身上配慮義務(民法858条)も規定されています。つまり、財産の管理は成年被後見人のひとつの側面に過ぎず、身上監護も大切な要素です。

家族信託の契約では身上監護に関する内容を含めることもできますが、本人の代理人として行動できる成年被後見人と比較すると、できることは限られるといえるでしょう。

受託者を誰にするのかトラブルに発展することも

成年被後見人は、弁護士など一定の立場に任せることが一般的です。ただ、家族信託となると、財産の管理や処分を適切に行える親族を探さなければなりません。

実際に、本人と同じようなリテラシーをもった方がいる可能性は低く、受託者を誰にするのかでトラブルに発展する可能性もあります。

節税効果は期待できない

家族信託には節税効果はありません。受託者にとっては、財産を取得したと判断されるため、負担のほうが大きいといえるでしょう。

遺留分侵害額請求の対象となることも

生前の家族信託が、遺留分侵害額請求の対象となるかどうかについては、専門家でも議論の分かれる点です。

遺留分侵害額請求とは、生前の贈与や遺贈によって最低の相続分(遺留分)が侵害された場合に行われる、侵害額に相当する金銭の支払いを求める請求です。

家族信託は贈与や遺贈とは異なるため、形式的には遺留分侵害額請求の対象とはなりませんが、不動産などの財産が移動しているため議論が分かれています。

現時点で明確な判例は出ていませんが、遺留分侵害額請求の対象となると考えておくのが無難でしょう。

まとめ

家族信託は、不動産投資などによる資産形成が一般的となった昨今、注目を集めている財産管理の手法です。自らのもつ財産を誰に任せ、どう管理して欲しいのか、最後の自分の意思を伝える手段でもあります。

不動産投資を行っているのであれば、これを機会に一度学んでみてはいかがでしょうか。

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