賃貸契約のあとにキャンセルは可能?クーリングオフとの違いやトラブルの対処法
賃貸契約を結んだあとにより良い物件が見つかったり、何らかの理由で「やっぱり取り消したい」と思ったりしたとき、契約をキャンセルすることは可能なのでしょうか?今回は、賃貸契約後のキャンセルやクーリングオフの可否、注意点などを解説します。
賃貸契約のキャンセルはできる?
結論から言うと、賃貸契約のキャンセルは可能です。ただし、タイミングによってキャンセルできない場合があるほか、違約金が発生したり、今後の部屋探しが不利になるリスクがあったりとデメリットもあります。
契約前の申込み・審査後ならキャンセル可能!
賃貸契約をペナルティなしでキャンセルできるのは、申込みや審査後など契約を締結する前であることが条件であり、賃貸契約書に署名・捺印していれば原則キャンセルすることはできません。また、署名・捺印をする前でも、貸主・借主双方の合意だけで契約が成立すること(諾成契約)もあるため、何らかの事情がある場合でも契約書の内容に従わなくてはならないこともあります。
賃貸物件は、申込みを経て入居審査をおこない、入居審査をクリアしなければ借りることができません。さまざまな手続きが必要になるからこそ、契約成立後にキャンセルをすれば違約金などのペナルティが発生する可能性もあります。
★契約成立の判断は不動産会社(仲介会社)や貸主によってそれぞれ異なります。トラブルを防ぐためにも、キャンセル時の取り扱いやペナルティの有無について事前に確認すると安心です。
賃貸申込み後のキャンセルに違約金は発生する?
賃貸物件を申し込む際に支払った申込金や一時金(1万円〜家賃の1ヶ月分程度が相場)は、契約が成立する前であれば返金されます。不動産会社側も、宅建業法により申込金や一時金の返金を拒むことはできないため、申込み後であっても返金を申し出るようにしましょう。
ただし、賃貸契約をすでに結んでいた場合は解約扱いとなり、契約内容によって違約金(解約金)が発生することもあります。
キャンセル事由によっては今後の部屋探しが不利になることも
仕事の都合や家庭の都合など、やむを得ない事情で賃貸契約をキャンセルするケースもありますが、申込みからのキャンセルを繰り返すなど、不当なキャンセルにより今後の部屋探しが不利になる場合があります。
というのも、管理会社は複数の賃貸物件を管理しているため、たとえ貸主(大家さん)が別でも管理会社が共通していることは多いです。キャンセル料がかからない、という理由で申込みとキャンセルを繰り返していると、不信感に繋がり今後の賃貸契約を断られる可能性があります。
賃貸契約前のキャンセルと賃貸契約後のクーリングオフの違いは?
賃貸契約をしたあとでも、クーリングオフを適用すれば問題なくキャンセルすることもできるのでは?と考える人もいるでしょう。クーリングオフとは、一度契約を締結した場合でも、一定期間内に申し出れば無条件で契約を解除できる制度です。
とはいえ、クーリングオフはすべての契約に適用されるわけではないため注意が必要です。賃貸物件の場合はクーリングオフ制度の適用外となるため、クーリングオフを利用して賃貸契約を解除することはできません。
★そもそもクーリングオフ制度は、訪問販売や電話勧誘販売などに適用されるのが原則です。賃貸物件の契約をキャンセルすることはできても、違約金などの費用が発生する場合があるので注意しましょう。
賃貸契約後にキャンセルする注意点
やむを得ない事情で賃貸物件をキャンセルしたい場合は、申し出るタイミングや契約締結の定義について知っておくと安心です。トラブルを最小限に抑えて賃貸契約をキャンセルするには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
不動産会社には早めに申し出る
賃貸契約をキャンセルする際は、すぐに不動産会社へ連絡しましょう。不動産会社は、新たな入居者が決まった段階で部屋のクリーニングや書類作成などの準備を進めている可能性があるため、不動産会社や貸主に迷惑をかけないためにもすぐに事情を説明する必要があります。
丁寧に事情を説明すれば、入居手続きが進んでいてもキャンセルに理解を示してくれるかもしれません。契約書を交わしていなくても、できるだけ早めに連絡しましょう。
契約締結の定義をきちんと確認しよう
先述の通り、契約書を交わしていなくても貸主・借主の合意のみで契約が成立するケース(諾成契約)もあります。不動産会社によって契約の定義が異なるため、申込み後にキャンセルできる期限や契約締結のタイミングについて不動産会社に確認しておきましょう。
初期費用の一部が返金されない可能性もある
賃貸契約を結んで初期費用をすでに支払っている場合、キャンセル(解約)を申し出ても初期費用の大部分が返金されないことがあります。初期費用の中で返金されない可能性が高いものは、仲介手数料と礼金です。返金される金額や項目は不動産会社によって異なりますが、場合によって1割程度しか返金されないこともあるので注意が必要です。
申込金(手付金)に対する返金は法律で保証されているものの、契約締結後の初期費用の返金については有効な法律がありません。返金される金額が少なくても不動産会社の意向に従うことになるため、契約後のキャンセルに関してはそれだけのデメリットがあることも理解しておきましょう。
キャンセル時に起きたトラブルの対処法
不動産会社にキャンセルを申し出た際、意図せずトラブルに発展する可能性はゼロではありません。特に、不動産会社側から「この物件は人気物件だからすぐに埋まってしまう」などと言われ強引に申し込み・契約を迫られたり、キャンセルを申し出ても「一度店舗へ来店してもらう必要がある」などと言ってキャンセルをさせないようにするケースもあります。このようなトラブルに遭った場合でも、不安に思うことはありません。
ここで、キャンセル時に起こるトラブルの対処法について解説します。
キャンセルをさせないようにしてきた場合
強引に申込みを迫られても、賃貸契約を結ぶ前であれば「強引に申込みをさせられたのでキャンセルしたい」と申し出ることで賃貸契約をキャンセルすることができます。
しかし、強引に申込み・契約を進めてくる不動産会社のなかには「書面を交わさなければキャンセルができない」「対面でなければ手続きができない」などさまざまな言いがかりをつけてキャンセルを妨害することもあるでしょう。キャンセルするために書面を交わす、対面でやり取りするという必要はないため、メールやホームページ上の問い合わせフォームを利用してキャンセル手続きをおこなってください。
その他不当な要求に遭った場合
賃貸契約のキャンセルをめぐり不当な要求や請求に遭った場合には、以下のような窓口に相談することで解決できます。
- 国民生活センター
- 全国宅地建物取引業協会連合会
- 全日本不動産協会
国民生活センターは、消費生活全般に対する苦情や問い合わせを受け付けてくれる組織であり、全国各地に相談窓口が設置されているほか、ホットラインによる電話相談が可能です。
全国宅地建物取引業協会連合会は、不動産業界の会員数がもっとも多い業界団体であり、不動産に関する無料相談を受け付けています。こちらも全国に協会があるので、直接来所するか電話で無料相談することが可能です。
全国不動産協会は、経験豊富な相談員が在籍する公益社団法人です。基本的には会員などによる不動産の実務相談を受け付けていますが、毎年の設立記念日には消費者からの相談を受け付けていたり、街頭や地方の事務所でも不定期に相談に応じています。長時間の相談は受け付けていないこと、同一案件での相談は原則1回のみという制約があるため、相談する際は要点をまとめておくと安心です。
まとめ
賃貸契約のキャンセルは可能ですが、契約後の場合は解約扱いとなり、初期費用の一部が返金されなかったり違約金が発生したりする可能性もあるので注意が必要です。もちろん、申込みや審査をしている段階であれば無条件でキャンセルすることができるため、事情を丁寧に説明し謝罪したうえでキャンセルを申し出るようにしましょう。