立ち退きの総まとめ!費用や強制退去の正当事由・告知期間・流れなど

大家として不動産経営を行う場合、避けては通れないのが「立ち退き」です。入居者の多くは自らの意志で退去しますが、なかには大家側から入居者に立ち退きをお願いしなければならないこともあります。ケースによっては心苦しいかもしれませんが、一度決めたら迅速に動く必要があります。今回の記事では、立ち退きの流れや費用、正当事由など、大家さんが理解しておくべき知識をご提供します。

 

大家による賃貸借契約の解除が認められる場合(正当事由)

どれだけ問題のある入居者であっても、賃貸借契約の解除が行われるまでは、その物件に住み続ける権利があります。そこで、大家さんが入居者に立ち退きを求めるには、賃貸借契約の解除が必要です。ただ、法律では入居者保護の観点から、賃貸借契約の解除を求めるには一定の理由(正当事由)が必要とされています。ここでは、賃貸借契約の解除の正当事由についてご紹介します。

契約違反かつ信頼関係の破壊

大家さん側から賃貸借契約の解除を行うには、「入居者の契約違反」と、違反による「貸主・借主間の信頼関係の破壊」が要件とされています。ここで重要なのは、入居者の契約違反だけでは賃貸借契約の解除の正当事由とは認められない点です。

たとえば、「家賃滞納」は明らかな賃貸借契約違反ですが、1、2か月程度であれば信頼関係が破壊したとはいえず、契約解除はできないと考えるのが一般的です。明確な期間は決まっていませんが、5か月以上家賃の滞納が続くと、信頼関係の破壊が認められる可能性がぐっと高まります。

家賃滞納以外の契約違反自由としては、部屋の又貸し、ペット不可物件での無断飼育、近隣住民への迷惑行為などが考えられます。しかし、これらの契約違反を犯した=賃貸借契約を解除できるわけではなく、内容や程度に応じて「信頼関係を破壊するに足りるか」の判断が必要な点に注意しましょう。

なお、「契約違反」や「信頼関係の破壊」に関する自由は、入居者が立ち退きに同意しない場合、大家さん側が立証する必要があります。そのため、強制的な立ち退きを求めるのであれば、契約違反や信頼関係の破壊を認めるに足りる証拠を用意しておきましょう。

 

 

立ち退きの流れ

ここでは、家賃の滞納を理由に立ち退きを求める際の流れをご紹介します。ただし、以下で記す流れはあくまで一例であり、ケースバイケースで異なる点があることもご了承ください。

1.家賃の支払いを求めて連絡する

家賃滞納事例では、入居者が滞納分の家賃を支払ってくれた場合はとくに問題ありません。貸主・借主間で問題を解決するべく、まずは借主へ家賃を支払いを求めるべきでしょう。

連絡手段は、とくに限定されていません。電話や手紙など任意の手段を活用してください。連絡の際には、「これ以上支払いがない場合は連帯保証人へ連絡する」旨を伝えておくとより効果的です。

また、家賃の支払いを求めることで、家賃請求に関する時効を中断させる効果もあります。

2.連帯保証人へ連絡する

借主へ家賃の支払いを求めたにもかかわらず、家賃の支払いがない場合は、連帯保証人へ連絡することになります。入居者へ家賃の支払いを求める際の方法を参考にすると良いでしょう。

連帯保証人がいない場合、この手順は必要ありません。

3.配達証明付きの督促状・内容証明を送付する

入居者への最後通告の意味も兼ねて、督促状や内容証明郵便を送るのが一般的です。内容証明郵便を送ることで、「いつ」「誰が」「どんな内容の書類を送ったのか」について郵便局が証明してくれます。後日訴訟手続きに発展した場合、証拠能力を有する書類として提出できるため、書類を送る場合は内容証明郵便にしましょう。

ただ、内容証明郵便を送らなければ賃貸借契約の解除ができないわけではありません。

4.賃貸借契約の解除

上記3つの手続きを踏んでも入居者が家賃の支払いを行わない場合は、賃貸借契約の解除に踏み切ります。方法はとくに限定されていませんが、何かしらの方法で入居者へ通知します。

また、1~4までの手続きは、別々に行う必要はありません。「家賃の未払金〇円を●年●月●日までに支払ってください。支払いがない場合、同日をもって賃貸借契約の解除します」といったひとつの通知にまとめることも可能です。

5.明渡し請求訴訟

上記の手続きによって賃貸借契約の解除した場合、入居者はその物件へ住み続ける権利を失います。しかし、実際に退去するかどうかは入居者の意思次第です。万が一退去しない場合は、強制的に退去させるため、明渡し請求訴訟を裁判所に提起する必要があります。

6.強制執行

明渡し請求訴訟で勝訴したにもかかわらず、入居者が任意で退去しない場合は、強制執行手続きを取らなければなりません。強制執行とは、裁判等により確定した権利を強制的に実現する制度です。賃貸物件の立ち退きについては、裁判所執行官が現地を訪れ、入居者が任意による退去を拒んだ場合は室内に立ち入り強制的に退去させます。

 

立ち退きを求める際の注意点

立ち退きを要求する場合は、大家さん側にも気をつけなければならない点があります。ここでは、立ち退きを求める際の注意点をご紹介します。

立ち退きは必ず求められるわけではない

前述の通り、立ち退きは必ず求められるわけではありません。あくまで「契約違反」と「信頼関係の破壊」が認められた場合のみに求めることができます。つまり、契約違反があった場合でも、程度がそれほど悪質とはいえず、信頼関係の破壊が認められない場合は、賃貸借契約の解除ができず、立ち退きを求めることもできません。

家賃滞納のケースについて考えると、「家賃の不払いはあるものの、期間が短く、今後支払いが再開される可能性がある」「入居者は失業による家賃の滞納をしており、職を失ったことについて有責性が乏しい」などの場合は、信頼関係の破壊が認められないと考えるべきでしょう。

強引な「追い出し」は違法行為となる可能性がある

家賃滞納に限らず、契約違反を犯している入居者を退去させたい気持ちは、多くの大家さんが感じているでしょう。しかし、強引な「追い出し」行為は違法とされ、後に損害賠償を請求される可能性があります。入居者を退去させる場合は、あくまで上記のような正規の手続きを踏むことを忘れてはいけません。

違法行為となる可能性のある追い出し行為の一例をご紹介します。

  • 入居者の部屋へ無断で立ち入る(住居侵入罪)
  • 部屋から退去せずに居座る(不退去罪)
  • 支払を求めて脅す、暴力をふるう(脅迫罪・暴行罪)
  • 部屋の家具を無断で持ち出す、壊す(窃盗罪・器物損壊罪)

 

立ち退き料の必要性

大家さんの立場からすると、入居者に立ち退きしてもらうにあたり、「立ち退き料が必要なのでは?」と思う方もいるかもしれません。

ただ、入居者の契約違反を理由として立ち退きを要求する場合は、立ち退き料を支払う必要はありません。万が一立ち退き料の支払いを求められた場合は、弁護士に対応を任せるのもひとつの方法です。

一方、老朽化による立ち退きなど、大家さん側の都合によって立ち退いてもらう場合は、立ち退き料を支払って納得してもらうケースはあるようです。金額やその他の条件等が具体的に定められているわけではないため、両者での話し合いが必要です。

 

 

まとめ

不動産経営において、立ち退きのシーンには出会いたくないものですが、避けては通れないもののひとつです。法的手続きを伴うため、弁護士に一任するのも有効ですが、万が一に備えて最低限の知識を備えておきましょう。

 

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